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28 相談待ち
しおりを挟む「はぁ。その顔は思い当たる人がいるのね?なら思い切って誘ってみればいいじゃない!あなたカルダン王国に巫女として来ることになった時、自分の気持ちに正直に生きるって決めたんじゃなかったの?」
アリアナの言葉にドキリとする。
「そうね…もう、言うしかないわよね。引き延ばしたって自分の気持ちが変わるわけじゃないし。嫌われるのを恐れて逃げ回っても答えは変わらない。…………正直な気持ちを…ぶつけてみる…」
俯いて膝の上のスカートを握りしめる。
「まぁ、その前にジルベール様のお相手がまだ決まってないといいけどね。何せ狙っている令嬢が多いから激戦だもの」
「―――――え。ジルベールって……私、口から出ていた?」
遂に妄想と現実の境も分からなくなってしまって口から溢れ出ていた?
アリアナはぷっと吹き出し、可笑しそうに顔を歪めた。
「ううん。でも、分かるわよ~。アレッサとジルベール様の朝稽古見てればね。うーん、可能性としては宰相補佐官とかシェノビア神官もいたかもしれないけれど。どちらも舞踏会のエスコート役は無理でしょうしね」
「え、え、え…何?!アリアナって読心術の使い手だったの?」
「まさか。あなたの行動見てれば誰でも分かるわよ。切れ者と噂の出世頭でもある宰相補佐官セドリック様と週末街デートしてたり、神秘的な美しさを持つシェノビア神官とは毎日放課後特訓で一緒だし。いつ恋の相談をしてくれるのかと楽しみに待っていたのに」
ぽかんと開いた口が塞がらない。
「本当にアレッサって、顔に感情がだだ洩れなのよ~。分かり易いったらないわ。そう人に言われたことない?」
「ううっ。ある…………」
そう。カルダン王国に来る前、同僚の看護士ルイザから全く同じことを言われていた。
がっくりと肩を落とし項垂れる。
「私って、そんなに分かり易かった?一応の自覚はあったけど。まさかここまで自分の感情がバレバレだったなんて…」
俯いたまま顔を上げられず、ぼそぼそ続けた。
「正直、三人の男性を同時に好きになるなんて、軽い女だと思われたり…嫌われるのが怖くて…相談出来なかったの」
「ふ~ん。それはないわね。前にも言ったでしょ、夫を複数持つ女性もいるって。まあ、あちこちで男を漁っているようなら非難の対象だけれど。ベルカーディナ王国とは違うから戸惑うかもしれないわね……真面目に交際していて結婚も前提であれば、複数の男性とお付き合いすることには寛大なお国柄なのよ。あ、男性達が同時交際するのに同意の上というのは大前提だけれどね」
「セドリックは三人での交際に構わないと言ってくれた。シェノビアは拒否して失うくらいなら受け入れると。ジルベールには…他の二人のことを話せていない…………」
アリアナは腕を組み呆れた顔で私を見た。
うう、視線が痛い…突き刺さる。
「なるほど、問題解決にはあと二つクリアすればいいだけじゃない。さっさとジルベール様に話してらっしゃいよ。そして三人の意志を確認出来たら、三者会談ね」
「三者会談?!」
いったいどんな会談になるのだろう。
想像できない、あの三人が顔をつき合わせて何を話すというのか。
「三人が集まってこれからの交際について話し合う場は必要よ。好きな女性を共有するわけだからいろいろあるでしょう。一般的な流れよ、女子爵をしている従兄弟のところでも聞いた話だわ」
「そんなに簡単にいくかしら…………」
アリアナは食後のコーヒーを口に運びながら微笑んだ。
「彼等三人は、生まれも育ちもカルダン王国よ。この件に関しては、あなたよりずっと適応力がある筈よ」
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