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第21話 具体的な依頼の内容について

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「……ええ、ええ、ですから、ゴブリンが巣を作っているのではないかと考えまして、こうして依頼を出すことになったのですが……ええと、あの……間違いではないのですか? 依頼内容からして、銅級が来てくれればそれで十分だろうと、私共の方では考えていたのですが……皆さんは、魔法銀級だという話は本当なのでしょうか……?」 
 
 困惑した表情で依頼内容の説明をしているのは、この村エロイーズの村長であるドッサだ。 
 話を聞いているのは勿論、私ユーリに、それと一緒に依頼を受けることになったジュリアたち三人である。 
  
 ドッサは温厚で誠実そうな若い村長で、こうして依頼内容についての説明を改めて聞いていても丁寧に話してくれているのが分かる。 
 
 彼が言うには、今回の依頼内容は、村の近くに出現したゴブリンの討伐と、おそらくはあるであろうその巣の発見、そしてもし可能であれば破壊も、ということだった。 
 
 冒険者組合の最下級……つまりは鉄級が受けるには少しばかり難しく、したがって仮登録者が受けられるような内容ではない。 
 
 ゴブリンの討伐くらいは鉄級でも出来るだろうが、複数体いることが想定される上、かなりの数がいる可能性もあるから余計に。 
 
 冒険者組合長であるゴドールが、ちょうど良い依頼がない、と振ったが一人では無理だ、となるのも納得の内容だった。 
 
 ただ、私一人で出来ないのか、と言われると出来るだろうと言うほかないが、一般的な仮登録者では無理だろう。 
  
 試験としても不適切だろうし。 
 
 けれどジュリアたちのような、ベテランをつけるのなら適切なものになる。 
 
 けれど、このような冒険者組合内の諸々を知るはずもないドッサからすると、特別な依頼を出したわけでもないのに魔法銀級の凄腕たちが急にやってきた、とその目には映るのだった。 
 
 だからこそ、ドッサは困惑しているわけだ。 
 
 その辺りの誤解を解くべく、私がドッサに説明する。 
 
「……ドッサ村長」 
 
「はい……」 
 
「まず、ここに魔法銀級の冒険者がいる理由ですが、これは私の登録をかけた試験を兼ねておりまして……」 
 
 とそこから、私たちが何故連れだってここに来たのかの細かな説明をした。 
 
 内容的には、依頼をしたドッサからすれば腹立たしい、と言いたくなるような部分もあるはずだった。 
 
 たとえば、自分たちの生き死にが関わってくる依頼を、試験扱いとはなんたることか、とか。 
 
 そう言われないために、できるだけ丁寧で誠実な説明を心がけたのが功を奏したのか、全てを聞き終えたドッサは納得した表情で、 
 
「そういうことでしたか……いやはや。冒険者組合の制度というのも良く出来ているのですね」 
 
 と呟いた。 
 そんな彼に私は言う。 
 
「あの……もし、私が依頼に参加するのが問題だとお考えでしたら、今回のご依頼については、こちらの三人に主体的に動いて貰うと言うことも出来ます。ですから、余り心配しないでいただきたいのですが……」 
 
 これについては、ここに来る前にすでに三人に相談していた。 
 
 そうした場合、登録の試験としては扱えなくなるので、また戻ってからゴドールに何か依頼をもらう必要が出てくるだろう、とは言われたが、これについては譲るわけにはいかないだろう。 
 
 依頼で何が大事か。 
 
 私は冒険者になって、まだ仮登録している状態に過ぎないが、それでも分かることはある。 
 
 依頼者の依頼を、適切に処理することだ。 
 
 そのために私が邪魔だというのなら、そこは私が引くべき。 
 
 それだけの話である。 
 
 そんな私に、ドッサは笑って言う。 
 
「いえ、いえ。それには及びません。試験として扱っていただいて大丈夫です。もちろん、村に被害が出るというのであれば考えなければなりませんが、ユーリ殿のご説明を聞く限り、そのようなことにはならないよう、魔法銀級の方々が十分に気を配っていただけるのでしょう? でしたら……」 
 
「それについては私らが強く保証するよ。まぁ……この娘は今は確かに仮登録者の身分だが、実力の方についてはほとんど私らと変わらない。そういう意味での心配は一切要らないと思うがね」 
 
 そう言ったのはジュリアだ。 
  
 交渉の方は全て私に任せる、それが冒険者組合長からの指示で、試験の内の一つだ、と彼女は言っていたが、ここの話については口を挟んで問題ない、という判断だろう。 
 
 ジュリアたちがずっと黙り込んでいるのもおかしな話だし、その辺りは割と臨機応変に、だ。 
 
「ほう、ユーリ殿はそれほどまでに……では冒険者組合期待の新人、ということでしょうか?」 
 
 軽口のようにそう言ったドッサ。 
  
 これにリスタンが、 
 
「まさにその通りさ。まぁ、何があってもこの村に被害が及ぶことはないから、本当に安心してくれて良いよ。そのために、僕は村に残って警戒しているつもりだからね。ゴブリンの探索と討伐は、主に他の三人がすることになる」 
 
 そう言った。 
  
 討ち漏らしをするつもりはないが、広い森に囲まれた村だ。 
 
 どこから魔物がやってくるか分からず、運悪く私たちに一切出くわさずに、まっすぐ村を襲いに来るかも知れない。 
 
 そのような場合を考えると、一人は村にいた方が良い、と私が言ったらそれが採用された。 
 いいのか、と思ったが、基本的に依頼中の指示は私に任せる、ということらしかった。 
 
 元々はジュリアたちが主な指示を出し、私はそれに従っているだけでいい、という話だったのだが、どこかで微妙に変わったようだ。 
 
 始めから組合長のゴドールにそういう感じで言われていたのかな? 
 
 とか思ったが、その辺りを聞くと試験としての公平性を欠くかなと思って聞けていない。 
 
 全部終わったらしっかり聞けば良いだろう。 
 
 そして……。 
 
「委細承知しました。では、私どもは村で、皆さんが無事に帰ってこられることを祈っております。どうぞ、魔物たちを追い払って下さい。よろしくお願いいたします」 
 
 ドッサがそういうと同時に、私たちは頷いて立ち上がり、依頼を完遂すべく、森の中へと向かったのだった。
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