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第02話 消えた操言士と闇夜の襲撃
4.修行(下)
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「僕が一緒にいるときは暗記の方を中心にやろう。それと、実際に操言の力を使う練習もしていくよ。内省は一人のときとか、時間があるときにやってみてね。内省する中で迷うことやどうしてもうまく言語化できないことがあれば相談してくれていいよ。あと本を読むことももちろん勉強になるし意味があるよ。語彙を増やせるからね。旅をしていると大量の本は持てないけど、余裕ができたら本もたくさん読むといいね」
「盛りだくさんですね」
「祈聖石巡礼の旅は、操言士としての修行の旅だからね。基本は修行、修行、鍛錬、鍛錬、訓練、訓練だよ」
「騎士団のムチとムチ、みたいですね」
「そうだねえ。ところで、修行・修練・訓練・練習・鍛錬、全部似た言葉だけと、意味の違いってなんだろうね」
そういう言葉の違いを調べるのも勉強になりそうだね。王黎はそう言って笑った。
それから王黎は暗記すべき言葉を紀更に教え、そこに付随するイメージの重要なポイントを教え込んだ。ほかにも操言の力を使う際に意識すべきことを、実際に紀更にさせながら教えていく。
そうしてピクニックの様を呈した修行の時間はあっという間に過ぎていった。
「さて、今日はこれくらいにしよう。ルーカスくん!」
少し離れたところで紀更と王黎を視界に入れつつ剣を振るっていたルーカスを、王黎は大きな声で呼んだ。
ルーカスはほぼずっと紀更たちから離れず、かといって邪魔をするでもなく、黙って護衛任務に従事していた。周囲を警戒しつつも、さすがに街中なので危険性が低いことを確信すると、途中からは王黎の言ったとおり、腕立て伏せをしたり素振りをしたりして自分の鍛錬を始めたので、紀更は少し笑ってしまった。
「はい、なんでしょう」
「紀更と一緒に騎士団本部へ行って、エリックさんと合流してくれるかい? 夕飯はまたきらら亭に行こう」
「王黎殿はどうされるんです?」
「僕は少しここで用事があるから、それが終わったらきらら亭に行くよ」
「ユルゲンさんはどうしましょうか」
「もし街に戻ってきていればきらら亭か宿で合流できると思うから、あまり気にしなくても大丈夫じゃないかな」
王黎は地面に広げた敷物を片しながら答えた。
「じゃあルーカスくん、紀更をよろしくね」
「はい、ではまたあとで」
ルーカスは紀更をうながして、光学院の表の道へと歩き出す。
王黎は二人の足音が完全に聞こえなくなるまで静かに待った。
「最美、おいで」
そして上空を見上げると、静かに呼びかけた。普通に話す程度の声量だ。しかしその呼び声は届いたらしく、ラフーアの上空を飛んでいた一羽の鳥が、旋回しながら優雅に下りてくる。それは赤い頭部から長い尾羽の先に向かって全身が虹色のグラデーションになっている、とても美しい鳥だった。首はすらっと細く長く、胴体を支える脚も長い。
その鳥は地面に着地して鮮やかな羽を器用に折りたたむと、ふくらませた紙風船から一気に空気が抜けるような音とともに、人型へとぬらりと姿を変えた。
「戻りましたわ、我が君」
人の形をした最美がほほ笑む。最美はニジドリの「メヒュラ」だった。
この大陸に生きる人間――「人」は、実は二種類に分けられる。王黎や紀更のように、動物型に変化できない種族ヒューマと、最美のように動物の姿になれるメヒュラだ。
すると、カオディリヒスとヤオディミスに問いかける者がいた。
あまたの動物の中で唯一言葉を習得した、ヒューマとメヒュラだった。
二神はヒューマとメヒュラが暮らしやすくなるように、手助けをした。
ヒューマとメヒュラは、世界の始まりを語る物語でもその名が登場し、この世界に最初から存在していることがわかる。
子供が生まれると役場に出生登録をしなければならないが、その際に、ヒューマかメヒュラかは特に気にされない。そのため厳密な統計はないが、一般的に、ヒューマに比べてメヒュラの数は少ないと言われている。また個人差はあるが、動物型で日常を過ごしているメヒュラはほぼいない。メヒュラであってもそのほとんどが人型で生活しているので、メヒュラであると当人から教えてもらうか動物型に変化するところを見るかしなければ、その人物がメヒュラなのかどうか知る術はない。
