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第01話 特別な操言士と祈聖石
8.祈聖石(中)
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「これが祈聖石ですか」
「そうだよ」
王黎は腰を曲げてかがむと、祈聖石を手に取って紀更の前に差し出した。
「都市部を守るために操言士が祈りを込めた祈聖石は、本来どれもみんな乳白色だ」
「でもこの祈聖石はくすんだ茶色……。効力が切れている状態、ということですか」
「うん、間違いないね」
「どうして……」
紀更は王黎の手の中にある祈聖石を見つめた。
研磨された部分もあるが、その表面は基本的に石本来の質感を残してざらざら、でこぼこしている。何も知らずにこれを見たら、まさか怪魔を寄せ付けない力を持つ石などとは思わないだろう。
操言士が定期的に保守しているはずの祈聖石。
それがなぜ、効力切れを起こしているのだろうか。
「レイトの操言士の方々が管理を怠っていたんでしょうか」
「まあ、理由を考えるのは後回しにしよう。いま大事なのは、この祈聖石に守りの効力をもう一度持たせることだからね」
王黎が言うと、紀更ははやる気持ちで尋ねた。
「どうやるんですか」
「まず陽の光を吸収しやすくするために、乳白色にするんだ。見ててごらん」
王黎は祈聖石を左右の手のひらで包み、操言の力を使った。
【東の空、白み明るみ輝きて、汝喜びに満ちあふれん。西の空、翳り暗がり落ちるまで、汝光を集め守らん】
王黎が言葉を紡ぐのに合わせて、祈聖石はキラキラと粒のような輝きをまとい始めた。そしてその輝く粒が祈聖石に吸い込まれていくと、灰褐色は徐々に乳白色に変化していく。
「すごい!」
「本当なら、この状態でしばらく陽の光にさらすんだ。光の神様カオディリヒスの化身と言われる太陽から、神様の加護をもらうためにね。陽の光を浴びた分だけ祈聖石の効果は持続すると言われているけど、今は省略するよ」
「え、でも……」
「大丈夫。陽の光を浴びるだけじゃなくて、大事なのはこのあとだから」
「操言士が祈りを込める工程ですか?」
祈聖石は操言士が祈りを込めたもの。一般的にはそう言われている。
紀更が尋ねると王黎は頷いた。
「そう。それはね、本当に祈りを込めるんだ。ただひたすら、都市部やそこにいる人々が守られるように祈り願い、それを言葉にすることで祈聖石に力を持たせるんだよ」
「祈り、願い……」
怪魔から都市部を、人々を、どうかお守りください。そう祈り願うだけで、祈聖石が力を持つのだろうか。信じがたいというか、操言の力の使い方としては何か違和感がある。紀更は少しだけ眉間に皺を寄せた。
「納得していない顔だね、紀更」
「いえ、納得していないわけでは」
「まあ、見てなさいな」
王黎はいつものへらへらした笑顔を浮かべたが、すぐに真剣な眼差しを祈聖石に向けた。
【光の神、カオディリヒス。清き流れのいたる場所。悪しきは寄れず、これを持続せよ】
口から出る言葉に全身の心血を注ぎ、今までで一番ゆっくりと、王黎は言葉を紡いだ。王黎の吐息が文字となって、祈聖石にまとわりつくようだ。
王黎の紡いだ言葉に影響されて、その手の中にある乳白色の祈聖石は内側から発光した。その光は石の中でゆらゆらとうごめき、心なしか、そよそよと流れる川の水面のようにも見える。
「とりあえずはこれで十分かな」
「光の神様……カオディリヒスに祈ったんですか」
「うーん……まあ、そんな感じかな」
紀更の質問への回答もそこそこに、王黎は再び目を閉じた。
【聖なる光の石よ、誠が再び示されるその時まで、己が姿を偽れ】
王黎の手の中の祈聖石の周囲に、今度はこげ茶色の渦ができる。それは祈聖石をぐるぐると取り囲み、徐々に体積を増していく。渦がしゅるしゅると回転し始め、しばらく経つと祈聖石はその姿を丸太に変えていた。
「よい、しょ」
王黎は丸太に変わった祈聖石を地面に置いた。ここへ来た時と同じように、それはそのあたりにある丸太のひとつにしか見えなくなった。
「はい、終わり~」
王黎はわざとらしく左右の手のひらをたたき、付いてもいない汚れを払うふりをした。
「一部省略したけど、これが祈聖石の保守手順だよ。祈りを込める段階もかなり端折ったから、ほんとざっくりした流れだけどね」
「あ、ありがとうございました。すごい……操言士って、すごいですね」
紀更は興奮気味に礼を述べた。
操言士がすべきこと、操言士にしかできないこと。
都市部を怪魔から守る重要な祈聖石、その保守の実演。
ようやく王黎が見せてくれた師匠らしい指導に紀更は感動した。
「うんうん、紀更も弟子っぽくなってきたね」
そんな紀更の表情に、王黎も満足げに頷く。
「弟子っぽく?」
「学ぶ姿勢が出てきた、ってことだよ」
薄ら笑いだった王黎の目が細くなり、その視線は急に鋭くなる。
威圧するような王黎のその視線にとらわれて、紀更の背は冷たくなった。感動に包まれていた胸の中に北風が吹き荒れるようだ。
「ねえ、紀更」
妙に冷静な、それでいて力強く押さえつけるような声音で王黎は紀更に尋ねた。
「キミは《光の儀式》で操言の力はないと判別された。だけど、なぜかキミは後天的に操言の力を宿し、操言士になれと言われ、操言院で学んでいる。その現状をキミはどう考えているの?」
いたくて操言院にいるわけではない。なりたくて操言士になるわけではない。操言士団に言われたから、亡くなった弟のためだから、ただ仕方なく――。紀更がそんな甘ったれた認識を持っていることを、王黎は見抜いていた。
この状況は、すべて他責によるもの。自分が望んだことではない、これは他人事。紀更はどこかでそう思い、自ら考えることをしてこなかった。そんな自分を自分でどう思うのか、王黎は問うているのだ。
「俊が……」
自分の中の思いを正しく表現できる言葉を懸命に選びながら、紀更は答えた。
「弟が通っていた操言院に行くことが、弟の死の慰めになる……。最初、両親にはそう言いました。でもそれは、きれいに取り繕った言葉だったと……今は思います」
俊が亡くなり、喪失感で満ちていた家庭内。悲しむ両親を安心させたい気持ちが、自分の正直な気持ちに蓋をさせた。あの時は自分の言葉に納得していたが、そこに本当に、自分自身の素直な感情や意思があったかというと、ためらいもなく全肯定はできない。
操言院に通い始めてから一年が経ったが、操言の力、操言士、操言院、それらに対して、これまでの紀更は自分事として真剣に向き合ってこなかった。
「疑問に思い、自ら考えること……。私はそれをしてきませんでした」
「何に対して?」
「操言士に関わることすべて……もっと広げて言うなら、この先どう生きるのか」
紀更は自分の手の甲をもう片方の手でさすった。その手は緊張のためかひんやりとしている。
「私はただ、流れに身を任せて生きてきました。どこへ行きたいとか何をしたいとか……自分に何ができるとか……考えないでいいように、見ないようにしていた気がします」
「考えないでいいように、か」
「でも王都を出てこの村に来て……そんな自分が恥ずかしくなりました」
歳だけ重ねても、中身は子供。そう自覚したことを告白することは、とてもいたたまれない。だが、王黎はそんな紀更を嘲りも蔑みもしない。ただ少し、やるせなさそうな表情で無気力気味に言った。
「何も考えないでとりあえず流れに身を任せていれば楽だよ? それは別に悪いことじゃない。紀更だけじゃなくて、ほとんどの大人はそうやって生きていると思うけど」
「それは……違うんです……違う。楽で悪いことじゃないとしても……ほかの人がそうだからとか……そうじゃなくて」
紀更は、昨日の噴水広場でのユルゲンとの会話を思い出した。
――ありがとな、見習い操言士さん。
操言士としての紀更が、初めて受け取った報奨の言葉。操言院に通い出してからのこの一年間が報われた気がして、思わず泣いてしまった。
そうして心の中にあった重苦しい気持ちがとけたからだろうか、今は操言士としての自分のこの先の人生をしっかり考えたいと思う。これまで無知だった自分を恥じ、情けないと思う分と同じだけ、これからは様々なことを知りたいと思う。
「操言士について学んでいるつもりでした。でも私は何も理解していなかった。一人前の操言士になることは目的でもゴールでもない。その先に続く自分の人生をどう生きていくか……それを考えなきゃいけない……考えたいです」
なるべく自分を主語にした表現を探しながら、紀更は続けた。
「操言院に通うこと……操言士になることは、死んでしまった弟とは関係ない。これは私の人生です。普通の見習い操言士とは違うスタートですが、私は操言士としての道をどう歩いていくのか考えたい。今はそう思っています。何も考えずに流れに乗るんじゃなくて……自分の足で歩いて進みたいんです」
王黎の問いつめるような視線に負けないように、紀更は王黎に向き合った。普段はにこにこと笑って目を閉じている印象なので、王黎の見開かれたグレーの瞳に対して、見慣れないものへの怖さを覚える
だが恐れることはない。己の無知を知り、過去を反省し、これから先どうしたいか考え始める。それは己の力で生きるということ。少し遅いかもしれないが、そうしたいと師匠に伝えるのは、きっと師弟関係において必要なことだろう。
