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第二章 世話焼きツンデレな俺の天使
③
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「資料はテーマごとにちゃんと分けといたから。あとよく見るページにはこうやって付箋を挟んで......」
「ほんとだこれだったら探さなくてもすぐに確認できる......青木すごいね!」
大河が目をキラキラ輝かせて遼を見つめた。
(すごいって......基本中の基本だけど)
大河のことだからきっと資料を確認する度に最初から開き直してたんだろうなと遼は思う。
「それに分かりやすく参考文献も揃えてくれて、こんなに俺のデスクが綺麗になったの初めてだよ」
(お前いったい今までどうやって論文書いてたんだ?)
大河の言葉に、遼は心の中で突っ込んだ。
あまりにも荒れ果てた大河のデスク周りに我慢ができなくなった遼は、テキパキと書類を揃え本を並び直し、果ては床とデスクの拭き掃除までしてあれよあれよという間に乱雑だったその場所を綺麗にしていった。今や来た時と同じ場所とは思えないほど、研究室の中は整理整頓された状態になった。
綺麗になったデスク周りに遼は満足したようにふうと息を吐く。
「青木......」
名前を呼んで、椅子に座っていた大河が遼に向かって腕を広げる。それに気づいた遼は大河の腕の中に収まった。
「俺のために綺麗にしてくれてありがと、嬉しい」
「別に部屋が散らかってるのが嫌だっただけだ、お前のためじゃないし!」
嬉しいと言われて胸を高鳴らせながら遼がそう返す。
「うん、ありがと」
照れているのがバレバレな遼に大河は笑うと遼をギュウと抱きしめた。
「やっと抱きしめられた」
「………」
そういや部屋に入ってきた時から、俺を抱きしめようとしてたな。
片付けが終わるまでちゃんと待っていたらしい、そんな大河に遼の頬がほんわりと赤く染まる。遼は湧き上がる愛しさを抑えきれないまま、胸元に顔を埋める大河の頭をよしよしと撫でた。
気持ち良さそうに大河が瞳を閉じる。遼はそのまま頭を何度も撫でてあげた。
遼の手にすりすりと頭を寄せる大河の甘えた仕草に胸がキュンとする。瞳を伏せたまつ毛が長くて綺麗だなと見つめていた遼は、あることに気付いて大河の顔を掴んだ。
もっとよく見るために掴んだ顔を上に向かせる。
「びっくりした......急にどうしたの?」
うっとりと遼を堪能しているところ、いきなり顔面を掴まれた大河が驚いた顔をする。
「お前目の下にクマができてるぞ、ちゃんと寝てるのか?」
「んー、昨日は一時間くらい寝たかな」
「一時間......」
「論文書くのに夢中になるとついつい時間を忘れちゃって、昨日も気付いたら朝だったんだよね」
(俺に連絡してる暇があれば寝ろよ!......まあ時間は忘れても俺のことは忘れないのは嬉しいけど!)
そう思いながら遼は大河のクマを見つめる。
「ていうか、お前ちゃんとご飯食べてるのか?」
なんとなく顔色が優れないような気がして、おそるおそる聞くと。
「大丈夫、食べてるよ」
あれ、と大河がある物を指さす。指さしたその先にはカロリーがメイト的なお菓子や十秒でチャージできる系のゼリーが大量に置かれていた。
「青木も食べる?けっこうおいしいよ」
そう言って笑う大河に、遼は静かにその肩を掴んだ。
「あれは食事とは言わないんだよっ!!ろくに寝てないし食べてないし、あーもう!お前は本当に......」
「青木?」
「今日はもう論文書くの禁止」
「え......」
そう言われて大河が首を傾げる。遼は大河を椅子から立ち上がらせると、勝手に大河の荷物を片付け始めた。
「帰るぞ、着いて来い」
置いてあった大河のレザーリュックの中に、手に持ったものを入れ遼が言い放つ。リュックを持つ遼に、慌てて大河はそれを受け取った。
「どこに?」
大河は首を傾げながら、歩き出す遼の後に着いて行った。
「ほんとだこれだったら探さなくてもすぐに確認できる......青木すごいね!」
大河が目をキラキラ輝かせて遼を見つめた。
(すごいって......基本中の基本だけど)
大河のことだからきっと資料を確認する度に最初から開き直してたんだろうなと遼は思う。
「それに分かりやすく参考文献も揃えてくれて、こんなに俺のデスクが綺麗になったの初めてだよ」
(お前いったい今までどうやって論文書いてたんだ?)
大河の言葉に、遼は心の中で突っ込んだ。
あまりにも荒れ果てた大河のデスク周りに我慢ができなくなった遼は、テキパキと書類を揃え本を並び直し、果ては床とデスクの拭き掃除までしてあれよあれよという間に乱雑だったその場所を綺麗にしていった。今や来た時と同じ場所とは思えないほど、研究室の中は整理整頓された状態になった。
綺麗になったデスク周りに遼は満足したようにふうと息を吐く。
「青木......」
名前を呼んで、椅子に座っていた大河が遼に向かって腕を広げる。それに気づいた遼は大河の腕の中に収まった。
「俺のために綺麗にしてくれてありがと、嬉しい」
「別に部屋が散らかってるのが嫌だっただけだ、お前のためじゃないし!」
嬉しいと言われて胸を高鳴らせながら遼がそう返す。
「うん、ありがと」
照れているのがバレバレな遼に大河は笑うと遼をギュウと抱きしめた。
「やっと抱きしめられた」
「………」
そういや部屋に入ってきた時から、俺を抱きしめようとしてたな。
片付けが終わるまでちゃんと待っていたらしい、そんな大河に遼の頬がほんわりと赤く染まる。遼は湧き上がる愛しさを抑えきれないまま、胸元に顔を埋める大河の頭をよしよしと撫でた。
気持ち良さそうに大河が瞳を閉じる。遼はそのまま頭を何度も撫でてあげた。
遼の手にすりすりと頭を寄せる大河の甘えた仕草に胸がキュンとする。瞳を伏せたまつ毛が長くて綺麗だなと見つめていた遼は、あることに気付いて大河の顔を掴んだ。
もっとよく見るために掴んだ顔を上に向かせる。
「びっくりした......急にどうしたの?」
うっとりと遼を堪能しているところ、いきなり顔面を掴まれた大河が驚いた顔をする。
「お前目の下にクマができてるぞ、ちゃんと寝てるのか?」
「んー、昨日は一時間くらい寝たかな」
「一時間......」
「論文書くのに夢中になるとついつい時間を忘れちゃって、昨日も気付いたら朝だったんだよね」
(俺に連絡してる暇があれば寝ろよ!......まあ時間は忘れても俺のことは忘れないのは嬉しいけど!)
そう思いながら遼は大河のクマを見つめる。
「ていうか、お前ちゃんとご飯食べてるのか?」
なんとなく顔色が優れないような気がして、おそるおそる聞くと。
「大丈夫、食べてるよ」
あれ、と大河がある物を指さす。指さしたその先にはカロリーがメイト的なお菓子や十秒でチャージできる系のゼリーが大量に置かれていた。
「青木も食べる?けっこうおいしいよ」
そう言って笑う大河に、遼は静かにその肩を掴んだ。
「あれは食事とは言わないんだよっ!!ろくに寝てないし食べてないし、あーもう!お前は本当に......」
「青木?」
「今日はもう論文書くの禁止」
「え......」
そう言われて大河が首を傾げる。遼は大河を椅子から立ち上がらせると、勝手に大河の荷物を片付け始めた。
「帰るぞ、着いて来い」
置いてあった大河のレザーリュックの中に、手に持ったものを入れ遼が言い放つ。リュックを持つ遼に、慌てて大河はそれを受け取った。
「どこに?」
大河は首を傾げながら、歩き出す遼の後に着いて行った。
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