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27 巫女あるある
しおりを挟むカルダン王国とベルカーディナ王国では友好の証として両国の王族が率いる使節団が数年に一度、互いの国を訪問するという交流が行われている。
そして、その夜には使節団を歓迎するための舞踏会が開催されるのが通例だ。
巫女達は全員王家の血筋の令嬢なので勿論招待されている。
アレッサにも招待状が届き、カルダン王家とベルカーディナ王国の貴族の血を引く巫女として友好の場に相応しいと舞踏会への参加が義務付けられてしまった。
今回、友好使節団を率いるのは王太子殿下であり側妃の話がなくなったとはいえ会うのは気まずい相手である。
しかも舞踏会に参加するとなると大きな問題が二つある。
エスコートしてくれるパートナーと、ドレスを用意しなくてはならない。
コリンは婚約者と参加するらしく、嬉しそうに彼の写真を見せてくれる。
コリンのように婚約者や恋人がいれば問題ないが、いない者は友人や親類、兄弟に依頼するのが一般的だ。
婚約者や恋人のいないアリアナはどうするのか聞こうと思った矢先、コリンからアリアナは自身の護衛騎士と参加するらしいという情報を得た。
アレッサはランチタイムに食堂に向かうアリアナを、有無を言わさず捕まえ連行した。
美味しそうなビーフシチューの乗ったトレイを持って長テーブルの端に並んで座った途端、前のめりになる。
「アリアナ!護衛騎士と舞踏会に参加するって聞いたけど…本当?」
「何?血相変えて…怖いわね。舞踏会のことは本当よ。ファースにエスコートしてもらうわ」
ファース…アリアナの護衛騎士の青年。
筋肉隆々で体躯が他の騎士より一回りくらい大きく見えた。
アリアナはマッチョ好きなのか。
「自分から頼んだの?っていうか、護衛騎士と良い感じになっていたとか知らなかったけど…」
「まだ、お付き合いもしてないわよ。ただ彼が謁見式で私の前に護衛騎士として跪いた瞬間から、ずっと彼のことが気になっていたのは本当。だから、この機会に一歩踏み込んでみたの少しでも自分を意識して欲しくて……」
ビーフシチューの柔らかな肉を頬張り飲み込むと、そういえばと思い出したかのように付け加えた。
「私の他にも護衛騎士と参加する子達が何人かいたかな。でも彼女達の場合はもう既に良い感じになっているらしいけどね~」
ふふふっと笑ってウインクするアリアナ。
「アレッサは知らないかもしれないけれど。婚約者や恋人のいない巫女が自分の護衛騎士と退任後にお付き合いして結婚するのって……実は、巫女あるあるなのよ」
「そ、そういえば…女王陛下の夫君も二人とも元騎士様で、お一人はご自身の護衛騎士だったわね‥‥」
「で、アレッサ。あなたはどうするの?パートナーは決まったの?」
「それが………」
「まぁ、この国に知り合いがいるわけでもないしねぇ。当てがないなら私の従兄弟を紹介しようか?」
当てね…………。
思い浮かんだのは三人の顔だった。セドリックはお仕事で宰相閣下に同行するため無理だろう。シェノビアは神官という立場上舞踏会には参加出来ない。
ジルベールは…………告白され曖昧な返事をしたまま、一週間ほど経っていた。こんな状況でどの面下げてエスコートをお願いできるというのか…私は、あなたを含め三人好きな男性がいますなんて……。
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