28 / 45
第三章 初デートと二度目のキス、その後は......
⑩
しおりを挟む
(俺はバカか⁉)
待ち合わせ場所の犬の像の前に立ち、遼は心の中で叫んだ。
ちらっとスマホの時計を見る。時刻は待ち合わせ時間のおおよそ三十分前を指していた。
今日は大河との初デート。遼は昨晩服装に悩み、いつもより遅い時間に寝たにも関わらずアラームより早く起床した。家にいても落ち着かず、気付いたら出発し、気付いたら三十分前にここに辿り着いていた。
(ま、まぁ何かあったらいけないから早めに家を出たら思ったより早く着いただけだし)
そう遼は気持ちを取り直す。
遼はそのままLINNを開くと、昨日の夜大河と交わしたやりとりの画面を表示する。
大河からはよく犬のスタンプが送られてくる。のんびりとした雰囲気のそれはどこか大河に似ていて、なんだか見ているだけで気持ちが和んでくる。
なんで犬のスタンプばかり使うのか聞いたら『青木が俺のこと犬みたいって言ったから』と返事が返ってきて。それで犬を使ってる大河が可愛くて、遼はすっかり大河が犬のスタンプを送るだけでキュンとするようになってしまった。
今は大河が遼のことを猫に似ているというので、犬と猫が仲良くしているスタンプを購入して二人でよく送りあっている。見返して知らずのうちに遼の顔がにやけた。
(俺たちラブラブじゃん......)
遼はふふふとほくそ笑む。
すると、周囲がざわめいた。
「青木!」
その声に遼は顔を上げる。
「っ......」
声の主はもちろん大河で。遼が自分を見たのを確認すると大河は遼に向かって手を上げて、嬉しそうに微笑んだ。その笑顔が眩しく周囲を照らす。それに遼も含め、周りにいた人は老若男女問わずみんな目がハートになった。
大河はデニムのパンツに白シャツ、その上に薄手のカーディガンを羽織っていた。
シンプルで清潔感のあるその服装が、181cmという長身でスタイルのいい(しかも筋肉もある)大河の魅力をさらに引き立たせていた。
(イ、イケメンにデニムと白シャツはあかん!)
あまりのかっこよさに生まれも育ちも関東な遼の頭に、謎の関西弁ツッコミが浮かぶ。
「ごめん、待たせちゃった?」
他には目もくれず、真っ直ぐに遼だけを見て大河が駆け寄る。
「ううん......」
ポーッと大河に見惚れながら遼は首を振った。
「そっか、良かった。ていうか青木早いね」
「っ!」
大河の言葉に遼は我に返る。
「え......ちが、いや......」
大河のあまりのかっこよさの余韻で、今日のデートが楽しみすぎて早く着いてしまったことをいつもみたいにうまく誤魔化せない。
遼が言い淀んでいると。
「俺ね青木とのデート楽しみすぎて、気付いたら早く家出ちゃった」
大河がふんわりと嬉しそうに笑う。
「青木会いたかった」
大河が遼の頬を撫でる。昨日の夜もLINNしてたのに、というか昨日も学校で会ったのに、そう思うけれど。
「俺も......」
大河の表情も声も優しくて素直に言葉が零れ落ちる。
「会、いたかった......」
恥ずかしくて最後の方は、声が小さくなる。だけどそれだけで十分大河には伝わったようで、ただでさえ嬉しそうな顔が更に嬉しそうになった。
頬を染めながらも、そんな大河にキュンとして遼がはにかむ。
すると大河にギュッと抱きしめられた。
「ちょっ......」
学校ではないのでさずがに遼は慌てるが、大河は相変わらず遼しか目に入らない様子でにこにこしている。
「青木かわいい......」
「ん......」
耳元で囁かれて遼の体が跳ねる。大河はもう一度遼の頬を撫でると、名残惜しそうに遼を離した。
「じゃあ、行こっか」
大河はにっこりと笑って歩き出した。大河が背中を向けた隙に、遼は頬を押える。
(ちょ、かっこよすぎ‼)
遼は声にならない叫び声を上げた。
「青木?」
「あっうん、行こうぜ」
呼ばれた声に遼は大河を追いかける。そして二人は並んで歩き出した
待ち合わせ場所の犬の像の前に立ち、遼は心の中で叫んだ。
ちらっとスマホの時計を見る。時刻は待ち合わせ時間のおおよそ三十分前を指していた。
今日は大河との初デート。遼は昨晩服装に悩み、いつもより遅い時間に寝たにも関わらずアラームより早く起床した。家にいても落ち着かず、気付いたら出発し、気付いたら三十分前にここに辿り着いていた。
(ま、まぁ何かあったらいけないから早めに家を出たら思ったより早く着いただけだし)
そう遼は気持ちを取り直す。
遼はそのままLINNを開くと、昨日の夜大河と交わしたやりとりの画面を表示する。
大河からはよく犬のスタンプが送られてくる。のんびりとした雰囲気のそれはどこか大河に似ていて、なんだか見ているだけで気持ちが和んでくる。
なんで犬のスタンプばかり使うのか聞いたら『青木が俺のこと犬みたいって言ったから』と返事が返ってきて。それで犬を使ってる大河が可愛くて、遼はすっかり大河が犬のスタンプを送るだけでキュンとするようになってしまった。
今は大河が遼のことを猫に似ているというので、犬と猫が仲良くしているスタンプを購入して二人でよく送りあっている。見返して知らずのうちに遼の顔がにやけた。
(俺たちラブラブじゃん......)
