【完結】あなたに撫でられたい~イケメンDomと初めてのPLAY~

金色葵

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中庭を抜けた先にある、理学部の研究室棟に大河は遼を連れて行く。
その中の研究室の一つに入ると大河は遼を下ろした。
「ここは......」
「俺の研究室だから安心して」
「神崎の......?」
驚きの声を出す遼に大河が頷く。
(ただの学生に研究室って......)
普通は生徒が個人で研究室なんか持てない。いったい大河は何者なのだろうか。
「俺の研究がちょっとして賞を取って、企業とか大学が支援してくれてるんだ。だからこの研究室は当別に用意してもらえて」
遼の表情から考えていることが分かったのか、大河が説明をしてくれる。ありがたいよね、と穏やかに笑う笑顔がかっこよくて、遼はポーッと見惚れる。
大河は部屋の奥にあるデスクの椅子に腰を下ろすと、遼に向かって腕を広げた。
「ほら、おいで」
「っ、......」
そう言って大河が微笑みかける。囁く声が直接脳の中に響いて、言われるままに自分から大河の方に歩いて行った。
遼が腕の中に身を寄せると、大河がギュッと抱きしめる。
「ん......いい子だね。かわいい」
「あっ.....」
抱きしめる手が優しく遼の背中を撫でた。撫でられる体温と甘い声に全身が溶けていく。遼は体が震えるのを我慢するように口を押えた。
(こんな感覚初めてだ......)
甘くて、優しくて、幸せで、嬉しい。胸が高鳴りすぎて苦しいのに、心地よくて堪らない。
あまりの気持ちよさに助けを求めるよう無意識で大河を見つめると、大河は遼の背中を撫でて大丈夫だというように微笑んだ。
その微笑みがあまりにも愛しさに溢れていて、遼の中にある戸惑いや困惑、そして抵抗をあっという間に包みこんでしまう。
大河がそっと遼の頬に触れた。
「こんなになるまで我慢して......」
そう言って大河が遼の目の下のクマをなぞる。優しい指先に、勝手に遼の瞳が潤んでいく。
「もう我慢しなくていいよ」
「っ......」
その言葉に、遼の瞳から一滴涙が零れ落ちた。
「なんでっ俺にここまでしてくれるんだよ......」
大河が探してくれていることに気付いていたのに、遼は逃げ続けた。きっと遼が分かっていたように、大河も遼が逃げていることに気が付いていたはずだ。
(なのに......神崎はあきらめずに俺を迎えに来てくれた......)
どんなに行きたくても自分から大河の元に行くことが遼にはできなくて。きっと大河が来てくれなかったら、遼は体調不良で倒れていたかもしれない。
ポロポロと零れる涙を、大河がとても綺麗なものを見るような瞳で見つめる。まっすぐにジッと大河は遼の瞳を覗き込んだ。
「見たいから」
「え?」
「青木の笑顔をまた見たいから」
「えがお......」
不思議そうな遼に、大河はうんと頷いた。
「あの日......初めて青木と会った日」
大河はそっと遼の両手を手に取ると握りしめた。
「一時間も空を見てて気付いたら寝てたなんて、バカにされても仕方ないのに......青木は笑ってくれた」
思い出しているのか大河が嬉しそうに笑う。
「あれがどれだけ嬉しかったか」
はにかむように笑って、綻んだ瞳が遼を見つめる。
「だから今度は俺が青木を喜ばせたいんだ......ダメ?」
甘えるように求めるように請われる。そこにはDomの命令なんてどこにもなくて、ただ遼を思う気持ちだけがそこにはあった。
「そ、んなの勝手にしたらいいだろ、お前だったら俺のことなんかっ」
大河の気持ちに胸がときめく。ときめく遼の心と、Subとしての本能が重なって、心臓が苦しい程に音を立てる。
さっきから手が震えて、もう意識が半分大河に持って行かれている。
早くと心が急かす。
だけど簡単には素直になれなくて、遼は最後の気力を振り絞る。
「勝手にし......」
「青木の望まないことはしたくない」
遼の言葉を遮るように、大河がギュッと手を握った。
「俺は青木を幸せにしたい」
熱く見つめる大河の視線に晒される。
「守りたい」
何もかもがとろとろに溶けて、体中が熱くなる。
「愛してもいい...?」
「っ―――」
優しい声で大河がそう告げる。
遼を見つめる真摯な大河の瞳。その瞳は遼への慈しみと愛情に満ちていて、そして遼を支配したいという圧倒的なDomの本能が溢れていた。
その瞳に遼は何も考えられなくなる。
(愛されたい......)
遼は握られた手をギュッと掴み返した。
(神崎に......)
目の前のこの男に支配されたい、それだけが遼の中を埋めつくす。
遼はゆっくりと口を開いた。
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