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第三章 初デートと二度目のキス、その後は......
⑨
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「っ......ハァ......ハ」
息を切れるのも厭わず大河は廊下を全力疾走で走っていた。目指すは昨日怒らせてしまった彼のところ。
あんな風にキスをして、その上好きだなんて言ったら優しい彼をさらに怒らせてしまうかもしれない。それでも、この溢れる気持ちを伝えないまま後悔するのだけは嫌だ。
大河の頭の中に青木の笑顔が浮かぶ。
早くあの笑顔に会いたい。
せめてあの笑顔だけでも取り戻す。それを心に誓いながら、経済学部へと続く真っ直ぐな渡り廊下を大河は駆け抜けた。
「俺っはるかちゃんのことが好きなんだ!」
想いを告げる大河の言葉を聞いて、青木はきょとんと目を瞬かせた。そこから青木の手を握りしめて堰を切ったように言葉を続ける大河に、青木の顔が徐々に緩み出す。
(はるかじゃなくて、りょうだったんだ......)
遼の名前を大河が『はるか』だと勘違いしていたと分かった頃には、遼の顔はすっかりいつもの楽しそうな表情に戻っていた。
そして遼は笑い出した。
眩しくて大河を幸せにしてくれる笑顔。
(ああ......やっぱりこの笑顔が大好きだ)
「やっぱり笑顔、可愛い」
「っ......!」
そう言うと目の前の遼が赤くなる。それを見て笑顔だけじゃない赤くなった顔も、潤んだ瞳も、遼のすべてが可愛くて愛しいと大河は思った。
「ほらちゃんと言い直せよ」
触れる大河の手に遼が頬を寄せる。言っている意味が分かって、大河は真剣な瞳を遼に向けた。
「青木遼さん、大好きです。俺と付き合ってもらえますか?」
「うん、いいよ」
頷いた遼に、嬉しくて幸せで大河の顔に笑顔が広がっていく。堪えきれず大河は遼を抱きしめた。
恥ずかしそうに遼は突っぱねるが、離したくないと髪に顔を埋めたら遼は大人しく大河の腕の中に納まってくれた。
周りで拍手をするみんなの祝福がさらに嬉しさを膨らませていって。
大河が目を合わせると遼が笑った。大河の大好きな笑顔で。
その笑顔はとても幸せそうで、それを見つめる自分も今同じ顔をしているだろう。
(もう離さない、絶対に幸せにする)
そう思って大河は、甘えるように凭れ掛かる遼を自分の腕の中に閉じ込めた。
それから遼とのお付き合いが始まった。
遼はやっぱり優しい、酔ってキスをしたことも、名前を間違えていたことも、大河を責めることなく全部許してくれた。
あんなことをしてしまった大河に、前と変わらず楽しそうに笑顔で側に居てくれる。
今までも十分可愛かったのに、日を追うごとに遼の笑顔が輝きを増して、どんどん可愛くなっていく。そんな遼のことが大好きで愛しくて、日に日に彼への想いが深く募っていく。そしてそれは大河だけじゃなくて、側にいると遼が全身で自分を愛してくれているのが伝わってくる。
だから遼を見ていると、すぐに触れたくなって、抱きしめたくて堪らなくなる。大河はすっかり遼を抱きしめる癖がついた。遼を腕の中に抱きしめる、それだけでとても幸せで。
だけど本当は、本当は、その唇にキスをして、もっと深く、遼の奥まで大河でいっぱいにしたい。愛して乱して、遼のすべてが欲しかった。
でも大河は一度順番を間違えて、遼を怒らせてしまったから。告白する前にキスをして、遼を悲しませてしまったから。
次は間違えない。ちゃんと時間をかけてゆっくりと、遼を怖がらせないように仲を深めていかなくては。
可愛い遼に、もっと触れたくなる衝動を大河は密かに堪えていた。
息を切れるのも厭わず大河は廊下を全力疾走で走っていた。目指すは昨日怒らせてしまった彼のところ。
あんな風にキスをして、その上好きだなんて言ったら優しい彼をさらに怒らせてしまうかもしれない。それでも、この溢れる気持ちを伝えないまま後悔するのだけは嫌だ。
大河の頭の中に青木の笑顔が浮かぶ。
早くあの笑顔に会いたい。
せめてあの笑顔だけでも取り戻す。それを心に誓いながら、経済学部へと続く真っ直ぐな渡り廊下を大河は駆け抜けた。
「俺っはるかちゃんのことが好きなんだ!」
想いを告げる大河の言葉を聞いて、青木はきょとんと目を瞬かせた。そこから青木の手を握りしめて堰を切ったように言葉を続ける大河に、青木の顔が徐々に緩み出す。
(はるかじゃなくて、りょうだったんだ......)
遼の名前を大河が『はるか』だと勘違いしていたと分かった頃には、遼の顔はすっかりいつもの楽しそうな表情に戻っていた。
そして遼は笑い出した。
眩しくて大河を幸せにしてくれる笑顔。
(ああ......やっぱりこの笑顔が大好きだ)
「やっぱり笑顔、可愛い」
「っ......!」
そう言うと目の前の遼が赤くなる。それを見て笑顔だけじゃない赤くなった顔も、潤んだ瞳も、遼のすべてが可愛くて愛しいと大河は思った。
「ほらちゃんと言い直せよ」
触れる大河の手に遼が頬を寄せる。言っている意味が分かって、大河は真剣な瞳を遼に向けた。
「青木遼さん、大好きです。俺と付き合ってもらえますか?」
「うん、いいよ」
頷いた遼に、嬉しくて幸せで大河の顔に笑顔が広がっていく。堪えきれず大河は遼を抱きしめた。
恥ずかしそうに遼は突っぱねるが、離したくないと髪に顔を埋めたら遼は大人しく大河の腕の中に納まってくれた。
周りで拍手をするみんなの祝福がさらに嬉しさを膨らませていって。
大河が目を合わせると遼が笑った。大河の大好きな笑顔で。
その笑顔はとても幸せそうで、それを見つめる自分も今同じ顔をしているだろう。
(もう離さない、絶対に幸せにする)
そう思って大河は、甘えるように凭れ掛かる遼を自分の腕の中に閉じ込めた。
それから遼とのお付き合いが始まった。
遼はやっぱり優しい、酔ってキスをしたことも、名前を間違えていたことも、大河を責めることなく全部許してくれた。
あんなことをしてしまった大河に、前と変わらず楽しそうに笑顔で側に居てくれる。
今までも十分可愛かったのに、日を追うごとに遼の笑顔が輝きを増して、どんどん可愛くなっていく。そんな遼のことが大好きで愛しくて、日に日に彼への想いが深く募っていく。そしてそれは大河だけじゃなくて、側にいると遼が全身で自分を愛してくれているのが伝わってくる。
だから遼を見ていると、すぐに触れたくなって、抱きしめたくて堪らなくなる。大河はすっかり遼を抱きしめる癖がついた。遼を腕の中に抱きしめる、それだけでとても幸せで。
だけど本当は、本当は、その唇にキスをして、もっと深く、遼の奥まで大河でいっぱいにしたい。愛して乱して、遼のすべてが欲しかった。
でも大河は一度順番を間違えて、遼を怒らせてしまったから。告白する前にキスをして、遼を悲しませてしまったから。
次は間違えない。ちゃんと時間をかけてゆっくりと、遼を怖がらせないように仲を深めていかなくては。
可愛い遼に、もっと触れたくなる衝動を大河は密かに堪えていた。
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