紀更の言葉にしばらく黙って耳をかたむけていた王黎は、真剣な声で告げた。
「そうだよ」
王黎は腰を曲げてかがむと、祈聖石を手に取って紀更の前に差し出した。
「都市部を守るために操言士が祈りを込めた祈聖石は、本来どれもみんな乳白色だ」
「でもこの祈聖石はくすんだ茶色……。効力が切れている状態、ということですか」
「うん、間違いないね」
「どうして……」
紀更は王黎の手の中にある祈聖石を見つめた。
研磨された部分もあるが、その表面は基本的に石本来の質感を残してざらざら、でこぼこしている。何も知らずにこれを見たら、まさか怪魔を寄せ付けない力を持つ石などとは思わないだろう。
操言士が定期的に保守しているはずの祈聖石。
それがなぜ、効力切れを起こしているのだろうか。
「レイトの操言士の方々が管理を怠っていたんでしょうか」
「まあ、理由を考えるのは後回しにしよう。いま大事なのは、この祈聖石に守りの効力をもう一度持たせることだからね」
王黎が言うと、紀更ははやる気持ちで尋ねた。
「どうやるんですか」
「まず陽の光を吸収しやすくするために、乳白色にするんだ。見ててごらん」
王黎は祈聖石を左右の手のひらで包み、操言の力を使った。
【東の空、白み明るみ輝きて、汝喜びに満ちあふれん。西の空、翳り暗がり落ちるまで、汝光を集め守らん】
王黎が言葉を紡ぐのに合わせて、祈聖石はキラキラと粒のような輝きをまとい始めた。そしてその輝く粒が祈聖石に吸い込まれていくと、灰褐色は徐々に乳白色に変化していく。
「すごい!」
「本当なら、この状態でしばらく陽の光にさらすんだ。光の神様カオディリヒスの化身と言われる太陽から、神様の加護をもらうためにね。陽の光を浴びた分だけ祈聖石の効果は持続すると言われているけど、今は省略するよ」
「え、でも……」
「大丈夫。陽の光を浴びるだけじゃなくて、大事なのはこのあとだから」
「操言士が祈りを込める工程ですか?」
祈聖石は操言士が祈りを込めたもの。一般的にはそう言われている。
紀更が尋ねると王黎は頷いた。
「そう。それはね、本当に祈りを込めるんだ。ただひたすら、都市部やそこにいる人々が守られるように祈り願い、それを言葉にすることで祈聖石に力を持たせるんだよ」
「祈り、願い……」
怪魔から都市部を、人々を、どうかお守りください。そう祈り願うだけで、祈聖石が力を持つのだろうか。信じがたいというか、操言の力の使い方としては何か違和感がある。紀更は少しだけ眉間に皺を寄せた。
「納得していない顔だね、紀更」
「いえ、納得していないわけでは」
「まあ、見てなさいな」
王黎はいつものへらへらした笑顔を浮かべたが、すぐに真剣な眼差しを祈聖石に向けた。
【光の神、カオディリヒス。清き流れのいたる場所。悪しきは寄れず、これを持続せよ】
口から出る言葉に全身の心血を注ぎ、今までで一番ゆっくりと、王黎は言葉を紡いだ。王黎の吐息が文字となって、祈聖石にまとわりつくようだ。
王黎の紡いだ言葉に影響されて、その手の中にある乳白色の祈聖石は内側から発光した。その光は石の中でゆらゆらとうごめき、心なしか、そよそよと流れる川の水面のようにも見える。
「とりあえずはこれで十分かな」
「光の神様……カオディリヒスに祈ったんですか」
「うーん……まあ、そんな感じかな」
紀更の質問への回答もそこそこに、王黎は再び目を閉じた。
【聖なる光の石よ、誠が再び示されるその時まで、己が姿を偽れ】
王黎の手の中の祈聖石の周囲に、今度はこげ茶色の渦ができる。それは祈聖石をぐるぐると取り囲み、徐々に体積を増していく。渦がしゅるしゅると回転し始め、しばらく経つと祈聖石はその姿を丸太に変えていた。
「よい、しょ」
王黎は丸太に変わった祈聖石を地面に置いた。ここへ来た時と同じように、それはそのあたりにある丸太のひとつにしか見えなくなった。
「はい、終わり~」
王黎はわざとらしく左右の手のひらをたたき、付いてもいない汚れを払うふりをした。
「一部省略したけど、これが祈聖石の保守手順だよ。祈りを込める段階もかなり端折ったから、ほんとざっくりした流れだけどね」
「あ、ありがとうございました。すごい……操言士って、すごいですね」
紀更は興奮気味に礼を述べた。
操言士がすべきこと、操言士にしかできないこと。
都市部を怪魔から守る重要な祈聖石、その保守の実演。
ようやく王黎が見せてくれた師匠らしい指導に紀更は感動した。
「うんうん、紀更も弟子っぽくなってきたね」
そんな紀更の表情に、王黎も満足げに頷く。
「弟子っぽく?」
「学ぶ姿勢が出てきた、ってことだよ」
薄ら笑いだった王黎の目が細くなり、その視線は急に鋭くなる。
