【完結】好きになったイケメンは、とてつもなくハイスペックでとんでもなくドジっ子でした

金色葵

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第三章 初デートと二度目のキス、その後は......

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覚えているのは、無邪気に笑う可愛い笑顔と、優しい掌の感触。
空が綺麗で一時間眺めていた、そう言った大河の言葉に彼が笑った。
起き上がれないぐらいつらいのに、どうしても彼の顔が見たくて瞳を開ける。
目が回る視界の中、何故か彼の笑顔だけは鮮明に輝いて見えた。

あの日から彼の笑顔が忘れられない。


まだ夏の気配が残る秋の頃。
バサバサバサッーーーその場に紙が散らばる音が響き渡る。
(またやっちゃった......)
ふうと息を吐くと大河は落ちた紙を拾うためにその場にしゃがみ込んだ。
昔からどうもボーッとする癖がある。例えば風に舞い散る木の葉、色んな色に変化する空、そこにはどんな力が働いているのかを考えたり、数字の羅列を見ては素因数分解をしたり。世界はとてつもなく興味に満ちている、気づけば大河の意識はその興味の世界に引っ張られていた。
だけどそんなことを考えられなくなるぐらいに、今大河の頭の中をある人物が占めていた。
それが。
「もー何やってんだよ」
彼である。
彼はため息を吐きながらも、とても丁寧に大河が落とした書類を一枚一枚拾っていく。
その華奢な指先が綺麗だと思いながら大河は彼を見つめた。
「ほら」
書類を拾い集めると彼は大河にそれを差し出した。
大河より身長の低い彼がこちらを見上げる。
透き通るように白い肌にサラサラの黒髪、片腕で包み込めそうなぐらい華奢な肩。薄くピンクに色づいた唇があどけなさを感じさせる。彼のその全てに大河は引き込まれるような錯覚を覚えた。
ぱっちりとした大きな猫目がクールな印象を放っているが、彼が笑うとどれだけ可愛いか大河は知っている。
「ありがとう」
また助けられた、優しい彼が可愛くて大河の顔に自然と笑みが浮かぶ。
笑った大河と目が合うと彼も釣られるようにふふっと笑う。彼が笑ったのが嬉しくてにこにこと見つめていると、彼がハッとしたように顔を引き締めた。
「別に、こんなの普通のことだし」
彼は言いながら頬を赤らめると照れるように目を逸らす。赤く染まった頬が可愛くて大河の胸がドキッと高鳴った。
(ああ......もっと彼のことを知りたい)
世界の興味より何より、今一番大河が知りたいのは彼のことだった。
「この前も助けてくれたよね」
言いながら大河は上着に入れているスマホを探す。すぐに見つからなくて少し時間がかかってしまう。
「よかったら今度お礼にご飯でも......あれ?」
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