世紀末な転移先で覇王に捕まりました〜この世界で生き抜くなんて無理っ!絶対無理っ!〜

三谷玲

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.遠征なんて無理っ!絶対無理っ! 13

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 翌日、日暮れを待って俺たちはこっそり出発した。
 一触即発ということではないらしいが、念には念を入れて……ということらしい。
 夕日に照らされた城は、城というよりどこかのマンションみたいで懐かしい気がした。

 ハオの馬は、想像どおり、俺の知ってる馬とは比べ物にならないくらいでかかった。
 ハオに似た大きな体躯のわりに、目はとっても穏やかでまつげがバシバシ。きれいないい子だった。
 馬に乗ったことのない俺はすこし興奮しているので、ハオに抱えられていても気にならない。むしろ、ちょっと視界が高すぎて、ちゃんと抱えてもらわないと怖かった。

「どれくらいかかるの?」
「早足であればそう掛からないが、どうせならゆっくり景色を見たいだろう? そう遠くまで寄り道はできないが、ミハラを通ってから西に向かえば、アーツへの近道もある」
「任せるよ。あ、でもあんまり迷惑の掛からないようにな」

 ミハラといえば、俺がワガママ言って風呂を用意してもらったときにお世話になった村だ。
 そのミハラは、ほんとにあっという間にたどり着いた。
 村人にみつからないように少し離れたところから見下ろすと、がれきを組み上げて作られたのだろう、小さな家がいくつも並んでいた。
 なんか、物寂しい雰囲気だ。

「静かだな」
「夜毎うるさいのは、城のまわりだけだ。日が暮れれば眠り、朝日とともに働くのが普通の生活だ」

 昔の人みたいだ。

「ミハラはまだいい。川の水と交換で物資も手に入るし、俺たちもすぐに駆けつけられる」
「アーツはそうじゃなかった?」
「そうだな。手先の器用な者が多かったが、物がない。大渓谷に阻まれてダワラの侵攻にも気付かなかった……」
「そっか……」

 ハオも後悔とかするんだろうか? 声に覇気がない。

「それでも追い払ったんだろ? 仕方ないんじゃない?」
「ギイの娘は……ダワラにいる。生きていれば、だがな」
「そんなっ……!」

 ダワラってあれだろ? 女の人を奴隷みたいに扱うって。ハルくんの両親は命懸けで逃げてきたって。お父さんは殺されたって……。
 そんなところに娘がいるなんて、ギイはいまどんな思いで故郷に戻ってるんだろう。
 助けられるなら、助けたいとは思う。
 遠征なんて言ったって俺が、戦うわけじゃないし……。
 ハオに言えば、してくれるのかな?

 でもそれでハオが死んだら……?

「そろそろ完全に日が落ちる。一気に冷えてくるから、マントの中に入ってろ」

 太陽が隠れるように双子山に落ちていく。
 稜線がくっきり見えて、俺は寒さに震えるフリをしてハオのマントの中で嗚咽を堪えた。
 

 
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