オオカミさんは子犬を愛でたい

金色葵

文字の大きさ
上 下
22 / 22

最終話

しおりを挟む


「よし! あらかた片付いたな」
「お疲れ様です。近衛先輩」
「光琉もお疲れ様」
朝から光琉の家と宿舎を軽トラックで数度往復し、二人は光琉の荷物をすべて宿舎に運び込んだ。
近衛の隣の部屋に光琉は自室を構えることにした。だけど、その部屋にはベッドは置いていなくて。
「早く注文したダブルベット届くといいな」
「っ......!」
耳元で近衛がそう囁いて光琉は真っ赤になる。
「もう......近衛先輩!」
近衛の隣の部屋が光琉の部屋になり、その横の部屋が二人の寝室になっている。そこには二人で一緒に寝れるダブルベッドが置かれる予定だ。近衛の体が大きいので、キングサイズにしようかとギリギリまで迷っていたが「光琉と引っ付いて寝たい!」という近衛の一言であっさりとダブルベッドになった。
近衛に包まれている状態が何より大好きな光琉は、内心キングよりダブルがいいと思っていたので、近衛がそう言ってくれた時は嬉しかった。自分たちはやっぱりとても相性がいい。新しいベッドで、近衛とイチャイチャするのを想像して光琉は盛大にやける。
「そんなにやけて......光琉やーらし」
「あっ......」
すると後ろから近衛に抱きしめられ、首筋に軽く噛みつかれた。途端に甘い声が零れ落ちて光琉は慌てて口を押えた。
「やらしいことなんて考えてない! それは近衛先輩の方だろ!」
(まあ、全く考えてなかったというのは嘘だけど......)
恥ずかしくて光琉はキャンキャンと近衛に噛みつく。そんな光琉に可愛いなぁというのを隠しもせず近衛は顔をにやけさせた。
「そうだな、考えてるのは俺の方だな。光琉のこといっぱい可愛がりたいって」
すぐに近衛が光琉の言葉を受け入れる。相変わらず近衛は光琉に激甘だ。一緒に暮らすことになったら、さらに甘やかされるに違いなくて。
光琉は抱きしめる近衛の腕に手を重ねた。
「こんなに甘やかされたら俺、近衛先輩なしじゃ生きていけなくなっちゃう......」
少し拗ねるように呟いたら、近衛が嬉しそうに微笑んだ。
「何言ってんだ。一生、なんなら来世も、光琉のこと愛して愛でてやるから、安心して俺なしじゃ生きていけなくなっていいぞ」
「............」
めちゃめちゃ嬉しそうに近衛が上から光琉を覗き込む。冷静に考えたらけっこうなセリフを言っているのだが、近衛が大好きな光琉はその言葉を嬉しいと感じてしまう。
「じゃあ、責任取ってずーーっと一緒にいてね」
「おう、まかせとけ!」
ふふと同じように笑顔になる光琉に、近衛はとても幸せそうに瞳を細めた。
「将来は光琉と一緒に牧場を継いで、家族と動物たち、その周辺の住民たちの健康も全部俺が面倒見てやる。もちろん光琉のことは誰よりも大事にする!」
近衛は体を屈めると光琉にチュッとキスをした。
「近衛先輩......それ......」
光琉は瞳をぱちくりと瞬かせて。
「ん?」
「名案~~~~!!!!」
そう叫んで光琉は近衛の方に振り向く。答えるように近衛が腕を広げて、自分に向かって広げられる腕に光琉は飛び込むと、思いっきり抱きついた。
二人の顔には、とても幸せな笑顔が浮かんでいた。


オオカミさんは一生かけて、子犬を愛でたい。







ハッピーエンド♡
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

子犬はオオカミさんに包まれていたい♡

金色葵
BL
無事に恋人同時になった、犬塚光琉(いぬつかひかる)と狼上近衛(おおがみこのえ)はラブラブな同棲生活を送っていた。 しかし、近衛が一週間医学部の研修にいくことになりしばし離れ離れになる二人だったが...... (俺をこんな風にした近衛先輩が悪いんだから!) 毎日のように愛でられ可愛がられ溺愛されている光琉は近衛のいない状態が寂しくてしかたなくて!? オオカミさんは子犬を愛でたいの続編、ラブラブ恋人編になります。

酔った俺は、美味しく頂かれてました

雪紫
BL
片思いの相手に、酔ったフリして色々聞き出す筈が、何故かキスされて……? 両片思い(?)の男子大学生達の夜。 2話完結の短編です。 長いので2話にわけました。 他サイトにも掲載しています。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】あなたに撫でられたい~イケメンDomと初めてのPLAY~

金色葵
BL
創作BL Dom/Subユニバース 自分がSubなことを受けれられない受け入れたくない受けが、イケメンDomに出会い甘やかされてメロメロになる話 短編 約13,000字予定 人物設定が「好きになったイケメンは、とてつもなくハイスペックでとんでもなくドジっ子でした」と同じですが、全く違う時間軸なのでこちらだけで読めます。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

処理中です...