「隣人が実はメヒュラだったが、死ぬ直前に教えてもらうまで気付かなかった」、という話が実際にあるほどだ。
「おかえり、最美。けがはない?」
王黎は甘い表情を浮かべて、最美の頬を手のひらでやさしくなでた。
「ええ、ありませんわ」
最美はくすぐったそうに目を細め、唇の端を少し上げて王黎と同じように甘くほほ笑む。紀更たちには見せない、とてもリラックスした表情だ。
「じゃあ、報告を聞こうか」
王黎は最美の頬から手を離し、静かに合掌して目を閉じた。
【陰影の暗幕、暗影の閑寂、我らの声を覆え】
王黎が言葉を紡ぐと、二人の頭上から半透明の黒い布のようなものが広がり下りて、そして消えた。これで二人の声は、ほかの誰にも聞こえない。
「ラフーアの操言士は全部で五十六名です。操言支部の名簿で確認しました。その五十六名の昨日と今日の動きですが、まず教育部所属の操言士二名、操言支部会館で見習い操言士への手ほどき業務を実施、不審点なし。見習い操言士十名も同じです」
最美は感情の薄い、整った顔で淡々と告げた。
「民間部所属の操言士十名、各自の勤務地である操言支部会館の工房や、所属ギルドの建物内で通常業務、不審点なし。守護部所属の操言士は、二名が操言支部にて待機、四名がウージャハラ草原で怪魔退治、ワル営所またはツル営所を拠点にしています」
「まあ、妥当だね」
「国内部所属の操言士は二十八名です。まず二名が体調不良で自宅療養中。三名が今日は非番で、それぞれ自宅または街の中を移動、不審点なし。九名が三人一組で西国道付近の祈聖石の見回り。六名が操言支部会館で通常業務、四名がラフーア内の祈聖石を常時巡回」
「ゴンタス支部長の指示かな。日中ずっと祈聖石に張り付いていることはできないから、まあ、何人かで巡回するのが妥当だよねえ」
「支部長は支部会館内で通常業務、不審点なし。残る三名が気になります」
王黎の目付きが変わる。最美は表情を変えることなく、簡潔に続けた。
「一名はローベルという国内部所属の操言士で、誰一人、彼の名を呼ぶ住民はいませんでした。街の中にも外にも、それらしき姿が見えません」
「ゼルヴァイス城や王都への遠出、死亡の可能性は?」
「否定も肯定もできません。確認できたのは名簿上の名前と、姿がないことだけです」
「あとの二名は?」
「ネーチャヴィンとハリーという操言士です。二人一組で、ラフーア内の祈聖石を巡回……という体で、何かを探し回るような動きがあります」
「移動範囲は?」
「街中ですが、正確には街と外の境界線付近です」
「その三名、怪しさプンプンだねえ」
王黎は腕を組み、首を左右に倒して筋を伸ばした。
「支部長が素直に言うとはもちろん思ってなかったけど、本当にラフーアの操言士に何か異変があるとはねえ。しかも、一人はネーチャヴィンさんか」
「ネーチャヴィンとハリーを追跡しますか?」
「いや、それはやめよう。さすがに気付かれるだろうからね。だけど……う~ん……どうしようかねえ」
王黎は唸った。
最美の偵察結果は、無視できない内容だ。特に姿が見えないローベルに関しては、怪しさしかない。だが、彼の不在を疑うには情報不足だ。国内部所属の操言士が近隣の都市部へ足を伸ばすことは、多くはないが特別珍しくもない。昨日今日、たまたまラフーアにいないだけの可能性は十分ある。病気や老衰、怪魔との戦闘で死亡することだって当たり前だ。つい最近亡くなって、名簿上の名前がまだ消されていないのかもしれない。
(こちらの動きを察知されるのは嫌だしなあ)
メヒュラである最美に動物型で上空から偵察をしてもらうのは、王黎がよくとる手だ。ニジドリになった最美は、人型に比べて視覚も聴覚も桁外れによくなる。離れている場所からでも人の姿と声を拾えるので、偵察にはうってつけなのだ。
さらに、王黎が操言の力を使えば、対象者の目に最美の姿が見えないようにすることもできる。だがそれは、操言の力の波動をほかの操言士に気付かれる可能性があり、隠密に情報を集めたい王黎としては避けたいところだ。
(レイトの異変と無関係かもしれないしなあ)
――その件を調査することはあなたの仕事ではないだろう?
