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男と喫茶店
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まだ見ぬ1杯のために男はゆるやかな坂道を登っていた。朝日が背後の方から差してきて、影が男の前で縦長に伸びながら歩いているを見ながらこれからのことを思った。
男は住まいにしているアパートを出る際に財布と鍵を持って早々と出てしまったため携帯をおいてきてしまった。それはいい、それはいいのだが時計をするわけでもないので何時か分からないので少しドキドキしているのだ。もしも開店前に着いてしまったらどうしよう、車で通り過ぎるときには、ぱっと見たところベンチや椅子は用意されていない。じゃあなぜそんな早くに出てきたんだ、開店していると確実にわかる時に行けばいいんじゃないの?
違うんだ、モーニングで、わりと早く、喫茶店の朝から1日スタートさせたいじゃん。
そんなくだらないことのためにドキドキしてしまう自分の計画性の無さに情け無い男は歩くのを止めることなく喫茶店を目指して坂を登った。
しばらく黙々と歩みを進めて坂を上りきり、スーパーや住宅地を横切ると目的の店についた。openの札がぶら下がっているところを見るに営業しているようだ。
男は緊張しながらもドアノブに手をかけ、店の中に入ることができた。
いらっしゃいませと元気な声に迎えられ、男は下を向いてしまった。男は大勢、元気、陽気が苦手なのだ。特に女の子には弱い、目を合わせておしゃべりできないツナミ系男子なんだ!
1人の店員が禁煙席か喫煙席どちらにするかと、聞いてきたので男は「禁煙で」と答えた。では、あちらにどうぞと腕を伸ばし、ジェスチャーしてくれた。
なんということでしょう、カウンターなんてないじゃない!全部ボックス席じゃ無いか!
俺は、じゃなくて、男は店員がもしかして俺をいたずらにボックス席に案内したんじゃ無いかと後ろを振り返ってみた。
もう店員いなかった。
仕方ない、ここで挫けてじゃあ帰る、なんて結末の方がよほど情け無い気がする。
男は手をあげて、「すいません、ちょっといいですか」正面を見ながらコールして見た。ってあぁ!?この銀色の奴もしかして…ベルっていう品物じゃ無かったかな?
しかしながらぁ!ここで手を下ろすなんてみっともなくてできない、俺はあの頃を忘れはしないぜ。
小学校の頃、隣のクラスと自分のクラスがごっちゃになってわからなかったとき、俺は自分の席だと思って休み時間から帰るなり腕を枕にして少しの間寝ちゃおうかなぁとしていたら、その席は女子の席で、それもナンバー2の席だったんだ。わかるやつにはわかるやろ?もう引けないって、ガヤガヤしてきてあいつなんだって声ちらほら聞こえてきたらもう寝たフリして先生早く来て俺を叱ってくれって自分のクラスに戻りなさいって諭してくれと心の中で思いながら耐え抜いたあの日の俺の貫く心意気忘れない!
店員が男に気付いて水とお絞りを出してくれた。
「ご注文はお決まりですか」
「あ、ああ、あ、あのモーニングが欲しいんだな」
しどろもどろになった挙句、大将まで引っ張り出してくるなんて自分の引き出しの多彩さに戦慄しながらモーニングを頼むことに成功した。
オーダーを受け離れていく店員の後ろ姿を見送った後、出仲間は店内をそれとなく眺めることにした。
自分の想像していたものとはかけ離れているとはいえ、チェーン店でも喫茶店はなんか、そう!大人感がある気がする。
新聞を読んでいるリーマンや上品なおじさまやおばさま、1日の予定を話し合う若いグループを見ていると社会に参加しているような気分になる。しかしまぁカウンター座ってみたかったなぁという気持ちと、イケオジ店主と凛々しい女店員にアイドル店員に出会えなかったことは少し残念ではある。本当に残念だ、ガンアクションとか始まったらマジでアドレナリン大噴火、興奮マックスでその日はそれだけで満足できそうなものになるのに。
おまたせしましたと男性店員が男にコーヒー、トースト、茹で卵などを配膳してくれた。
コーヒーを飲んでみる…うーん?なんかインスタントと変わらない気がするなぁ。滑らかな縁の容器から得られるコーヒーは家で飲むのとは違うと言えばそうなのだが飲み進めれば進むほどに、中身はあまり…思っていたより香りがしないし、ブレンドだからなのかやはりインスタント感が否めない。これで500円近く払っているのは…まぁ、雰囲気というか空間代、食器、その他を入れると妥当と言えば妥当なのだろうか。
男はボックス席で1人モーニングを満喫することに成功した。それがチェーン店でも、店内がボックス席オンリーでマスター不在、電子マネーokな利便性に優れた風情もへったくれもないお店でも男は一人で喫茶店に入り、コーヒーを飲んで会計を済ませることができる大人感があるのだからそれだけで成功したと思えるのだ。店の外に出れば、暖かく柔らかな陽が照って、空は水色をもう少し白を溶いたような色をしていて爽やかだった。
「少し遠回りをして帰るか」
店を後にして男は春の朝を楽しむことにした。朝が気持ちいいとなんかいいよね。
男は住まいにしているアパートを出る際に財布と鍵を持って早々と出てしまったため携帯をおいてきてしまった。それはいい、それはいいのだが時計をするわけでもないので何時か分からないので少しドキドキしているのだ。もしも開店前に着いてしまったらどうしよう、車で通り過ぎるときには、ぱっと見たところベンチや椅子は用意されていない。じゃあなぜそんな早くに出てきたんだ、開店していると確実にわかる時に行けばいいんじゃないの?
