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第一章 自覚のきっかけはキス

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その時。
「おーい、遼~大丈夫かー?」
「っ、佐々木......」
急に声をかけられ、遼は思わず立ち上がった。
「ぐっ......」
その拍子で遼の膝から地面に転がり落ちた彼が、潰れたかえるのような声を出した。
「あー!ごめん!!」
「だ、だいじょうぶ......」
遼は慌てて転がった彼を支える。大丈夫と言いながらも打ったのか彼は頭を押えた。
「何やってんだよ......」
佐々木がそんな二人を見てあきれた声を出した。
「体調が悪いのはこの子かな?」
「あっ、はい」
佐々木の後ろから校医と先生が姿を見せる。
「大丈夫?僕の肩に腕回せるかな」
「は、い」
「後は僕らが見るから、君たちは授業に戻りなさい」
「え......」
心配そうな顔で彼を見つめる遼に、先生が笑った。
「校医の先生も付いてるから安心して」
そんな遼に校医も安心させるように笑いかける。
「......よろしくお願いします」
そう言うと先生たちは、彼を連れていく。
「あ......」
彼が遼の方を振り向こうとする。だけどふらついてしまって、先生に抱え直されると二人がかりで支えられ、校舎の中に消えていった。
心配で彼が消えていった先を見つめていると、佐々木が視界に入ってきた。
「遼、神崎大河と知り合いだったのか?」
「かんざきたいが......?」
「うん、さっきの熱中症の。ふらついててもすこぶるイケメンだな~」
佐々木の言葉を遼はどこか遠くに聞いていた。
神崎大河、あれが......
大河の噂は遼の耳にも入っていた。入学当時からとんでもないイケメンが同級生にいると。だけど大河とは学部も違うし、イケメンなんてどうせいけすかない奴だろうと当然のように思っていた遼は、三回生になる今まで大河と会ったことがなかった。
大河の自分を見つめる瞳、目の前で微笑んだ顔を思い出す。
(あんなの......イケメンなんてレベルじゃ済まないだろ)
思い出すとまた顔が赤くなりだす。
胸がどこかキュッと締め付けられて。
遼は初めて感じる感覚に、戸惑いながら自分の胸を押えた。
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