昨日、エリックに言われたことがふと思い出される。確かに、レイトの異常について調べることは、ただの好奇心に依るところが大きい。何かいつもと違うことが起きている。そう思ったら妙にわくわく、そわそわして、何が起きているのか知りたくなってしまう。野次馬根性とも言える。
だがエリックにも言ったとおり、殊更怪魔に関しては、たとえ小さな異変であっても気を配るのが守護部の操言士の務めだと思っている。何かを予感してうずうずしている自分のこの感覚は、単なる好奇心のざわめきではないだろう。守護部の操言士としての勘が、「何かしらの危険が近くにある」と告げているに違いない。
「最美、偵察は終わりにしよう。今日は僕らと一緒にいること。ただし明日、共同墓地に行って操言士ローベルの名前が墓石に刻まれていないか、確認してきてほしい。それと、本当に彼がこの街にいないのかと、ネーチャヴィンさんとハリーって操言士の動きももう一度確かめてくれるかい?」
王黎は自らの好奇心と勘に従い、ラフーアの操言士たちの怪しい挙動について調べられることは調べることにした。特に、最も怪しいローベルの生死確認は必須だ。
「畏まりました、我が君」
最美は深々と頭を下げた。
(まあ、仮に死んでいるとしても、墓石に名前が刻まれないケースがあるけどね)
王黎の瞳に、一抹のほの暗さが浮かぶ。
そして二人は黙ったまま、連れ立ってきらら亭へと向かった。
◆◇◆◇◆
「盛りだくさんですね」
「祈聖石巡礼の旅は、操言士としての修行の旅だからね。基本は修行、修行、鍛錬、鍛錬、訓練、訓練だよ」
「騎士団のムチとムチ、みたいですね」
「そうだねえ。ところで、修行・修練・訓練・練習・鍛錬、全部似た言葉だけと、意味の違いってなんだろうね」
そういう言葉の違いを調べるのも勉強になりそうだね。王黎はそう言って笑った。
それから王黎は暗記すべき言葉を紀更に教え、そこに付随するイメージの重要なポイントを教え込んだ。ほかにも操言の力を使う際に意識すべきことを、実際に紀更にさせながら教えていく。
そうしてピクニックの様を呈した修行の時間はあっという間に過ぎていった。
「さて、今日はこれくらいにしよう。ルーカスくん!」
少し離れたところで紀更と王黎を視界に入れつつ剣を振るっていたルーカスを、王黎は大きな声で呼んだ。
ルーカスはほぼずっと紀更たちから離れず、かといって邪魔をするでもなく、黙って護衛任務に従事していた。周囲を警戒しつつも、さすがに街中なので危険性が低いことを確信すると、途中からは王黎の言ったとおり、腕立て伏せをしたり素振りをしたりして自分の鍛錬を始めたので、紀更は少し笑ってしまった。
「はい、なんでしょう」
「紀更と一緒に騎士団本部へ行って、エリックさんと合流してくれるかい? 夕飯はまたきらら亭に行こう」
「王黎殿はどうされるんです?」
「僕は少しここで用事があるから、それが終わったらきらら亭に行くよ」
「ユルゲンさんはどうしましょうか」
「もし街に戻ってきていればきらら亭か宿で合流できると思うから、あまり気にしなくても大丈夫じゃないかな」
王黎は地面に広げた敷物を片しながら答えた。
「じゃあルーカスくん、紀更をよろしくね」
「はい、ではまたあとで」
ルーカスは紀更をうながして、光学院の表の道へと歩き出す。
王黎は二人の足音が完全に聞こえなくなるまで静かに待った。
「最美、おいで」
そして上空を見上げると、静かに呼びかけた。普通に話す程度の声量だ。しかしその呼び声は届いたらしく、ラフーアの上空を飛んでいた一羽の鳥が、旋回しながら優雅に下りてくる。それは赤い頭部から長い尾羽の先に向かって全身が虹色のグラデーションになっている、とても美しい鳥だった。首はすらっと細く長く、胴体を支える脚も長い。
