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第二章 世話焼きツンデレな俺の天使
⑧
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一瞬の浮遊感を感じた後に、一気に体が落下する。
終わった、そう思った瞬間こちらに腕を広げて微笑んでいる大河の姿が見えた。
(ああ......人って死にそうになる時、走馬灯が見えるって本当だったんだ。俺の大好きな神崎の姿が見える)
そう思いながら遼はくる衝撃に耐えるようにギュッと目を瞑った。
「............」
ほどなくしてすぐに衝撃がやってくる。だけどそれは地面に叩きつけられる、というような衝撃じゃなくて、誰かの腕の中に抱きとめられているような感覚だった。その腕がギュッと遼を抱きしめる。
(この腕......知ってる......)
遼はハッとして顔を上げた。
「青木......大丈夫?」
「.........」
目の前に整いすぎた大河の王子顔が広がった。遼はパチクリと目を瞬かせる。
「かんざき......?」
「うん」
呼ぶ声に大河が頷く。遼はしっかりと大河に抱きとめられていた。
(もしかしてさっきの神崎は走馬灯じゃなくて本物......)
二階の高さにある渡り廊下から落ちた遼は、大河の腕に受け止められていた。いわゆるお姫様抱っこで。
「紙の面積の空気抵抗と、風速を考えたらここに落ちてくると思ってたんだけど、まさか青木が落ちてくるなんて」
ここで待っててよかった、と大河が嬉しそうに笑う。
「空気抵抗?風速......??」
大河のセリフに遼の頭にハテナな浮かぶ。
「大丈夫?」
もう一度聞いてくる大河に、遼は自分の状況を思い出す。もし大河が受け止めてくれなかったら今頃どうなっていたか。今更ながら怖さが込みあがってきて、遼は大河にきつく抱きついた。首筋に顔を埋める遼を安心させるように、大河が頬を寄せる。その優しい仕草に、遼はホッとして深く息を吐いた。
「受け止めてくれてありがと......」
「青木が無事でよかった」
大河も安心したように息を吐く。強く遼を引き寄せ抱きしめてくれる温かな腕に、安堵感が心に広がる。大河は優しい仕草でそっと遼を地面に下ろした。
「あっそうだ!これ捕まえたぞ!」
一番大事なことを忘れていた。遼は飛ばされた資料を大河に見せて得意気に微笑んだ。
「青木......」
当の本人より、資料を守れたことが嬉しそうな遼の姿に大河が息を飲んで、そして眩しいものを見るように目を細めた。
「守ってくれてありがとう、俺めちゃくちゃいい論文書くね。約束する」
愛しさを隠そうとしないキラキラした笑顔で見つめられて遼の頬がポウッと赤く染まる。
「おう......絶対だからな......」
照れながらそう言う遼を、大河が思いっきり抱きしめた。
パチパチパチパチ――――
その場に拍手の音が響き渡る。
「神崎くんも青木くんも素敵......」
「もうこれ映画だよ、俺、感動した......」
「一生お幸せに......」
気付けば二人の周りには人だかりができていた。かなりの数のギャラリーを背負って、二人は中庭で抱き合っていた。
「あーあーまたあんなに目立って......」
騒ぎを聞きつけた佐々木は、その光景を見つめながら、仲睦まじい二人の姿に楽しそうに笑った。
終わった、そう思った瞬間こちらに腕を広げて微笑んでいる大河の姿が見えた。
(ああ......人って死にそうになる時、走馬灯が見えるって本当だったんだ。俺の大好きな神崎の姿が見える)
そう思いながら遼はくる衝撃に耐えるようにギュッと目を瞑った。
「............」
ほどなくしてすぐに衝撃がやってくる。だけどそれは地面に叩きつけられる、というような衝撃じゃなくて、誰かの腕の中に抱きとめられているような感覚だった。その腕がギュッと遼を抱きしめる。
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「紙の面積の空気抵抗と、風速を考えたらここに落ちてくると思ってたんだけど、まさか青木が落ちてくるなんて」
ここで待っててよかった、と大河が嬉しそうに笑う。
「空気抵抗?風速......??」
大河のセリフに遼の頭にハテナな浮かぶ。
「大丈夫?」
もう一度聞いてくる大河に、遼は自分の状況を思い出す。もし大河が受け止めてくれなかったら今頃どうなっていたか。今更ながら怖さが込みあがってきて、遼は大河にきつく抱きついた。首筋に顔を埋める遼を安心させるように、大河が頬を寄せる。その優しい仕草に、遼はホッとして深く息を吐いた。
「受け止めてくれてありがと......」
「青木が無事でよかった」
大河も安心したように息を吐く。強く遼を引き寄せ抱きしめてくれる温かな腕に、安堵感が心に広がる。大河は優しい仕草でそっと遼を地面に下ろした。
「あっそうだ!これ捕まえたぞ!」
一番大事なことを忘れていた。遼は飛ばされた資料を大河に見せて得意気に微笑んだ。
「青木......」
当の本人より、資料を守れたことが嬉しそうな遼の姿に大河が息を飲んで、そして眩しいものを見るように目を細めた。
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愛しさを隠そうとしないキラキラした笑顔で見つめられて遼の頬がポウッと赤く染まる。
「おう......絶対だからな......」
照れながらそう言う遼を、大河が思いっきり抱きしめた。
パチパチパチパチ――――
その場に拍手の音が響き渡る。
「神崎くんも青木くんも素敵......」
「もうこれ映画だよ、俺、感動した......」
「一生お幸せに......」
気付けば二人の周りには人だかりができていた。かなりの数のギャラリーを背負って、二人は中庭で抱き合っていた。
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