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第一章 自覚のきっかけはキス
③
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あれはまだ夏の熱い日のことだった。
「あっつ......」
遼は授業の合間にレポートの資料を借りるため、図書館を目指していた。図書館は講義などを受ける教室棟とは離れたところにある。真夏の日差しに照らされ少し歩いただけでも汗が吹き出した。
中庭を通る時、ある姿が目に入る。
中庭の芝生の上に立ち、一人の男性がジッと空を見つめていた。晴れ渡った真っ青な空の下、輝く太陽が彼の姿を照らす。
高い身長に、手足の長いその姿。見事なほどに澄み切った綺麗なスカイブルーの空よりも、その姿の方が遼の視線を奪って離さない。
「............」
どこかキラキラと瞳を輝かせ、空を見つめるその人に遼は思わず足を止めた。
太陽の日差しが彼の顔を照らす。彼の姿に縫い付けられたように、その場を動けない。遼は熱いのも忘れて見惚れてしまう。
だけど次の瞬間、グラリと彼の姿が傾いた。
「......!」
気付いたら遼は彼に向かって駆けだしていた。
頭を押えるようにして彼が地面にうずくまる。
「大丈夫?」
「う......ん......」
支えるように彼の体に触れると、ものすごく熱を持っていた。
(もしかして熱中症......⁉)
大変だ、そう思い遼は彼の腕を持ち上げると肩にかける。
「ちょっと歩けるか?俺にもたれてくれていいから」
持ち上げようとするが、遼より身長も体格も大きい彼を持ち上げることができない。隣で彼がハアハアと荒い息を吐く、横にある顔を見上げるととても苦しそうに眉を寄せていた。
「......しっかり掴まって!」
それに遼は力をふり絞る、半ば引きずるようにして彼を日陰にあるベンチまで連れていった。
「ハァ......」
無事に彼をベンチに座らせて、遼は息を付く。額に滲んだ汗を拭うとぐったりとベンチに座り込む彼に声をかけた。
「ちょっと待ってろ、すぐ戻るから」
(水、水......いやスポーツドリンクの方がいいか)
遼は飲み物を買うと持っていたタオルを濡らして彼のところに戻った。
「はいスポドリ、飲めるか?」
「ん......」
返事をするが瞳を閉じたまま動かない。遼はペットボトルの蓋を開け、彼の口元にもっていった。
口を開く彼に合わせてペットボトルを傾ける。流れ込む液体を飲み込んで、彼の喉元が動いた。彼がペットボトルを持ったので、遼は手を離して隣に座った。
遼はスマホを取り出して電話をかける。
「あっ、佐々木?俺だけど。熱中症になってる人がいてさ医務室行って先生呼んできてくれない?......うん、中庭にいる」
すぐ行くわ、と言ってくれた優しい友人に感謝しながら遼は通話を切った。
「あっつ......」
遼は授業の合間にレポートの資料を借りるため、図書館を目指していた。図書館は講義などを受ける教室棟とは離れたところにある。真夏の日差しに照らされ少し歩いただけでも汗が吹き出した。
中庭を通る時、ある姿が目に入る。
中庭の芝生の上に立ち、一人の男性がジッと空を見つめていた。晴れ渡った真っ青な空の下、輝く太陽が彼の姿を照らす。
高い身長に、手足の長いその姿。見事なほどに澄み切った綺麗なスカイブルーの空よりも、その姿の方が遼の視線を奪って離さない。
「............」
どこかキラキラと瞳を輝かせ、空を見つめるその人に遼は思わず足を止めた。
太陽の日差しが彼の顔を照らす。彼の姿に縫い付けられたように、その場を動けない。遼は熱いのも忘れて見惚れてしまう。
だけど次の瞬間、グラリと彼の姿が傾いた。
「......!」
気付いたら遼は彼に向かって駆けだしていた。
頭を押えるようにして彼が地面にうずくまる。
「大丈夫?」
「う......ん......」
支えるように彼の体に触れると、ものすごく熱を持っていた。
(もしかして熱中症......⁉)
大変だ、そう思い遼は彼の腕を持ち上げると肩にかける。
「ちょっと歩けるか?俺にもたれてくれていいから」
持ち上げようとするが、遼より身長も体格も大きい彼を持ち上げることができない。隣で彼がハアハアと荒い息を吐く、横にある顔を見上げるととても苦しそうに眉を寄せていた。
「......しっかり掴まって!」
それに遼は力をふり絞る、半ば引きずるようにして彼を日陰にあるベンチまで連れていった。
「ハァ......」
無事に彼をベンチに座らせて、遼は息を付く。額に滲んだ汗を拭うとぐったりとベンチに座り込む彼に声をかけた。
「ちょっと待ってろ、すぐ戻るから」
(水、水......いやスポーツドリンクの方がいいか)
遼は飲み物を買うと持っていたタオルを濡らして彼のところに戻った。
「はいスポドリ、飲めるか?」
「ん......」
返事をするが瞳を閉じたまま動かない。遼はペットボトルの蓋を開け、彼の口元にもっていった。
口を開く彼に合わせてペットボトルを傾ける。流れ込む液体を飲み込んで、彼の喉元が動いた。彼がペットボトルを持ったので、遼は手を離して隣に座った。
遼はスマホを取り出して電話をかける。
「あっ、佐々木?俺だけど。熱中症になってる人がいてさ医務室行って先生呼んできてくれない?......うん、中庭にいる」
すぐ行くわ、と言ってくれた優しい友人に感謝しながら遼は通話を切った。
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