その鳥は地面に着地して鮮やかな羽を器用に折りたたむと、ふくらませた紙風船から一気に空気が抜けるような音とともに、人型へとぬらりと姿を変えた。
「戻りましたわ、我が君」
人の形をした最美がほほ笑む。最美はニジドリの「メヒュラ」だった。
この大陸に生きる人間――「人」は、実は二種類に分けられる。王黎や紀更のように、動物型に変化できない種族ヒューマと、最美のように動物の姿になれるメヒュラだ。
すると、カオディリヒスとヤオディミスに問いかける者がいた。
あまたの動物の中で唯一言葉を習得した、ヒューマとメヒュラだった。
二神はヒューマとメヒュラが暮らしやすくなるように、手助けをした。
ヒューマとメヒュラは、世界の始まりを語る物語でもその名が登場し、この世界に最初から存在していることがわかる。
子供が生まれると役場に出生登録をしなければならないが、その際に、ヒューマかメヒュラかは特に気にされない。そのため厳密な統計はないが、一般的に、ヒューマに比べてメヒュラの数は少ないと言われている。また個人差はあるが、動物型で日常を過ごしているメヒュラはほぼいない。メヒュラであってもそのほとんどが人型で生活しているので、メヒュラであると当人から教えてもらうか動物型に変化するところを見るかしなければ、その人物がメヒュラなのかどうか知る術はない。
「隣人が実はメヒュラだったが、死ぬ直前に教えてもらうまで気付かなかった」、という話が実際にあるほどだ。
「おかえり、最美。けがはない?」
王黎は甘い表情を浮かべて、最美の頬を手のひらでやさしくなでた。
「ええ、ありませんわ」
最美はくすぐったそうに目を細め、唇の端を少し上げて王黎と同じように甘くほほ笑む。紀更たちには見せない、とてもリラックスした表情だ。
「じゃあ、報告を聞こうか」
王黎は最美の頬から手を離し、静かに合掌して目を閉じた。
【陰影の暗幕、暗影の閑寂、我らの声を覆え】
王黎が言葉を紡ぐと、二人の頭上から半透明の黒い布のようなものが広がり下りて、そして消えた。これで二人の声は、ほかの誰にも聞こえない。
「ラフーアの操言士は全部で五十六名です。操言支部の名簿で確認しました。その五十六名の昨日と今日の動きですが、まず教育部所属の操言士二名、操言支部会館で見習い操言士への手ほどき業務を実施、不審点なし。見習い操言士十名も同じです」
最美は感情の薄い、整った顔で淡々と告げた。
「民間部所属の操言士十名、各自の勤務地である操言支部会館の工房や、所属ギルドの建物内で通常業務、不審点なし。守護部所属の操言士は、二名が操言支部にて待機、四名がウージャハラ草原で怪魔退治、ワル営所またはツル営所を拠点にしています」
「まあ、妥当だね」
「国内部所属の操言士は二十八名です。まず二名が体調不良で自宅療養中。三名が今日は非番で、それぞれ自宅または街の中を移動、不審点なし。九名が三人一組で西国道付近の祈聖石の見回り。六名が操言支部会館で通常業務、四名がラフーア内の祈聖石を常時巡回」
「ゴンタス支部長の指示かな。日中ずっと祈聖石に張り付いていることはできないから、まあ、何人かで巡回するのが妥当だよねえ」
「支部長は支部会館内で通常業務、不審点なし。残る三名が気になります」
王黎の目付きが変わる。最美は表情を変えることなく、簡潔に続けた。
「一名はローベルという国内部所属の操言士で、誰一人、彼の名を呼ぶ住民はいませんでした。街の中にも外にも、それらしき姿が見えません」
