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第一章 自覚のきっかけはキス
⑦
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ハァと無意識にため息を吐きながら、遼は教室の机に鞄を置いた。
「おはよー」
するとすぐに、昨日の合コンに遼を誘った佐々木が声をかけてくる。
「...はよ......」
ブスッとした顔で挨拶を返す遼に佐々木はニヤニヤと笑う。
「いや~昨日は派手にやらかしたね~」
「......」
遼は佐々木をチラッと見るが、昨日のことはもう思い出したくないので聞こえないふりをする。
「あの後神崎呆然としてたぞ。くっきり遼の手形頬につけて」
あれは痛そうだったな~と佐々木が腕を組んで思い出すように言う。
確かに思いっきり引っ叩いてしまった。跡になってるなんて大河は大丈夫だっただろうか。
思わず心配になってしまって遼はプルプルと首を振った。
「あれは!あっちが悪いんだ......俺を女と間違えて......キスなんてするから」
思い出しただけで、胸がキュッと苦しくなる。
「女と間違われたのが嫌で、キスされたのは嫌じゃなかったってことか」
胸を押えて俯く遼を見て、佐々木がふむふむと小さく呟く。
佐々木は遼の隣に座ると、体を近づけた。
「神崎、すっごいショック受けてたぞ」
「......そりゃ......人前で叩かれるなんて恥ずかしいだろ」
ショックを受けていたと聞いて、遼が言い淀む。
大河だって男としてのプライドがあるだろう。人前で思いっきり叩かれる姿を見られるなんて恥ずかしいに決まっている。せめて突き飛ばすぐらいにしとけばよかったか......と遼はまたハァとため息を吐いた。
「違う違う。神崎さ遼と仲良くなりたかったんじゃないかな?」
「え......?」
今日初めて佐々木の方を見た遼に、ふふと佐々木が意味ありげに笑う。
「だって今回の〇○学院との合コン、女子から神崎が参加するならって条件出されてたんだけどさ」
そんな条件出されてたのか、他の大学でも大河のイケメン具合が有名だという噂はどうやら本当のようだ。
「神崎さ、参加する代わりに遼を呼んで欲しいって言ってきたんだぜ」
「俺を......」
(神崎が俺を?なんで......)
そう思った瞬間、ガララッと大きな音がして勢いよく教室のドアが開いた。
「青木っ......!」
「.........神崎」
開いたドアの向こうから大河が姿を現した。教室にいた全員が大河の方を振り返る。
大河は膝に手を当て、ハアハアと肩で息をしている。額に流れる汗を拭う姿が、まるで映画の主人公のようにかっこよくて遼と周りは息を飲んだ。
遼のいる経済学部から、大河が専攻している理学部はだいぶ距離がある。もしかしてその距離を走ってきたのだろうか。そうとう急いだようで大河が咳き込んだ。大丈夫?と駆け寄りそうになって遼はハッとした。
(ダメだ、これがこの男の手口なんだ。こっちに心配させといて気付いたら神崎のことばかり考えさせる)
遼はギュッと拳を握りしめると、入口にいる大河から目を逸らした。
「っ......」
遼の反応に大河は傷ついた顔をするが、意を決したように遼の方に歩いてくる。
大河は遼の隣までくると立ち止まった。
「おはよー」
するとすぐに、昨日の合コンに遼を誘った佐々木が声をかけてくる。
「...はよ......」
ブスッとした顔で挨拶を返す遼に佐々木はニヤニヤと笑う。
「いや~昨日は派手にやらかしたね~」
「......」
遼は佐々木をチラッと見るが、昨日のことはもう思い出したくないので聞こえないふりをする。
「あの後神崎呆然としてたぞ。くっきり遼の手形頬につけて」
あれは痛そうだったな~と佐々木が腕を組んで思い出すように言う。
確かに思いっきり引っ叩いてしまった。跡になってるなんて大河は大丈夫だっただろうか。
思わず心配になってしまって遼はプルプルと首を振った。
「あれは!あっちが悪いんだ......俺を女と間違えて......キスなんてするから」
思い出しただけで、胸がキュッと苦しくなる。
「女と間違われたのが嫌で、キスされたのは嫌じゃなかったってことか」
胸を押えて俯く遼を見て、佐々木がふむふむと小さく呟く。
佐々木は遼の隣に座ると、体を近づけた。
「神崎、すっごいショック受けてたぞ」
「......そりゃ......人前で叩かれるなんて恥ずかしいだろ」
ショックを受けていたと聞いて、遼が言い淀む。
大河だって男としてのプライドがあるだろう。人前で思いっきり叩かれる姿を見られるなんて恥ずかしいに決まっている。せめて突き飛ばすぐらいにしとけばよかったか......と遼はまたハァとため息を吐いた。
「違う違う。神崎さ遼と仲良くなりたかったんじゃないかな?」
「え......?」
今日初めて佐々木の方を見た遼に、ふふと佐々木が意味ありげに笑う。
「だって今回の〇○学院との合コン、女子から神崎が参加するならって条件出されてたんだけどさ」
そんな条件出されてたのか、他の大学でも大河のイケメン具合が有名だという噂はどうやら本当のようだ。
「神崎さ、参加する代わりに遼を呼んで欲しいって言ってきたんだぜ」
「俺を......」
(神崎が俺を?なんで......)
そう思った瞬間、ガララッと大きな音がして勢いよく教室のドアが開いた。
「青木っ......!」
「.........神崎」
開いたドアの向こうから大河が姿を現した。教室にいた全員が大河の方を振り返る。
大河は膝に手を当て、ハアハアと肩で息をしている。額に流れる汗を拭う姿が、まるで映画の主人公のようにかっこよくて遼と周りは息を飲んだ。
遼のいる経済学部から、大河が専攻している理学部はだいぶ距離がある。もしかしてその距離を走ってきたのだろうか。そうとう急いだようで大河が咳き込んだ。大丈夫?と駆け寄りそうになって遼はハッとした。
(ダメだ、これがこの男の手口なんだ。こっちに心配させといて気付いたら神崎のことばかり考えさせる)
遼はギュッと拳を握りしめると、入口にいる大河から目を逸らした。
「っ......」
遼の反応に大河は傷ついた顔をするが、意を決したように遼の方に歩いてくる。
大河は遼の隣までくると立ち止まった。
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