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第三章 初デートと二度目のキス、その後は......

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「そういえばさ......」
どうにか熱が引いた頬を押さえながら遼が大河を見上げる。
「お前って普段シンプルな服ばっかりだよな」
「シンプル......?」
ピンときていなさそうな大河の服の裾を、軽く引っ張る。
「普段無地の服ばっかり着てるし、今日もシャツにデニムってシンプルだよな」
(それでも十分かっこいいけど)
「ああ......」
なんのことか分かって大河が頷く。
「前に近衛から.....医学部に通ってる友達なんだけど、誕生日プレゼントに子犬がプリントされたパーカーをもらったことがあって」
(神崎に子犬プリントのパーカー......なんだそれ絶対可愛い‼)
パーカー姿の大河を想像して、遼は顔をにやけさせた。
「大学に着ていこうとしたことがあるんだけど、どこから頭を出せばいいか分からなくてさ......一時間ぐらい頑張ったんだけど......」
あきらめちゃってと大河が言う。
「結局パーカーの紐が締まってて頭が出せなかっただけなんだけどさ。それから着やすい服ばかり選ぶようになって......」
恥ずかしそうにはにかんで大河が笑う。シンプルな服の真相に遼は口を押えた。
「プッ、ふっハハハハ......」
そのまま遼は笑い出す。
(なにそれ、めちゃくちゃ可愛いんだけど)
あまりに大河らしい理由に遼は笑いが止まらない。笑う遼を大河がとても嬉しそうに見た。
「ふ、ふふ......」
ツボに入った遼は、笑いすぎて滲んだ涙を拭う。
「まあいいじゃん、これからはパーカーの紐は全部俺が解いてやるし、着るのが難しい服は俺が手伝ってやるよ」
「青木......」
遼の言葉に大河が幸せそうな笑顔になる。
「ありがと、大好きだよ」
(あーもーだからこいつはほんとに......)
「おう......」
やっと収まった頬をまた赤くしながら、遼はぶっきらぼうにそう返した。そんな遼に大河はにこにこと笑顔を向けた。


「ていうかさ......子犬プリントのパーカーなんて......そいつ、お前のこと......ちょっと、なんていうか......す、好きなんじゃないのか......」
嫉妬していることがバレるのが恥ずかしくて、もごもごしながら喋る遼に大河は特に気にとめていない様子で笑い出した。
「俺が好きなんじゃなくて、近衛は子犬が好きなんだよ」
「子犬......?」
「そうそうちょうど近衛が課題に追われてる時期でさ、子犬見てると落ち着くからお前これ着ろって渡されてさ」
あいつ精神的に追い込まれると、子犬グッズを周りに置く癖があって、と大河が笑う。
「............」
それはまた、変わってるというかなんというか。変わってる大河の周りにはやはり変わってる人物が集まるようだ。
(子犬好きってめっちゃ可愛いやつだったりして......)
小動物が好きな人物と聞いて本人を知らない遼は、貧弱そうないかにも守ってあげたくなる系の男子を思い浮かべる。
(こんど医学部にチェックしに行かないと)
大河が自分のことを好きなことは分かっているが、大河はめちゃくちゃ素敵なのだ。その近衛とかいうやつが色目を使わないとは限らない。
(月曜日にさっそく見に行こう)
そう決めて拳を握る遼に大河は不思議そうに首を傾げた。


「はっっくしょん‼‼‼」
豪快にくしゃみをして、近衛は鼻をすする。
「風邪かぁ......まっ、風邪なんてひとっ風呂浴びたら直るだろ」
遼の想像とは正反対の、頑丈で逞しい体を伸ばすと近衛は立ち上がる。
「風呂入ったら、犬カフェでも行くかな~」
そう言いながら、近衛は風呂場に向かう。大きい体をして子犬が大好きな近衛だが、こう見えて大学内の学生の中で唯一大河と同等に渡り合える程の秀才だった。
足元には近衛が先程まで見ていた、子犬の写真集が風に吹かれパラパラとページがめくられていた。
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