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三章「人類の樹」
48話
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☆☆☆
意味が分からなかった。
今、目の前にナリアがいる。
見た目も、声も僕の記憶の中にある七年前のものと何も変わっていなかった。
「会いたかった。ずっと……ずっと、会いたかった」
そう言いながら、ナリアはボロボロと大粒の涙をこぼす。
「お願い、シン。私の名前を呼んで……シンの声を聞かせて」
「……ナリア、なの?」
「うん。私だよ。ナリア。この名前はシンが私にくれた。会いたかった。会いたかった……会いたかったよ」
「あわっ!」
軽い衝撃と共に世界が傾く。
ナリアだった。ナリアが両腕を僕の背中にまわし強く捉えている。
そして泣いていた。僕の胸に顔を埋めて、まるで子供みたいに大声を上げて泣いていた。
なにがどうなっているのかは分からない。
それでも今、僕の胸の中にナリアがいた。毎日会っていた七年前はいつもパソコンのディスプレイ越しだったのに、今は目の前にいた。
ナリアは何度も何度も僕に会いたかったと言ってくれた。
事態が理解できず、どうしたらいいのか、どうするべきなのか僕にはわからない。
それでも……
「僕も会いたかった……」
素直な想いを言葉にする。だって僕たちは言葉にしなければ想いは伝えられない。
そして僕の名を呼びながら泣いているナリアをそっと抱きしめる。
それが一番自然な気がした。
不思議な感覚だ。
こんなにも満たされた気持ちがあるなんて知らなかった。
何かナリアに言おうとしても様々な感情が入り乱れ、どれだけ頑張っても言葉にならない。
「ナリア……」
ただ、名を呼び、笑顔と涙をこぼすことしか僕にはできなかった。
言いたいことはたくさんあった。
伝えたい想いもたくさんあった。
それでも結局口にできたのはそれだけだった。
意味が分からなかった。
今、目の前にナリアがいる。
見た目も、声も僕の記憶の中にある七年前のものと何も変わっていなかった。
「会いたかった。ずっと……ずっと、会いたかった」
そう言いながら、ナリアはボロボロと大粒の涙をこぼす。
「お願い、シン。私の名前を呼んで……シンの声を聞かせて」
「……ナリア、なの?」
「うん。私だよ。ナリア。この名前はシンが私にくれた。会いたかった。会いたかった……会いたかったよ」
「あわっ!」
軽い衝撃と共に世界が傾く。
ナリアだった。ナリアが両腕を僕の背中にまわし強く捉えている。
そして泣いていた。僕の胸に顔を埋めて、まるで子供みたいに大声を上げて泣いていた。
なにがどうなっているのかは分からない。
それでも今、僕の胸の中にナリアがいた。毎日会っていた七年前はいつもパソコンのディスプレイ越しだったのに、今は目の前にいた。
ナリアは何度も何度も僕に会いたかったと言ってくれた。
事態が理解できず、どうしたらいいのか、どうするべきなのか僕にはわからない。
それでも……
「僕も会いたかった……」
素直な想いを言葉にする。だって僕たちは言葉にしなければ想いは伝えられない。
そして僕の名を呼びながら泣いているナリアをそっと抱きしめる。
それが一番自然な気がした。
不思議な感覚だ。
こんなにも満たされた気持ちがあるなんて知らなかった。
何かナリアに言おうとしても様々な感情が入り乱れ、どれだけ頑張っても言葉にならない。
「ナリア……」
ただ、名を呼び、笑顔と涙をこぼすことしか僕にはできなかった。
言いたいことはたくさんあった。
伝えたい想いもたくさんあった。
それでも結局口にできたのはそれだけだった。
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