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第三章 初デートと二度目のキス、その後は......
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(俺はバカか⁉)
待ち合わせ場所の犬の像の前に立ち、遼は心の中で叫んだ。
ちらっとスマホの時計を見る。時刻は待ち合わせ時間のおおよそ三十分前を指していた。
今日は大河との初デート。遼は昨晩服装に悩み、いつもより遅い時間に寝たにも関わらずアラームより早く起床した。家にいても落ち着かず、気付いたら出発し、気付いたら三十分前にここに辿り着いていた。
(ま、まぁ何かあったらいけないから早めに家を出たら思ったより早く着いただけだし)
そう遼は気持ちを取り直す。
遼はそのままLINNを開くと、昨日の夜大河と交わしたやりとりの画面を表示する。
大河からはよく犬のスタンプが送られてくる。のんびりとした雰囲気のそれはどこか大河に似ていて、なんだか見ているだけで気持ちが和んでくる。
なんで犬のスタンプばかり使うのか聞いたら『青木が俺のこと犬みたいって言ったから』と返事が返ってきて。それで犬を使ってる大河が可愛くて、遼はすっかり大河が犬のスタンプを送るだけでキュンとするようになってしまった。
今は大河が遼のことを猫に似ているというので、犬と猫が仲良くしているスタンプを購入して二人でよく送りあっている。見返して知らずのうちに遼の顔がにやけた。
(俺たちラブラブじゃん......)
遼はふふふとほくそ笑む。
すると、周囲がざわめいた。
「青木!」
その声に遼は顔を上げる。
「っ......」
声の主はもちろん大河で。遼が自分を見たのを確認すると大河は遼に向かって手を上げて、嬉しそうに微笑んだ。その笑顔が眩しく周囲を照らす。それに遼も含め、周りにいた人は老若男女問わずみんな目がハートになった。
大河はデニムのパンツに白シャツ、その上に薄手のカーディガンを羽織っていた。
シンプルで清潔感のあるその服装が、181cmという長身でスタイルのいい(しかも筋肉もある)大河の魅力をさらに引き立たせていた。
(イ、イケメンにデニムと白シャツはあかん!)
あまりのかっこよさに生まれも育ちも関東な遼の頭に、謎の関西弁ツッコミが浮かぶ。
「ごめん、待たせちゃった?」
他には目もくれず、真っ直ぐに遼だけを見て大河が駆け寄る。
「ううん......」
ポーッと大河に見惚れながら遼は首を振った。
「そっか、良かった。ていうか青木早いね」
「っ!」
大河の言葉に遼は我に返る。
「え......ちが、いや......」
大河のあまりのかっこよさの余韻で、今日のデートが楽しみすぎて早く着いてしまったことをいつもみたいにうまく誤魔化せない。
遼が言い淀んでいると。
「俺ね青木とのデート楽しみすぎて、気付いたら早く家出ちゃった」
大河がふんわりと嬉しそうに笑う。
「青木会いたかった」
大河が遼の頬を撫でる。昨日の夜もLINNしてたのに、というか昨日も学校で会ったのに、そう思うけれど。
「俺も......」
大河の表情も声も優しくて素直に言葉が零れ落ちる。
「会、いたかった......」
恥ずかしくて最後の方は、声が小さくなる。だけどそれだけで十分大河には伝わったようで、ただでさえ嬉しそうな顔が更に嬉しそうになった。
頬を染めながらも、そんな大河にキュンとして遼がはにかむ。
すると大河にギュッと抱きしめられた。
「ちょっ......」
学校ではないのでさずがに遼は慌てるが、大河は相変わらず遼しか目に入らない様子でにこにこしている。
「青木かわいい......」
「ん......」
耳元で囁かれて遼の体が跳ねる。大河はもう一度遼の頬を撫でると、名残惜しそうに遼を離した。
「じゃあ、行こっか」
大河はにっこりと笑って歩き出した。大河が背中を向けた隙に、遼は頬を押える。
(ちょ、かっこよすぎ‼)
遼は声にならない叫び声を上げた。
「青木?」