威圧するような王黎のその視線にとらわれて、紀更の背は冷たくなった。感動に包まれていた胸の中に北風が吹き荒れるようだ。
「ねえ、紀更」
妙に冷静な、それでいて力強く押さえつけるような声音で王黎は紀更に尋ねた。
「キミは《光の儀式》で操言の力はないと判別された。だけど、なぜかキミは後天的に操言の力を宿し、操言士になれと言われ、操言院で学んでいる。その現状をキミはどう考えているの?」
いたくて操言院にいるわけではない。なりたくて操言士になるわけではない。操言士団に言われたから、亡くなった弟のためだから、ただ仕方なく――。紀更がそんな甘ったれた認識を持っていることを、王黎は見抜いていた。
この状況は、すべて他責によるもの。自分が望んだことではない、これは他人事。紀更はどこかでそう思い、自ら考えることをしてこなかった。そんな自分を自分でどう思うのか、王黎は問うているのだ。
「俊が……」
自分の中の思いを正しく表現できる言葉を懸命に選びながら、紀更は答えた。
「弟が通っていた操言院に行くことが、弟の死の慰めになる……。最初、両親にはそう言いました。でもそれは、きれいに取り繕った言葉だったと……今は思います」
俊が亡くなり、喪失感で満ちていた家庭内。悲しむ両親を安心させたい気持ちが、自分の正直な気持ちに蓋をさせた。あの時は自分の言葉に納得していたが、そこに本当に、自分自身の素直な感情や意思があったかというと、ためらいもなく全肯定はできない。
操言院に通い始めてから一年が経ったが、操言の力、操言士、操言院、それらに対して、これまでの紀更は自分事として真剣に向き合ってこなかった。
「疑問に思い、自ら考えること……。私はそれをしてきませんでした」
「何に対して?」
「操言士に関わることすべて……もっと広げて言うなら、この先どう生きるのか」
紀更は自分の手の甲をもう片方の手でさすった。その手は緊張のためかひんやりとしている。
「私はただ、流れに身を任せて生きてきました。どこへ行きたいとか何をしたいとか……自分に何ができるとか……考えないでいいように、見ないようにしていた気がします」
「考えないでいいように、か」
「でも王都を出てこの村に来て……そんな自分が恥ずかしくなりました」
歳だけ重ねても、中身は子供。そう自覚したことを告白することは、とてもいたたまれない。だが、王黎はそんな紀更を嘲りも蔑みもしない。ただ少し、やるせなさそうな表情で無気力気味に言った。
「何も考えないでとりあえず流れに身を任せていれば楽だよ? それは別に悪いことじゃない。紀更だけじゃなくて、ほとんどの大人はそうやって生きていると思うけど」
「それは……違うんです……違う。楽で悪いことじゃないとしても……ほかの人がそうだからとか……そうじゃなくて」
紀更は、昨日の噴水広場でのユルゲンとの会話を思い出した。
――ありがとな、見習い操言士さん。
操言士としての紀更が、初めて受け取った報奨の言葉。操言院に通い出してからのこの一年間が報われた気がして、思わず泣いてしまった。
そうして心の中にあった重苦しい気持ちがとけたからだろうか、今は操言士としての自分のこの先の人生をしっかり考えたいと思う。これまで無知だった自分を恥じ、情けないと思う分と同じだけ、これからは様々なことを知りたいと思う。
「操言士について学んでいるつもりでした。でも私は何も理解していなかった。一人前の操言士になることは目的でもゴールでもない。その先に続く自分の人生をどう生きていくか……それを考えなきゃいけない……考えたいです」
なるべく自分を主語にした表現を探しながら、紀更は続けた。
「操言院に通うこと……操言士になることは、死んでしまった弟とは関係ない。これは私の人生です。普通の見習い操言士とは違うスタートですが、私は操言士としての道をどう歩いていくのか考えたい。今はそう思っています。何も考えずに流れに乗るんじゃなくて……自分の足で歩いて進みたいんです」
王黎の問いつめるような視線に負けないように、紀更は王黎に向き合った。普段はにこにこと笑って目を閉じている印象なので、王黎の見開かれたグレーの瞳に対して、見慣れないものへの怖さを覚える
だが恐れることはない。己の無知を知り、過去を反省し、これから先どうしたいか考え始める。それは己の力で生きるということ。少し遅いかもしれないが、そうしたいと師匠に伝えるのは、きっと師弟関係において必要なことだろう。
紀更の言葉にしばらく黙って耳をかたむけていた王黎は、真剣な声で告げた。
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