13 / 22
⑬
しおりを挟む「近衛先輩、牛乳買い忘れてる!」
「ああ、そうだった。ありがとうな光琉」
買い物のメモを見ながら声をかけると、近衛はにこにこと笑って光琉の頭を撫でた。優しい感触に自然と光琉にも笑顔が浮かぶ。
今日は駅前のスーパーに来ていた。
いつものように授業終わり、牧場に向かうと軽トラが停まっていた。
誰か来たのか?と聞くと「買い物行くけど一緒に行くか?」と聞かれ二つ返事で頷いたら、軽トラに乗るように促された。そのまま近衛の運転でふもとにある駅の方までやってきた。運転できることに驚いていると「高校卒業してすぐ免許取った」と、光琉の驚き顔を見て、近衛が嬉しそうに答えた。
どうやらこの車も大学の支給品らしい。牧場の奥を進んでいくと、門があり車道に繋がっていた。そこから街の方まで降りてくることができた。逆に動物たちのエサや牧草など専門的な品物は、大学が手配した業者がこの道を使って、街から牧場まで運んでくれるらしい。我が大学ながら、なんて上手に設計されているのだろうと光琉は感心した。多種多様の学科があるマンモス校らしい配慮の行き届いた環境に、この大学に入って正解だったな~と思う。
買ったものを袋に詰めていると、近衛が顔を近づけじっと光琉を覗き込む。
「光琉がいてくれるだけで、いつもの買い物もめちゃくちゃ楽しいな~これからも一緒に買い物したいな~」
瞳を細め、どこか甘えた口調の近衛に鼓動が跳ねる。
「っ......、............いいよ」
頬を赤く染め小さい声で返事をすると近衛は嬉しそうに破顔した。
「じゃあ帰るか」
二つある袋を両方とも持ち近衛が歩き出す。
「先輩っ俺も持つ!」
「そうか、ありがとな」
光琉に近衛が荷物を渡す。さりげなく軽い方を光琉に渡すと、空いた手で光琉の手を握った。
「あ......近衛先輩!」
恥ずかしくて咎めるように名前を呼ぶが、優しい目で見つめ返され光琉は大人しくなった。
「ふっ......ほんとかわいいな」
光琉の反応に表情を崩して愛し気に近衛が、にぎにぎと光琉の手を握る。始終甘い雰囲気の近衛に、光琉はさらに頬を赤く染めた。
「光琉、ほらこっち」
その後も、車を停めたパーキングまでの道すがら当たり前のように車道を歩き、車体の高い車の座席に座る時には体を支えてくれて、終いには運転席からシートベルトまで締めてくれた。
ここまで甘やかされていいのかと思わなくもないが、近衛の表情も態度も温かく優しくて、ついつい素直に受け入れてしまう。
ちらっと運転する近衛の横顔を盗み見る。いつもの白衣姿ではなく、暗めの青色のデニムに黒のセーターを着た近衛。ラフな着こなしが、精悍な顔の近衛の魅力をさらに引き立てている。
ハンドルを握るその姿はとても素敵で。
(近衛先輩かっこいい......)
光琉はポーッとその姿に見惚れた。
「今度レンタカーでも借りて遠出しようか?犬斗も連れてさ」
さすがに動物たち全員は無理だからさと、近衛が笑う。
「うん!」
素敵すぎるお誘いに、光琉は目を輝かせ大きく頷いた。そんな光琉を近衛はやっぱりとても愛しそうな瞳で見つめて目を細めた。
38
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
子犬はオオカミさんに包まれていたい♡
金色葵
BL
無事に恋人同時になった、犬塚光琉(いぬつかひかる)と狼上近衛(おおがみこのえ)はラブラブな同棲生活を送っていた。
しかし、近衛が一週間医学部の研修にいくことになりしばし離れ離れになる二人だったが......
(俺をこんな風にした近衛先輩が悪いんだから!)
毎日のように愛でられ可愛がられ溺愛されている光琉は近衛のいない状態が寂しくてしかたなくて!?
オオカミさんは子犬を愛でたいの続編、ラブラブ恋人編になります。
酔った俺は、美味しく頂かれてました
雪紫
BL
片思いの相手に、酔ったフリして色々聞き出す筈が、何故かキスされて……?
両片思い(?)の男子大学生達の夜。
2話完結の短編です。
長いので2話にわけました。
他サイトにも掲載しています。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】あなたに撫でられたい~イケメンDomと初めてのPLAY~
金色葵
BL
創作BL
Dom/Subユニバース
自分がSubなことを受けれられない受け入れたくない受けが、イケメンDomに出会い甘やかされてメロメロになる話
短編
約13,000字予定
人物設定が「好きになったイケメンは、とてつもなくハイスペックでとんでもなくドジっ子でした」と同じですが、全く違う時間軸なのでこちらだけで読めます。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる