【完結】好きになったイケメンは、とてつもなくハイスペックでとんでもなくドジっ子でした

金色葵

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第三章 初デートと二度目のキス、その後は......

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「............」
大河は目を覚ます。
(ここは......)
そう思って辺りを見まわそうとすると、顔から濡れたタオルが滑り落ちた。それにハッとして大河は身を起こす。頬がジンジンと熱く熱を持って痛む。それに大河はここがどこかと、自分が何をしたのか思い出した。
「おー神崎。気分マシになったか?」
「佐々木......」
聞こえた声に横を向くとのんびりとした感じで佐々木がスマホをいじっていた。
「二十度の酒、一気飲みするから焦ったわ」
焦ったという割には、そんな風にちっとも見えない感じで佐々木が笑う。大河が飲んだのはそんなに強いお酒だったのか、どうやら自分は酔いつぶれてしまったらしいと大河は理解した。
「......青木は?」
大河は今一番気にかかっていることを聞くと、佐々木がフッと笑った。
「帰ったよ。あれはかなり怒ってたな~」
その言葉に大河の胸がギュウと締め付けられる。胸から首元が締め付けられるようでうまく息ができない。
「それか、傷ついたか、どっちかだな」
佐々木の言葉は胸を押える大河には届いていなかった。
(俺はなんてことをしたんだ......)
今更ながら大河は青ざめた。酔った勢いで男にキスされる、しかも人前で。普通こんなことをされたら相手はどう思うだろうか。
考えて胸が苦しくなる。青木が怒るのも当然だ。
例えそれが勢いでもなんでもなくて、ずっと触れたいと思っていた気持ちが、アルコールが入り抑えきれなくなったせいだとしても。大河が青木のことを好きだとしても、それを知らない青木には、ふざけていると思われたかもしれない。
(え......好き......?)
そう思って大河はハッとする。思った瞬間、次から次へとその気持ちが溢れて止まらなくなる。
(俺、青木のこと好きなんだ)
大河はやっと気付く、自分が何故こんなに彼が笑うと嬉しいのか、彼にもっと触れたいのか、彼とずっと一緒に居たいのか、それは全部全部大河が青木を好きだからだ。
「っ......」
大河は口を覆う。
青木は何度も助けてくれた、大河がどんなドジをしても何をしても、いつも笑顔で笑いかけてくれたのに。
そんな優しい彼を自分は怒らせたのだ。
もう許してもらえないかもしれない。あの笑顔をもう見れないかもしれない。そう思ったら絶望に襲われる。好きだと告げる前に失恋するなんて。
まだ酔いが完全に覚めておらず、体調が悪いことも重なって、大河の思考がどんどん暗くなっていく。
「なーんて顔してるんだよ」
「ちょっ」
すると急に佐々木が大河の額にデコピンをした。おでこを押えて大河が佐々木を見る。
「お前ほんと弱っててもイケメンだな」
弱々しく憂いを秘めたその姿が、さながら困難に直面した映画の中の主人公のようで、様になるなと佐々木は思った。
「伝えたいことがあるならちゃんと伝えないと、まだ結果がどうなるかは分からないだろ」
な、と佐々木が言い聞かせるように大河に言う。
「当たって砕けろって言うし」
「いや、砕けたくはないんだけど......」
佐々木は勘がいいタイプらしい、どうやら大河の気持ちはバレているようだ。
「......そうだな」
だけどその明るい声と雰囲気に、大河の心にも光が灯る。
「やれることは全部やらないとな」
好きだって言おう。青木に気持ちを伝えよう。例え結果がどうだったとしても、このままになんて絶対したくない。
瞳に強さが戻ってきた大河を見て、佐々木がその背中を叩く。
「ダメだった時は、また合コン開いてやるよ~」
まあダメではないだろうけど、と佐々木は心の中で呟く。
「そういや......合コンダメにしてごめんな」
すっかりみんないなくなっている。あんな騒ぎを起こしたんだ、女性たちも引いて帰ってしまったかもしれない。
「いいっていいって、女子の番号は全部ゲットしたし気にすんなよ。あっそうそうみんなから、神崎くんに応援してるから頑張ってね!って伝えといてって言われた」
「......うん」
何を?と大河は思ったが、何事もなかったようでホッと胸を撫でおろす。
「ありがとな佐々木。青木はいい友達を持ってるな」
「.........」
大河は思ったままを口にすると、佐々木を見つめて微笑んだ。それに佐々木が目を逸らすと頭を掻く。
「こりゃあ遼が落ちるわけだわ......」
ほんのり赤くなった佐々木の頬を、横から眺めながら大河は首を傾げた。
「ほら、ちゃんと頬冷やせって、腫れたりしたらあいつ気にするだろうからな」
「うん?」
あいつって?と思いながらも、大河は滑り落ちたタオルを拾って頬に当てた。
思うのは怒らせてしまった彼のこと、去っていく彼の表情がどこか悲しそうだったのを思い出して胸が痛む。
彼の笑顔が見たい、いつも笑っていて欲しい。そんな気持ちが止まらなくなる。
(明日、青木のところに行こう)
大河は自分の心にそう誓った。
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