「あっうん、行こうぜ」
呼ばれた声に遼は大河を追いかける。そして二人は並んで歩き出した
待ち合わせ場所の犬の像の前に立ち、遼は心の中で叫んだ。
ちらっとスマホの時計を見る。時刻は待ち合わせ時間のおおよそ三十分前を指していた。
今日は大河との初デート。遼は昨晩服装に悩み、いつもより遅い時間に寝たにも関わらずアラームより早く起床した。家にいても落ち着かず、気付いたら出発し、気付いたら三十分前にここに辿り着いていた。
(ま、まぁ何かあったらいけないから早めに家を出たら思ったより早く着いただけだし)
そう遼は気持ちを取り直す。
遼はそのままLINNを開くと、昨日の夜大河と交わしたやりとりの画面を表示する。
大河からはよく犬のスタンプが送られてくる。のんびりとした雰囲気のそれはどこか大河に似ていて、なんだか見ているだけで気持ちが和んでくる。
なんで犬のスタンプばかり使うのか聞いたら『青木が俺のこと犬みたいって言ったから』と返事が返ってきて。それで犬を使ってる大河が可愛くて、遼はすっかり大河が犬のスタンプを送るだけでキュンとするようになってしまった。
今は大河が遼のことを猫に似ているというので、犬と猫が仲良くしているスタンプを購入して二人でよく送りあっている。見返して知らずのうちに遼の顔がにやけた。
(俺たちラブラブじゃん......)
遼はふふふとほくそ笑む。
すると、周囲がざわめいた。
「青木!」
その声に遼は顔を上げる。
「っ......」
声の主はもちろん大河で。遼が自分を見たのを確認すると大河は遼に向かって手を上げて、嬉しそうに微笑んだ。その笑顔が眩しく周囲を照らす。それに遼も含め、周りにいた人は老若男女問わずみんな目がハートになった。
大河はデニムのパンツに白シャツ、その上に薄手のカーディガンを羽織っていた。
シンプルで清潔感のあるその服装が、181cmという長身でスタイルのいい(しかも筋肉もある)大河の魅力をさらに引き立たせていた。
(イ、イケメンにデニムと白シャツはあかん!)
あまりのかっこよさに生まれも育ちも関東な遼の頭に、謎の関西弁ツッコミが浮かぶ。
「ごめん、待たせちゃった?」
他には目もくれず、真っ直ぐに遼だけを見て大河が駆け寄る。
「ううん......」
ポーッと大河に見惚れながら遼は首を振った。
「そっか、良かった。ていうか青木早いね」
「っ!」
大河の言葉に遼は我に返る。
「え......ちが、いや......」
大河のあまりのかっこよさの余韻で、今日のデートが楽しみすぎて早く着いてしまったことをいつもみたいにうまく誤魔化せない。
遼が言い淀んでいると。
「俺ね青木とのデート楽しみすぎて、気付いたら早く家出ちゃった」
大河がふんわりと嬉しそうに笑う。
「青木会いたかった」
大河が遼の頬を撫でる。昨日の夜もLINNしてたのに、というか昨日も学校で会ったのに、そう思うけれど。
「俺も......」
大河の表情も声も優しくて素直に言葉が零れ落ちる。
「会、いたかった......」
恥ずかしくて最後の方は、声が小さくなる。だけどそれだけで十分大河には伝わったようで、ただでさえ嬉しそうな顔が更に嬉しそうになった。
頬を染めながらも、そんな大河にキュンとして遼がはにかむ。
すると大河にギュッと抱きしめられた。
「ちょっ......」
学校ではないのでさずがに遼は慌てるが、大河は相変わらず遼しか目に入らない様子でにこにこしている。
「青木かわいい......」
「ん......」
耳元で囁かれて遼の体が跳ねる。大河はもう一度遼の頬を撫でると、名残惜しそうに遼を離した。
「じゃあ、行こっか」
大河はにっこりと笑って歩き出した。大河が背中を向けた隙に、遼は頬を押える。
(ちょ、かっこよすぎ‼)
遼は声にならない叫び声を上げた。
「青木?」
「あっうん、行こうぜ」
呼ばれた声に遼は大河を追いかける。そして二人は並んで歩き出した
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