寄生虫転生~神様ではない~

kitakore

文字の大きさ
上 下
1 / 38

少し未来の話

しおりを挟む
「宿りの森には化け物が出る。」



自分がどうしてこのような様になったのか、半狂乱に走りながらも思い返すと、全てはあの噂が源流だったと行き当たる。

そもそもなんでそんな噂が流行るのだ、化け物など、精々この地域にしては珍しい魔物とかだろう、と高を括っていた俺は大馬鹿物だ。

が、そうだとしてもだ、それが・・・それがあんな悍ましい物だとは誰が想像出来る物か!。

「化け物」そう奴こそ化け物だ。ギルドの調査依頼など蹴るべきだった。



走る走る走る、息が荒くなるがそんな事など気にする余裕など無い。あれに追い付かれるなどあってはならない。

どれだけ走っただろうか、運良くか、それとも諦めてくれたのか、奴に邂逅する事無く、目の前に街道が見える位置まで来れた。

日頃は何も考えずに歩いている道だが、この時だけは光輝く一本の糸にみえ、自然と頬に熱い物を感じる。



(助かった!助かった!助かった!)



速く人のいる所に!速くギルドに!この森は焼き払わなければならない!そしてあの化け物をあぶり出し、討滅しなければ!大変な事になる!



「えぁっ!?」

不意に身体に妙な感覚を覚える。



希望が見えて安堵し、余計な事に気を向けてしまったからか、どうやら躓いて身体が勢いそのまま投げ出されるようにして転んでしまったようだ。

地に這い蹲るようにして、顔を上げる。



「へっへへっ、転んじまった」



恥ずかしさ、焦る気持ちを誤魔化すようにそう独り言ちつつ、顔を上げる。



「チュウ」



ネズミが居た。



顔を上げるとネズミたった1匹だけ居た。



別にこの年になって、ネズミなど怖い筈も無い・・・が声が出なかった。ネズミが顔に近寄る、野生のネズミが人間に近づくだろうか?

そんな疑問が浮かぶ前に、俺には確信が、恐怖が先に襲って来た。



「やめろ、やめてくれ。」



懇願するもネズミは寄ってくる。

表情がない筈のその生き物が、歪に笑ったような気がした。

ネズミが顔に接触する前に、俺は気を失った。



ーーーーーーーーーーーー



「うーん、あっあれ?」



俺はいったい何でこんな所で・・・。そうだ!ネズミ!

周囲を見渡すが、奴は近くにいない。そもそもあれは現実だったのか?



「いや、今は考えるのは辞めよう」



そうまずは街に、ギルドに行かなければ、森をやききききあぎゅ?そう、ギルドに報告しなけれれれびゃ、そう何も無かったと報告して、次の次のつぎつぎつぎ・・・そう!田舎でのんびりと暮らすんだ。





朗らかな笑顔を浮かべ一人の男は街道に出た。満面の笑みを浮かべた男が森の中から出て来た事により、偶然通り掛かった商人が唖然としながら馬車を停めたが、男はそれを意に介さず歩を進め、真っ直ぐ街へと向かったのだった。

その時の商人の目には、その男の耳から何か糸の様な物が写っていたのだが、何かの見間違いだろうと、耳飾りか何かだろうと、そう思い不気味な笑い顔の男の記憶だけ残し、酒場の話の種に落とし込むに留まるのみとなった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...