いない世界

みかんと納豆と食パンの牛

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君のいない世界

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...そこから1ヶ月が経ったであろうか、幾度も逃げようと考えたが全部防がれてしまっている。この頃になると俺らは普通に話す仲になり、居心地がいいのとまたシチューが食べたいと思ってしまいずっと居候している。

「...あのさ、もしかしたら何だけどここから引っ越すかもしれないんだ。一応荷物をまとめておきたいから手伝って欲しいな」

真剣な顔で言う人吉に俺は驚きながらも承諾する。まとめる荷物はほとんど無いも同然だった、それも俺用と見られるものばかり。

「近頃流星雨の範囲が広くなってきててね...ここもその内呑み込まれるって予想が出てるんだ。実にも避難指示が出てる。」

この世界では流星雨と呼ばれる細かい流れ星が、雨のように地上に降り注ぐ地域がある。何でも星全体を守ってくれていたバリアが一部壊れしまったせいでこんな気象情報になったらしい。

「...人吉はどうするんだ、一緒に逃げるんじゃないのか?」

「...少し長い昔話をしようか。」



呪われた星には永遠と星屑が流れ堕ち続けていました。地上に生き物はおらず、地下で人々は生活していました。

ある時、地上の様子を確かめてこいと1人の罪人が追い出されました。その日から地下に鳴り響く堕ちた星の音は聞こえなくなりました。

40日ほど経った時、また罪人を送りだしました。今度は戻ってきました。もう少し様子を見てこいと出しましたがすぐにまた戻ってきてしまいました。
1週間ほど経った時、また罪人を送り出すと雑草を握りしめ戻ってきました。それからまた1週間経った時、罪人を送り出すと帰ってきませんでした。

皆地下から出て地上で暮らすようになりました。ですがしばらく経った頃、また星屑が落ちてくるようになりました。

生贄が必要だと考えた人々は、罪人を沢山殺めました。ですが降り注ぐ星は止まりません。そんな時、一際大きい星が人に堕ち共に消えてしまいました。



「...その後星は堕ちなくなりました。」

「でも堕ちてるじゃん。」

長話に少し眠くなりながら返事を返すと、言いにくそうに人吉は続きを話し始めた。



「それから同じ事が続くと人々は、星に生贄を捧げるとバリアのようなものが生まれて星から自分達を守ってくれていると悟ったんだ。罪人が生贄に捧げられる習慣ができてしまった。」

「...それと逃げない事になんの関係があるの」

「僕が今回の生贄なんだ。」

まっすぐと俺を見る人吉は笑っていない。

「だから僕は、逃げれない。」

聞きたくない。

「実は逃げて。」

「...なんで...なんでそんな嘘言うの!?そもそも罪人って......いや、そんなのいいから逃げてよ!!俺が代わりになるから」

「...君はこれから沢山いい人に会って平和で楽しい日々を過ごして、僕の分まで生きて。これは僕のエゴだしやらなくてもいいんだ。でも、君に生きてて欲しいって思っちゃったんだ。」

この人は、どこまで俺を縛れば気が済むんだろうか。自分で助けておいて最後まで面倒をみない、本っ当に

「...嘘つき。」

涙がぽろぽろ溢れる、止まらない。いきたくない。いやだ。

「ごめんね、いかなくちゃ。」

待って、待ってよ。いかないで





雨は止んだ。まだこの部屋に僕は住んでいる。周囲の人の反応から察するに次は僕の番なんだろう。

洗濯物を干して戻ろうとした時、近くに人が現れた。ハイライトを無くした目でフラフラと飛び降りようとしたその人に僕は声をかけた。...今なら気持ちが分かるかもしれない。

「ねえ」
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