【完結】あなたに撫でられたい~イケメンDomと初めてのPLAY~

金色葵

文字の大きさ
上 下
1 / 9

しおりを挟む
命令されて喜ぶ、支配されたい欲求、そんなのおかしい人間の考えだ
いつだって俺は自分自身の意思で生きていく
誰かの言葉(コマンド)なんか死んでも聞くものか
そう思っていた

彼に会うまでは


「遼~」
「おー」
食堂に着いた遼に、同じ学部の友人佐々木が手を上げる。こっちこっちと誘われるまま佐々木の前の席に遼は腰を下ろして手に持ったトレーを置いた。
遼はふうと長い息を吐くと、目の前にある昼食をぼんやりとした目で眺める。そんな遼の様子に佐々木が首を傾げた。
「どした?なんか疲れてるな」
言いながら遼の顔を佐々木がジッと見つめた。
「よく見ると顔色も良くないし、大丈夫か?」
「大丈夫だ」
佐々木の言葉に、間髪入れずに遼は冷たく言い放つ。
まるで突き放すような言い方に、佐々木が驚いた顔になった。その表情を見て、遼はあっと声を零した。
「いや......レポートの締切があって寝不足で......だから」
慌てて言い直す遼に、佐々木はフッと顔を緩めた。
「あんま根つめすぎんなよ」
佐々木は心配そうにしながらもそれだけ言うと、ほら飯食おうぜ!と明るく言って遼に昼ご飯を食べるように促す。それからさっきのことはなかったかのように佐々木は他愛のないことを話しだした。
余計な詮索はしない、だけど本当に困った時は助けになってくれる。
大学から知り合った、空気の読める優しい友人に遼は心の中で感謝した。


遼は校内を歩いていた。
思い出すのは、さっき食堂で体調を心配してくれた佐々木を突っぱねてしまったこと。
レポートの締切ももちろんあった。だけど他に根本的な原因があることに遼自身は気付いていた。
その原因を知られたくなくて、あんな風に冷たく言葉を返してしまった。

この世界には男女の性以外にもう一つの性がある。
DomとSub。
そう呼ばれる第二の性が存在する。
Domは「庇護する者」、Subは「庇護される者」として分別され、domは subを支配しSubはdomに支配されたいという欲求を持っている。
まるで逃れられない運命のように生まれた時にそれは決められていて。
遼は subだった。
遼は自分のダイナミクスを受け入れられていない。
(だっておかしいだろ......)
庇護したいされたいなんて、そんなの体のいいとってつけた説明だ。
実際はそんな綺麗なものではないに決まっている。支配されるなんてそんなの考えただけで寒気がする。
Domに命令されて虐げられて Subは喜ぶなんて。
そんなのおかしな人間の話しだ。そんなのまともな関係じゃない。
自分は違う。自分はそんな人間じゃない。
遼は自分がsubなことを誰にも話していなかった。
誰かに従いたいなんて、そんな欲求今まで持ったことも感じたこともない。
現に今までNormalの人間と変わらずやってきのだ。
だからこれからも変わらない。変わらないんだ。
そう思って遼はギュッと拳を握りしめる。
だけど最近、夜眠れないことが多くなった。
どこかが渇くような感覚に襲われて、何かが足りないと感じて、その乾きと足りない何かを埋めて欲しくて堪らない衝動に駆られなかなか寝付けないのだ。
薬の量を多くして誤魔化してきたが、最近はそれもままならなくなってきていた。
「っ......」
ふら、とめまいを感じて遼は立ち止まる。
(まさか......これがSubの欲求不満......?)
そう思ってしまって遼は慌てて首を振る。
(そんな訳ない自分は違う......気のせいに決まってる!)
遼はそう思って自分の気持ちを奮い立たせた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

朝日に捧ぐセレナーデ 〜天使なSubの育て方〜

沈丁花
BL
“拝啓 東弥  この手紙を東弥が見ているということは、僕はもうこの世にいないんだね。  突然の連絡を許してください。どうしても東弥にしか頼めないことがあって、こうして手紙にしました。…”  兄から届いた一通の手紙は、東弥をある青年と出会わせた。  互いに一緒にいたいと願うからこそすれ違った、甘く焦ったい恋物語。 ※強く握って、離さないでの続編になります。東弥が主人公です。 ※DomSubユニバース作品です

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

絶対服従執事養成所〜君に届けたいCommand〜

ひきこ
BL
少数のDomが社会を支配する世界。 Subと診断された者にはDomに仕える執事となるため英才教育が施され、衣食住が保証され幸せに暮らす……と言われているのは表向きで、その実態は特殊な措置によりDomに尽くすべき存在に作り変えられる。 Subの少年ルカも執事になるほかなかったが、当然そこには人権など存在しなかった。 やがてボロボロに使い捨てられたルカと、彼のことをずっと気にかけていた青年との初恋と溺愛とすれ違い(ハッピーエンド)。 ◆Dom/Subユニバース設定の世界観をお借りしたほぼ独自設定のため、あまり詳しくなくても雰囲気で読んでいただけるかと思います。ハードなSM的描写はありません。 ◆直接的な描写はありませんが、受け・攻め どちらも過去にメイン相手以外との関係があります。 ◆他サイト掲載作に全話加筆修正しています。 ※サブタイトルは試験的に付けており、変更の可能性があります ※表紙画像はフリー素材サイトぴよたそ様よりお借りしています

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

短編集

田原摩耶
BL
地雷ない人向け

孤狼のSubは王に愛され跪く

ゆなな
BL
旧題:あなたのものにはなりたくない Dom/Subユニバース設定のお話です。 氷の美貌を持つ暗殺者であり情報屋でもあるシンだが実は他人に支配されることに悦びを覚える性を持つSubであった。その性衝動を抑えるために特殊な強い抑制剤を服用していたため周囲にはSubであるということをうまく隠せていたが、地下組織『アビス』のボス、レオンはDomの中でもとびきり強い力を持つ男であったためシンはSubであることがばれないよう特に慎重に行動していた。自分を拾い、育ててくれた如月の病気の治療のため金が必要なシンは、いつも高額の仕事を依頼してくるレオンとは縁を切れずにいた。ある日任務に手こずり抑制剤の効き目が切れた状態でレオンに会わなくてはならなくなったシン。以前から美しく気高いシンを狙っていたレオンにSubであるということがバレてしまった。レオンがそれを見逃す筈はなく、シンはベッドに引きずり込まれ圧倒的に支配されながら抱かれる快楽を教え込まれてしまう───

巣作り短編集

あきもち
BL
巣作りの話だけを書いていく短編集 独自設定あったりなかったり

処理中です...