違うんだ、モーニングで、わりと早く、喫茶店の朝から1日スタートさせたいじゃん。
そんなくだらないことのためにドキドキしてしまう自分の計画性の無さに情け無い男は歩くのを止めることなく喫茶店を目指して坂を登った。
しばらく黙々と歩みを進めて坂を上りきり、スーパーや住宅地を横切ると目的の店についた。openの札がぶら下がっているところを見るに営業しているようだ。
男は緊張しながらもドアノブに手をかけ、店の中に入ることができた。
いらっしゃいませと元気な声に迎えられ、男は下を向いてしまった。男は大勢、元気、陽気が苦手なのだ。特に女の子には弱い、目を合わせておしゃべりできないツナミ系男子なんだ!
1人の店員が禁煙席か喫煙席どちらにするかと、聞いてきたので男は「禁煙で」と答えた。では、あちらにどうぞと腕を伸ばし、ジェスチャーしてくれた。
なんということでしょう、カウンターなんてないじゃない!全部ボックス席じゃ無いか!
俺は、じゃなくて、男は店員がもしかして俺をいたずらにボックス席に案内したんじゃ無いかと後ろを振り返ってみた。
もう店員いなかった。
仕方ない、ここで挫けてじゃあ帰る、なんて結末の方がよほど情け無い気がする。
男は手をあげて、「すいません、ちょっといいですか」正面を見ながらコールして見た。ってあぁ!?この銀色の奴もしかして…ベルっていう品物じゃ無かったかな?
しかしながらぁ!ここで手を下ろすなんてみっともなくてできない、俺はあの頃を忘れはしないぜ。
小学校の頃、隣のクラスと自分のクラスがごっちゃになってわからなかったとき、俺は自分の席だと思って休み時間から帰るなり腕を枕にして少しの間寝ちゃおうかなぁとしていたら、その席は女子の席で、それもナンバー2の席だったんだ。わかるやつにはわかるやろ?もう引けないって、ガヤガヤしてきてあいつなんだって声ちらほら聞こえてきたらもう寝たフリして先生早く来て俺を叱ってくれって自分のクラスに戻りなさいって諭してくれと心の中で思いながら耐え抜いたあの日の俺の貫く心意気忘れない!
店員が男に気付いて水とお絞りを出してくれた。
「ご注文はお決まりですか」
「あ、ああ、あ、あのモーニングが欲しいんだな」
しどろもどろになった挙句、大将まで引っ張り出してくるなんて自分の引き出しの多彩さに戦慄しながらモーニングを頼むことに成功した。
オーダーを受け離れていく店員の後ろ姿を見送った後、出仲間は店内をそれとなく眺めることにした。
自分の想像していたものとはかけ離れているとはいえ、チェーン店でも喫茶店はなんか、そう!大人感がある気がする。
新聞を読んでいるリーマンや上品なおじさまやおばさま、1日の予定を話し合う若いグループを見ていると社会に参加しているような気分になる。しかしまぁカウンター座ってみたかったなぁという気持ちと、イケオジ店主と凛々しい女店員にアイドル店員に出会えなかったことは少し残念ではある。本当に残念だ、ガンアクションとか始まったらマジでアドレナリン大噴火、興奮マックスでその日はそれだけで満足できそうなものになるのに。
おまたせしましたと男性店員が男にコーヒー、トースト、茹で卵などを配膳してくれた。
コーヒーを飲んでみる…うーん?なんかインスタントと変わらない気がするなぁ。滑らかな縁の容器から得られるコーヒーは家で飲むのとは違うと言えばそうなのだが飲み進めれば進むほどに、中身はあまり…思っていたより香りがしないし、ブレンドだからなのかやはりインスタント感が否めない。これで500円近く払っているのは…まぁ、雰囲気というか空間代、食器、その他を入れると妥当と言えば妥当なのだろうか。
男はボックス席で1人モーニングを満喫することに成功した。それがチェーン店でも、店内がボックス席オンリーでマスター不在、電子マネーokな利便性に優れた風情もへったくれもないお店でも男は一人で喫茶店に入り、コーヒーを飲んで会計を済ませることができる大人感があるのだからそれだけで成功したと思えるのだ。店の外に出れば、暖かく柔らかな陽が照って、空は水色をもう少し白を溶いたような色をしていて爽やかだった。
「少し遠回りをして帰るか」
店を後にして男は春の朝を楽しむことにした。朝が気持ちいいとなんかいいよね。
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