寄生虫転生~神様ではない~

kitakore

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寄生虫の進歩

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仄暗い穴の底

粘度の高い液体で満たされたその中にはあらゆる物が浸してあり、日々発見と驚きを与えてくれる。

活動を停止したそれらは変化を産まずにただ『ある』という状態なのだが、本能さんの研究と習熟に関しては十分すぎる程に活用できる。

活動している物に関しても、十分にサンプルがある為その点についての心配は無用だろう。活動中の者は停止した物と比べて無茶な事ができないが、まあ近々無茶しても良いものも出てくるであろう。

(でもまさか、こんな形で言語の壁を超える事になるとはなあ)

脳を操る際、俺は本能さんの感覚に委ねて適当にクチュル事が多い、というのもそもそもその分野を俺が理解しきれていないからだ。

子供の頃、なんとなくで自転車に乗っていたように原理の追求を諦めて、[ただそうすればいい]とすれば、大幅に労力を削減する事ができる。

でだ、俺はその[なんとなく]を利用できないか、とふと思い立った。

物は試して見るもので、結果[なんとなく]の権化である本能さんによって、赤子が生まれた国の言語を修得するが如く、あれほど苦戦してきた言葉を身につける事に成功した。

翻訳するのには本能を仲介する必要があるのだが、文字通り一心同体な俺達にはなんら問題もなく、タイムラグもほぼ発生しない。

問題があるとすれば、喋る方法だ。糸の応用で振動として音を出すことは可能なので、後は声帯とそれに風を送る機構が必要になるか?まあ、それも本能さんによって直に実装できるだろう。

それは置いといていいか、今まで喋らずにやって来れたのだ、今更喋れたとして大きな問題はあるまい。

村人の会話を理解できるようになったのだけでも大きな進歩だ。



とそう思っていたのだが。



「おおおおお我らが神よ!」

「本日も平穏、安寧を有難うございます!」

「本日の贄も聖域へと奉納させていただきます。」



やっぱり神扱いされている現状を認識するのは辛い!

言葉が分かる分気まずさが倍増した。

(早めに訂正しないと大変な事に・・・いや、もうこれ取り返しつかないだろう。)



村人の反感を買ってファンタジーな虫下しで一掃される可能性もあるし、例の札的な懸念も消えてない。

今更後には戻れない事の実感を得て神様扱いの件は早々に諦めることにしよう。

・・・この世界で神という物ってどういう定義と扱いなのかは優先的に調べるとしよう。
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