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第二章 世話焼きツンデレな俺の天使
⑥
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「論文の進み具合はどうだ?」
「うん、青木のおかげではかどってるよ」
あれから遼は大河の研究室に通いつめていた。お昼にはお手製のお弁当を差し入れ、すぐに書類だらけになるデスク周りを整理整頓し、ほっとくと時間を忘れる大河に休息を取らせる。あまりに甲斐甲斐しい見事な世話焼きっぷりは、若干周囲を引かせるレベルだったが、今や理学部の廊下を二人が並んで歩くのもお馴染みの光景になっていた。
「明日の締切大丈夫そうだな」
「うん、あとこの文字資料をデータに起こして添付したら終わり」
大河が手に持っている資料を見せる。それは大河が計算式を書き込んでいるものだった。数日前何かを計算しているのを後ろから覗きこんだら、そこにはドラマでしか見たことがない難解な数式が書かれていて。あまりのすごさに「お前はガリレオか......」と突っ込んだら「あんな偉大な物理学者にはほど遠いよ」と、実に興味深い方のガリレオで言ったのをガリレイで返されて戸惑った記憶が蘇る。
何はともあれ論文も完成間近でここ一週間ずっと一緒に居れたし、大河の真剣な横顔や疲れてボーッとしてる顔とか寝顔も、こっそり写真に収めることができた。そして何より終わったらどこかに出かけようと大河からデートのお誘いももらい、心もカメラロールも満たされて遼はホックホクで大河の隣を歩いていた。
ウキウキで気を緩めるとスキップをしそうな遼の前に、大河がすっと腕を出す。
「そこ段差あるから気を付けて青木......あっ......」
遼に気を付けてと言った段差に大河が足を取られる。躓いた拍子に手に持っていた資料が散らばった。
(前がこけるんかい!俺を気遣ってくれるのは嬉しいけど)
心でツッコミながら、遼は散らばった資料を集める。
「もー何やってんだよ......」
「ありがと」
当然のように拾うのを手伝ってくれる遼に大河が微笑む。その嬉しそうな顔に遼もふふっと笑顔になった。
その時。
ザァァッーとその場に強く風が吹いた。
その風に乗って資料の一枚が宙に舞う。それはふわふわとそのまま廊下の奥に飛んでいこうとする。
「あっ待てっ......!!」
それを捕まえようと遼は走り出す。
「青木っ!走ったら危ないよ!一枚ぐらいなくても大丈夫......」
心配してそういう大河に遼は振り返る。
「バカッ!お前があんなに頑張って作ったんだ!諦められるか‼」
「っ......!」
そう叫んで遼が走り出す。全力で追いかけるが、風に舞う紙の動きが不規則でなかなか掴めない。
「くっそ......」
絶対捕まえてやる、遼はさらに加速した。
「うん、青木のおかげではかどってるよ」
あれから遼は大河の研究室に通いつめていた。お昼にはお手製のお弁当を差し入れ、すぐに書類だらけになるデスク周りを整理整頓し、ほっとくと時間を忘れる大河に休息を取らせる。あまりに甲斐甲斐しい見事な世話焼きっぷりは、若干周囲を引かせるレベルだったが、今や理学部の廊下を二人が並んで歩くのもお馴染みの光景になっていた。
「明日の締切大丈夫そうだな」
「うん、あとこの文字資料をデータに起こして添付したら終わり」
大河が手に持っている資料を見せる。それは大河が計算式を書き込んでいるものだった。数日前何かを計算しているのを後ろから覗きこんだら、そこにはドラマでしか見たことがない難解な数式が書かれていて。あまりのすごさに「お前はガリレオか......」と突っ込んだら「あんな偉大な物理学者にはほど遠いよ」と、実に興味深い方のガリレオで言ったのをガリレイで返されて戸惑った記憶が蘇る。
何はともあれ論文も完成間近でここ一週間ずっと一緒に居れたし、大河の真剣な横顔や疲れてボーッとしてる顔とか寝顔も、こっそり写真に収めることができた。そして何より終わったらどこかに出かけようと大河からデートのお誘いももらい、心もカメラロールも満たされて遼はホックホクで大河の隣を歩いていた。
ウキウキで気を緩めるとスキップをしそうな遼の前に、大河がすっと腕を出す。
「そこ段差あるから気を付けて青木......あっ......」
遼に気を付けてと言った段差に大河が足を取られる。躓いた拍子に手に持っていた資料が散らばった。
(前がこけるんかい!俺を気遣ってくれるのは嬉しいけど)
心でツッコミながら、遼は散らばった資料を集める。
「もー何やってんだよ......」
「ありがと」
当然のように拾うのを手伝ってくれる遼に大河が微笑む。その嬉しそうな顔に遼もふふっと笑顔になった。
その時。
ザァァッーとその場に強く風が吹いた。
その風に乗って資料の一枚が宙に舞う。それはふわふわとそのまま廊下の奥に飛んでいこうとする。
「あっ待てっ......!!」
それを捕まえようと遼は走り出す。
「青木っ!走ったら危ないよ!一枚ぐらいなくても大丈夫......」
心配してそういう大河に遼は振り返る。
「バカッ!お前があんなに頑張って作ったんだ!諦められるか‼」
「っ......!」
そう叫んで遼が走り出す。全力で追いかけるが、風に舞う紙の動きが不規則でなかなか掴めない。
「くっそ......」
絶対捕まえてやる、遼はさらに加速した。
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