「ゼルヴァイス城や王都への遠出、死亡の可能性は?」
「否定も肯定もできません。確認できたのは名簿上の名前と、姿がないことだけです」
「あとの二名は?」
「ネーチャヴィンとハリーという操言士です。二人一組で、ラフーア内の祈聖石を巡回……という体で、何かを探し回るような動きがあります」
「移動範囲は?」
「街中ですが、正確には街と外の境界線付近です」
「その三名、怪しさプンプンだねえ」
王黎は腕を組み、首を左右に倒して筋を伸ばした。
「支部長が素直に言うとはもちろん思ってなかったけど、本当にラフーアの操言士に何か異変があるとはねえ。しかも、一人はネーチャヴィンさんか」
「ネーチャヴィンとハリーを追跡しますか?」
「いや、それはやめよう。さすがに気付かれるだろうからね。だけど……う~ん……どうしようかねえ」
王黎は唸った。
最美の偵察結果は、無視できない内容だ。特に姿が見えないローベルに関しては、怪しさしかない。だが、彼の不在を疑うには情報不足だ。国内部所属の操言士が近隣の都市部へ足を伸ばすことは、多くはないが特別珍しくもない。昨日今日、たまたまラフーアにいないだけの可能性は十分ある。病気や老衰、怪魔との戦闘で死亡することだって当たり前だ。つい最近亡くなって、名簿上の名前がまだ消されていないのかもしれない。
(こちらの動きを察知されるのは嫌だしなあ)
メヒュラである最美に動物型で上空から偵察をしてもらうのは、王黎がよくとる手だ。ニジドリになった最美は、人型に比べて視覚も聴覚も桁外れによくなる。離れている場所からでも人の姿と声を拾えるので、偵察にはうってつけなのだ。
さらに、王黎が操言の力を使えば、対象者の目に最美の姿が見えないようにすることもできる。だがそれは、操言の力の波動をほかの操言士に気付かれる可能性があり、隠密に情報を集めたい王黎としては避けたいところだ。
(レイトの異変と無関係かもしれないしなあ)
――その件を調査することはあなたの仕事ではないだろう?
昨日、エリックに言われたことがふと思い出される。確かに、レイトの異常について調べることは、ただの好奇心に依るところが大きい。何かいつもと違うことが起きている。そう思ったら妙にわくわく、そわそわして、何が起きているのか知りたくなってしまう。野次馬根性とも言える。
だがエリックにも言ったとおり、殊更怪魔に関しては、たとえ小さな異変であっても気を配るのが守護部の操言士の務めだと思っている。何かを予感してうずうずしている自分のこの感覚は、単なる好奇心のざわめきではないだろう。守護部の操言士としての勘が、「何かしらの危険が近くにある」と告げているに違いない。
「最美、偵察は終わりにしよう。今日は僕らと一緒にいること。ただし明日、共同墓地に行って操言士ローベルの名前が墓石に刻まれていないか、確認してきてほしい。それと、本当に彼がこの街にいないのかと、ネーチャヴィンさんとハリーって操言士の動きももう一度確かめてくれるかい?」
王黎は自らの好奇心と勘に従い、ラフーアの操言士たちの怪しい挙動について調べられることは調べることにした。特に、最も怪しいローベルの生死確認は必須だ。
「畏まりました、我が君」
最美は深々と頭を下げた。
(まあ、仮に死んでいるとしても、墓石に名前が刻まれないケースがあるけどね)
王黎の瞳に、一抹のほの暗さが浮かぶ。
そして二人は黙ったまま、連れ立ってきらら亭へと向かった。
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