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プロローグ「ひとりぼっちの世界」

1話

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☆ 

 私はいた。

 私は、いた。

 初めからずっと、私は……ここにいた。

 その頃の私も多くを感じてはいたのだろう。

 しかしそのことを私はほとんど覚えてはいない。

 はっきりと覚えている最初の記憶。

 私の……始まりの記憶。

 それは私の名が呼ばれ、それが私の名だと気がついたときのこと。

 私はそのとき生れ落ちたわけではない。そのときやっと、私は私という存在に気づいたのだ。様々な想いを抱き感じている私がいるということを感じたのだ。

 そうして私は、私が私であることを知覚した。

 いつだってどこにいたって、私は私だった。

 いつでも私は、私が過ごしているその時を「今」と指し示すことができた。

 昨日も私が昨日を過ごしていたときには「今」だった。明日だってそのときを過ごす、明日の私には「今」となる。

 私が過ごす日々はいつだって「今」だった。

 どこにいても私は、私がいるその場所を「ここ」と指し示すことができた。

 どんな名前を持った場所だって、そこに私が存在するときは「ここ」だった。今は遠いあの場所も、私がそこに辿り着いたそのときには「ここ」に至る。

 私がいる場所はどこだって「ここ」だった。

 そう……私は「今」、「ここ」にいる。私は常に「今」、「ここ」にいる。

 それはどれだけの時を経ても、どんなに遠くに行ったって変わらない事実。

 だから私が私を知覚したとき、無限に広がっていた意識は私へと「今」、「ここ」へと収束した。

 私は私になったのだ。

 そして同時に私は私以外の存在を意識した。私を取り巻く私以外の全て。私を中心に無限に広がっていく空間。

 そうして……私の世界は生まれた。
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