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10 光の吸収
しおりを挟む翌朝レイ目が覚めるとノアは隣で書類に目を通していた。
「昨夜は無理をさせたな。痛みはないか?」
彼女の瞳には朝日を存分に浴び穏やかに微笑む彼が映る。この数時間で様子が変わりすぎて調子が狂う。ただ体を重ねただけでこうも態度が変わる男性もいるものか。
「想像と違ってかなり優しく女性を抱かれるんですね。おかげさまで少し疲労が残っている程度です。」
「この身を捧げるたった一人の女を粗末に抱くものか。」
「他にお相手がいないのは意外です。」
彼がそうしようと思えばこんなに美しい王には容易いことだろう。
「王になるまで必死で興味がなかった。王になりより多くの女が寄ってきたが嫌悪感が増すばかりで、知識は基本教育で習った程度と周囲から聞こえてきた下品な会話でしかない。」
周囲の下品な会話を何食わぬ顔で聞いている彼を想像すると笑いそうになってしまったが、話が絶妙に交わっていないことにレイは気付いた。
「この印ももっと強く吸わなければすぐに消えるんだな。」
残念そうに細長い指で撫でるのは、レイの首元にある独占欲の証だ。すでに消えかかっているが今はそれどころではない。
「…もしかして、行為自体が初めて…」
「さっきからそう言っている。」
真っ直ぐな彼の目に偽りはないように思え、レイはとんでもない相手と寝てしまったと急速な焦りを感じた。
「私はてっきり今はそういうお相手がいないだけという意味かと…。」
ノアは微笑んで強く抱きしめた。
「長く生きてきたが俺が欲しいと思ったのはレイだけだった。初めて見た時、衝動的に強くそう感じた。こう言われると美しいお前は嫌だろうな。」
きっと彼も何度も経験してきたはずだ。
「ええ、何度もその台詞は吐かれました。」
「だがそれが事実だ。他のやつとは違うなどと証明できるものがない。だが俺は」
「心は変わります。良くも悪くも。貴方の心も、また変わるかもしれません。」
それ以上は聞きたくなかった。
レイはガウンを纏いベッドを出た。
「…お前の心はどうなんだ。」
彼女は明るく笑う。
「私の心は私のものです。」
「男を煽るのが上手い女だ。」
彼も輝くスカイブルーを細めた。
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