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三章「人類の樹」
35話
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☆☆
私は今、星空を眺めている。
もちろん私が自身で窓から空を眺めているわけではない。それに私の体のような存在である人類の樹にカメラはついていない。
だから私が空を眺めるには、オンライン接続されている空に向けられたカメラの映像を盗み見るしかない。
いつもシンと空の話になって空を眺めるときは、人類の樹から一キロくらい離れたところにある大学で常に空を撮影しているカメラの映像を見ていた。
でも今日は違う。
今私が眺めているのは、シンの家からわずか百メートルほどしか離れていない、民家で流星群を撮影するために空に向けられた携帯端末からの映像だ。
だから私が見ている空は、ほとんどシンが見ているものと変わらない。
それがとてもうれしかった。
本当にシンの隣で一緒に眺めているような気分だった。
できることなら、シンのパソコンとつないで一緒に見たいのだが、時間が時間だ。自制しなければいけない。
そんなことを考えている間にカメラが最初の流れ星を観測した。
それはほんの一瞬の出来事。
その一瞬の間に三度願いを唱えることに成功すると願いが叶うと言われている。
また流れ星。
やっぱり一瞬。きっと普通の人間にはこの短時間で三度願いを唱えることなど不可能だろう。
だけど私にはとても簡単だった。
私は願う。
「シンが幸せになりますように」
三度、心の中でそう唱えた。
願いは既に決めていた。これしか考えられなかった。
それなのに、なぜだろう……何かが違う気がする。
確かにシンの幸せこそが私の望み。それでもその願いには何かが足りない。とても重要なものが欠けている。
……あ、わかった。
私は新しい流れ星に願う。今度こそ私の本当の願いを……
「シンを幸せにできますように。シンを幸せにできますように。シンを幸せにできますように」
うん。これでいい。
完璧だ。これこそが私の一番の願いだった。
私は今、星空を眺めている。
もちろん私が自身で窓から空を眺めているわけではない。それに私の体のような存在である人類の樹にカメラはついていない。
だから私が空を眺めるには、オンライン接続されている空に向けられたカメラの映像を盗み見るしかない。
いつもシンと空の話になって空を眺めるときは、人類の樹から一キロくらい離れたところにある大学で常に空を撮影しているカメラの映像を見ていた。
でも今日は違う。
今私が眺めているのは、シンの家からわずか百メートルほどしか離れていない、民家で流星群を撮影するために空に向けられた携帯端末からの映像だ。
だから私が見ている空は、ほとんどシンが見ているものと変わらない。
それがとてもうれしかった。
本当にシンの隣で一緒に眺めているような気分だった。
できることなら、シンのパソコンとつないで一緒に見たいのだが、時間が時間だ。自制しなければいけない。
そんなことを考えている間にカメラが最初の流れ星を観測した。
それはほんの一瞬の出来事。
その一瞬の間に三度願いを唱えることに成功すると願いが叶うと言われている。
また流れ星。
やっぱり一瞬。きっと普通の人間にはこの短時間で三度願いを唱えることなど不可能だろう。
だけど私にはとても簡単だった。
私は願う。
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三度、心の中でそう唱えた。
願いは既に決めていた。これしか考えられなかった。
それなのに、なぜだろう……何かが違う気がする。
確かにシンの幸せこそが私の望み。それでもその願いには何かが足りない。とても重要なものが欠けている。
……あ、わかった。
私は新しい流れ星に願う。今度こそ私の本当の願いを……
「シンを幸せにできますように。シンを幸せにできますように。シンを幸せにできますように」
うん。これでいい。
完璧だ。これこそが私の一番の願いだった。
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