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おまけ
③バレンタイン編・前編
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「青木先輩......!」
女の子の可愛らしい声に呼び止められて遼は振り返った。
そこには女の子が二人、手に紙袋を持って立っていた。
それを見て遼は、ああ、と思う。
今日は2月14日バレンタイン。意中の相手にチョコをあげるというイベントの日。
特に学生においてそれは一大イベントで、あげる方ももらう方も朝からドキドキしっぱなしの一日だった。
例に漏れず遼も毎年ドキドキしていたものだ。
今年はあげる方になりそうだけど
なんて思っていたが。
遼は目の前にいる、照れるようにはにかみながら一心に遼を見つめる二人の女子を見てにんまりと微笑んだ。
「どうしたの?」
内心何か分かりつつも遼は二人にそう問いかける。
すると二人は各々遼に向かって紙袋を差し出した。中には綺麗に包装されリボンがラッピングされた物が入っている。
「これ......バレンタインです!」
差し出された紙袋を遼は受け取る。
「ありがとう」
受け取った遼のお礼の言葉とにっこりとした笑顔に、二人は手を握り合い嬉しそうに微笑み合う。
俺もまだまだモテるな!
そんな女子たちの姿を見ながら、遼は内心ほくそ笑む。
基本的に明るく、誰とでも話をする遼は昔からバレンタインはけっこうな数のチョコをもらっていた。
今年は恋人もできたしそういうのはないかと思っていたが、やはりもらえると嬉しいものだ。チョコの多さが男のステータスでもあるし、なんて遼は思う。
まあ、でも俺には大河だけだけど!
チョコをもらえるのはもちろん嬉しいが、自分には特別な恋人がいる。
気持ちだけありがたく受け取っておこう、そう遼が思っていると。
「神崎先輩と一緒に使って下さいね!」
「えっ⁉」
急に大河の名前が出てきて、裏返るような声が遼から出る。
「え...?ん...たいがと......?」
「はい!」
たいがだってーと二人が手を取り合ってキャッキャッと喜ぶ。
「それじゃ、先輩。神崎先輩と末永くお幸せに~」
「あ...うん、ありがと......」
そう言うと二人はテンションの上がったまま嬉しそうに去っていった。
「大河と一緒に......?」
言われた言葉を繰り返してから、遼は手に持った二つの紙袋を見る。覗き込んだ袋の中には、チョコにしては大きい包みが入ってあった。よく見ると包装紙から、某有名な海外メーカーの柔軟剤の名前と、人気の雑貨屋の店名が透けて見えた。
チョコじゃない⁇バレンタインって言ってたよな⁇
紙袋を二つ持ちながら遼は首を傾げた。
その後も…
「青木くんこれバレンタイン!よかったらもらって」
「え…!重っ……⁉」
10kgのお米をもらったり。
「これよかったら神崎さんと食べてください」
「野菜⁉︎……え?」
次から次にバレンタインと称して家庭的なプレゼントをもらう。
「ありがとう……」
その全てに満面の笑みでお礼を言いながら、みんなに必ず『神崎くん(先輩)と一緒に』と言われて頬を赤らめる遼であった。
「すごいなこれ」
机の上に並べられた紙袋の数々を見て宰が感嘆のため息を零す。
柔軟剤や洗剤、入浴剤から始まり、お米に野菜、出汁や調味料のセット、おそろいの食器、果ては「みんなでお金出し合って買いました~」とB〇UNOのホットプレートまでもらった。
もちろん漏れなく『神崎くん(先輩)と一緒に』と渡されたものである。
「新婚夫婦へのプレゼントかっての......」
バレンタインにしては生活感のある品々に、つい遼は呟く。
「何なに?ついに同棲でも始めるのか?」
その呟きに宰が頬杖をついてにやにやと遼を見た。
「なっ......違う!......そりゃゆくゆくは一緒に暮らそうと思ってるけど......ってそういうことじゃなくて!俺はこのプレゼントのことを言ってるんだよ!」
赤くなりながら遼は机の上を指差す。
「バレンタインって言ったらチョコだろ⁉なのに食べ物か生活用品って、しかもみんな口揃えて大河と一緒に…って言うし…いや!ありがたいけど‼」
実際すべて大河と一緒に使える役立つものばかりで、ありがたいけれど困惑する気持ちがあるのも事実だった。
「推しならぬ推しカプへのプレゼントなんだからありがたく受け取ったら」
「おしかぷ......⁇⁇」
聞きなれない言葉に遼は首を傾げる。
「いやぁ、愛されてるね~うちの大学の名物カップルは」
「............」
そう言って宰は微笑ましそうに遼を見つめた。
確かに
遼は素直に、その通りだなと思う。
並んだ紙袋はすべて遼と大河を思ってくれたものだ。
大河と遼は男同士だ、なのに宰だけじゃなく、みんな普通に受け入れてくれて、その上こんな風にプレゼントまでくれるなんて。
遼がジーンとしていると、そうだ!と思いついたように宰が手を叩く。
「ホワイトデーは神崎と一緒に、校舎の上から豆まきならぬ飴まきしたらみんな喜ぶんじゃない」
「佐々木......?」
遼は目を細めて宰を見る。そんな遼に宰はプッと吹き出した。そのまま宰が笑い出す。
「お前~~俺のことからかってるだろぉぉ~~」
「ごめんごめん。想像したら面白くてさ、ハハッ......」
ツボに入ったのか笑いの止まらない宰を、遼はジトッと睨んだ。
女の子の可愛らしい声に呼び止められて遼は振り返った。
そこには女の子が二人、手に紙袋を持って立っていた。
それを見て遼は、ああ、と思う。
今日は2月14日バレンタイン。意中の相手にチョコをあげるというイベントの日。
特に学生においてそれは一大イベントで、あげる方ももらう方も朝からドキドキしっぱなしの一日だった。
例に漏れず遼も毎年ドキドキしていたものだ。
今年はあげる方になりそうだけど
なんて思っていたが。
遼は目の前にいる、照れるようにはにかみながら一心に遼を見つめる二人の女子を見てにんまりと微笑んだ。
「どうしたの?」
内心何か分かりつつも遼は二人にそう問いかける。
すると二人は各々遼に向かって紙袋を差し出した。中には綺麗に包装されリボンがラッピングされた物が入っている。
「これ......バレンタインです!」
差し出された紙袋を遼は受け取る。
「ありがとう」
受け取った遼のお礼の言葉とにっこりとした笑顔に、二人は手を握り合い嬉しそうに微笑み合う。
俺もまだまだモテるな!
そんな女子たちの姿を見ながら、遼は内心ほくそ笑む。
基本的に明るく、誰とでも話をする遼は昔からバレンタインはけっこうな数のチョコをもらっていた。
今年は恋人もできたしそういうのはないかと思っていたが、やはりもらえると嬉しいものだ。チョコの多さが男のステータスでもあるし、なんて遼は思う。
まあ、でも俺には大河だけだけど!
チョコをもらえるのはもちろん嬉しいが、自分には特別な恋人がいる。
気持ちだけありがたく受け取っておこう、そう遼が思っていると。
「神崎先輩と一緒に使って下さいね!」
「えっ⁉」
急に大河の名前が出てきて、裏返るような声が遼から出る。
「え...?ん...たいがと......?」
「はい!」
たいがだってーと二人が手を取り合ってキャッキャッと喜ぶ。
「それじゃ、先輩。神崎先輩と末永くお幸せに~」
「あ...うん、ありがと......」
そう言うと二人はテンションの上がったまま嬉しそうに去っていった。
「大河と一緒に......?」
言われた言葉を繰り返してから、遼は手に持った二つの紙袋を見る。覗き込んだ袋の中には、チョコにしては大きい包みが入ってあった。よく見ると包装紙から、某有名な海外メーカーの柔軟剤の名前と、人気の雑貨屋の店名が透けて見えた。
チョコじゃない⁇バレンタインって言ってたよな⁇
紙袋を二つ持ちながら遼は首を傾げた。
その後も…
「青木くんこれバレンタイン!よかったらもらって」
「え…!重っ……⁉」
10kgのお米をもらったり。
「これよかったら神崎さんと食べてください」
「野菜⁉︎……え?」
次から次にバレンタインと称して家庭的なプレゼントをもらう。
「ありがとう……」
その全てに満面の笑みでお礼を言いながら、みんなに必ず『神崎くん(先輩)と一緒に』と言われて頬を赤らめる遼であった。
「すごいなこれ」
机の上に並べられた紙袋の数々を見て宰が感嘆のため息を零す。
柔軟剤や洗剤、入浴剤から始まり、お米に野菜、出汁や調味料のセット、おそろいの食器、果ては「みんなでお金出し合って買いました~」とB〇UNOのホットプレートまでもらった。
もちろん漏れなく『神崎くん(先輩)と一緒に』と渡されたものである。
「新婚夫婦へのプレゼントかっての......」
バレンタインにしては生活感のある品々に、つい遼は呟く。
「何なに?ついに同棲でも始めるのか?」
その呟きに宰が頬杖をついてにやにやと遼を見た。
「なっ......違う!......そりゃゆくゆくは一緒に暮らそうと思ってるけど......ってそういうことじゃなくて!俺はこのプレゼントのことを言ってるんだよ!」
赤くなりながら遼は机の上を指差す。
「バレンタインって言ったらチョコだろ⁉なのに食べ物か生活用品って、しかもみんな口揃えて大河と一緒に…って言うし…いや!ありがたいけど‼」
実際すべて大河と一緒に使える役立つものばかりで、ありがたいけれど困惑する気持ちがあるのも事実だった。
「推しならぬ推しカプへのプレゼントなんだからありがたく受け取ったら」
「おしかぷ......⁇⁇」
聞きなれない言葉に遼は首を傾げる。
「いやぁ、愛されてるね~うちの大学の名物カップルは」
「............」
そう言って宰は微笑ましそうに遼を見つめた。
確かに
遼は素直に、その通りだなと思う。
並んだ紙袋はすべて遼と大河を思ってくれたものだ。
大河と遼は男同士だ、なのに宰だけじゃなく、みんな普通に受け入れてくれて、その上こんな風にプレゼントまでくれるなんて。
遼がジーンとしていると、そうだ!と思いついたように宰が手を叩く。
「ホワイトデーは神崎と一緒に、校舎の上から豆まきならぬ飴まきしたらみんな喜ぶんじゃない」
「佐々木......?」
遼は目を細めて宰を見る。そんな遼に宰はプッと吹き出した。そのまま宰が笑い出す。
「お前~~俺のことからかってるだろぉぉ~~」
「ごめんごめん。想像したら面白くてさ、ハハッ......」
ツボに入ったのか笑いの止まらない宰を、遼はジトッと睨んだ。
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