遼はふふふとほくそ笑む。
すると、周囲がざわめいた。
「青木!」
その声に遼は顔を上げる。
「っ......」
声の主はもちろん大河で。遼が自分を見たのを確認すると大河は遼に向かって手を上げて、嬉しそうに微笑んだ。その笑顔が眩しく周囲を照らす。それに遼も含め、周りにいた人は老若男女問わずみんな目がハートになった。
大河はデニムのパンツに白シャツ、その上に薄手のカーディガンを羽織っていた。
シンプルで清潔感のあるその服装が、181cmという長身でスタイルのいい(しかも筋肉もある)大河の魅力をさらに引き立たせていた。
(イ、イケメンにデニムと白シャツはあかん!)
あまりのかっこよさに生まれも育ちも関東な遼の頭に、謎の関西弁ツッコミが浮かぶ。
「ごめん、待たせちゃった?」
他には目もくれず、真っ直ぐに遼だけを見て大河が駆け寄る。
「ううん......」
ポーッと大河に見惚れながら遼は首を振った。
「そっか、良かった。ていうか青木早いね」
「っ!」
大河の言葉に遼は我に返る。
「え......ちが、いや......」
大河のあまりのかっこよさの余韻で、今日のデートが楽しみすぎて早く着いてしまったことをいつもみたいにうまく誤魔化せない。
遼が言い淀んでいると。
「俺ね青木とのデート楽しみすぎて、気付いたら早く家出ちゃった」
大河がふんわりと嬉しそうに笑う。
「青木会いたかった」
大河が遼の頬を撫でる。昨日の夜もLINNしてたのに、というか昨日も学校で会ったのに、そう思うけれど。
「俺も......」
大河の表情も声も優しくて素直に言葉が零れ落ちる。
「会、いたかった......」
恥ずかしくて最後の方は、声が小さくなる。だけどそれだけで十分大河には伝わったようで、ただでさえ嬉しそうな顔が更に嬉しそうになった。
頬を染めながらも、そんな大河にキュンとして遼がはにかむ。
すると大河にギュッと抱きしめられた。
「ちょっ......」
学校ではないのでさずがに遼は慌てるが、大河は相変わらず遼しか目に入らない様子でにこにこしている。
「青木かわいい......」
「ん......」
耳元で囁かれて遼の体が跳ねる。大河はもう一度遼の頬を撫でると、名残惜しそうに遼を離した。
「じゃあ、行こっか」
大河はにっこりと笑って歩き出した。大河が背中を向けた隙に、遼は頬を押える。
(ちょ、かっこよすぎ‼)
遼は声にならない叫び声を上げた。
「青木?」
「あっうん、行こうぜ」
呼ばれた声に遼は大河を追いかける。そして二人は並んで歩き出した
2
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
可愛くない僕は愛されない…はず
おがこは
BL
Ωらしくない見た目がコンプレックスな自己肯定感低めなΩ。痴漢から助けた女子高生をきっかけにその子の兄(α)に絆され愛されていく話。
押しが強いスパダリα ✕ 逃げるツンツンデレΩ
ハッピーエンドです!
病んでる受けが好みです。
闇描写大好きです(*´`)
※まだアルファポリスに慣れてないため、同じ話を何回か更新するかもしれません。頑張って慣れていきます!感想もお待ちしております!
また、当方最近忙しく、投稿頻度が不安定です。気長に待って頂けると嬉しいです(*^^*)
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
就職先の公爵当主が、おれにやたら執着してくるんですが
天知 カナイ
BL
「ばらされたくなかったら結婚してくださいませんこと?」「おれの事が好きなのか!」「いえ全然」貴族嫌いの公爵令息が弱みを握られ令嬢に結婚させられた結果
という作品にに出てくる二人の裏話です。ほぼエロです。執着きつめの公爵29歳と侍従候補18歳、七年経っても続いています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる