61 / 70
.遠征なんて無理っ!絶対無理っ! 11
しおりを挟む
子どものように泣いて駄々こねた感はある。ううむ。年上として恥ずかしい。
しかも嬉しくて抱き着くとか、ありえない。
「えっと、あの……。俺そろそろ寝る支度、しようかな」
「まだ日が暮れたばかりだぞ? 飯もまだだろう? それとさっきリノからパンが届いたところだ。好きだろう? リノのパンは」
あのやわらかいパン! 思い出しただけで、腹が鳴った。
「マナの身体は正直だな」
「変な言い方すんなっ!」
ってなんかエロいときに言われる言葉を言われて笑われた。
「じ、自分で食えるっ!」
「アーツに連れて行ってやるんだから、これくらいの褒美はあってもいいだろう? ほら」
何故か俺はまだハオの膝の上だ。さらに片手で拘束されている。
あれから、サイとジジが夕飯の支度をテキパキとはじめて、あれよあれよと言う間に目の前にテーブルが置かれていた。
出ようにもハオの腕とテーブルに邪魔されて、出られなかっただけだ。
しかも、なぜかハオが手ずからパンをちぎり俺の口元に運んできやがる。
「俺なんかに食べさせて何が楽しいんだよっ!」
「マナ以外に食べさせたことはない。はやく食わないと俺が全部食うぞ?」
「くそっ!」
悔しいが、リノのパンの魅力には敵わない。俺はハオの指まで噛みちぎる勢いでかぶりついた。
噛まれてもまったく痛がる様子はない。
むしろ、俺の歯のほうが痛い……っ。
仕方ないから俺はおとなしくハオの給餌を甘んじて受け入れることにした。
「そういや、なんで明日じゃダメなんだ? なんか用事あんの?」
給餌されるのは恥ずかしいけど、せっかくいっしょに飯を食うんだ。たまには会話もいいだろう。
ハオは明後日ならって言ってたけど、なんか理由があんのかな?
「その格好では、外出できないだろう?」
「……はっ! そういや俺ノーパンじゃん! 靴もねぇし」
「ノーパンがなにか知らんが、それでは馬にまたがることもできない」
そっか。なんかこの服に慣れてきたから気にしてなかったけど、たしかにこれじゃ外歩けないや。
「マナが外に出たがってると聞いて、作らせていたんだ。それがちょうど明日できあがる」
それって今日頼んだわけじゃなくて、前からってことだよな。
なんも考えずに出掛けてやるって騒いだ俺、ほんと子どもじゃん。
ハオより年上なのに……。
「あり、がとう……」
「マナのためならなんでもしてやると言っただろう? 服くらいなんということはない」
切り分けた肉を手に俺を見つめるハオに、ドキリとする。
あ、甘い……。
セリフよりも、その表情が甘すぎる。
俺は恥ずかしさを隠すために、肉を頬張った。
「ん、これなんの肉? うまっ!」
いつもの、シシやシカよりさらに淡白だけどやわらかいし臭みゼロ。ササミっぽいけど、旨みがある。
「ヘビだ」
「ヘビかぁ……ってヘビ? ヘビってあの細長くてクネクネしてるあのヘビ? 食えるんだ? うめぇな」
きっと前ならヘビって聞いたら卒倒するか吐き出してたかも。慣れてきたんだろうな。全然気にならない。むしろうまくてもう一口、ハオにねだった。
「サイ。次の狩りはヘビだ」
「かしこまりました。ちょうどインザで大蛇がでて困っていたんですよね。いやはや、マナ様のおかげでチーダは安泰ですね。クククッ」
「たまたまだろっ!」
もしかして、こういう偶然が重なってアンダーウォーカーの伝説うまれたんじゃないの?
伝説なんていい加減なもんだな。
たらふく食った上に寝不足だった俺は、ハオの膝の上でそのまま眠っていた。
子どもか。俺は!
しかも嬉しくて抱き着くとか、ありえない。
「えっと、あの……。俺そろそろ寝る支度、しようかな」
「まだ日が暮れたばかりだぞ? 飯もまだだろう? それとさっきリノからパンが届いたところだ。好きだろう? リノのパンは」
あのやわらかいパン! 思い出しただけで、腹が鳴った。
「マナの身体は正直だな」
「変な言い方すんなっ!」
ってなんかエロいときに言われる言葉を言われて笑われた。
「じ、自分で食えるっ!」
「アーツに連れて行ってやるんだから、これくらいの褒美はあってもいいだろう? ほら」
何故か俺はまだハオの膝の上だ。さらに片手で拘束されている。
あれから、サイとジジが夕飯の支度をテキパキとはじめて、あれよあれよと言う間に目の前にテーブルが置かれていた。
出ようにもハオの腕とテーブルに邪魔されて、出られなかっただけだ。
しかも、なぜかハオが手ずからパンをちぎり俺の口元に運んできやがる。
「俺なんかに食べさせて何が楽しいんだよっ!」
「マナ以外に食べさせたことはない。はやく食わないと俺が全部食うぞ?」
「くそっ!」
悔しいが、リノのパンの魅力には敵わない。俺はハオの指まで噛みちぎる勢いでかぶりついた。
噛まれてもまったく痛がる様子はない。
むしろ、俺の歯のほうが痛い……っ。
仕方ないから俺はおとなしくハオの給餌を甘んじて受け入れることにした。
「そういや、なんで明日じゃダメなんだ? なんか用事あんの?」
給餌されるのは恥ずかしいけど、せっかくいっしょに飯を食うんだ。たまには会話もいいだろう。
ハオは明後日ならって言ってたけど、なんか理由があんのかな?
「その格好では、外出できないだろう?」
「……はっ! そういや俺ノーパンじゃん! 靴もねぇし」
「ノーパンがなにか知らんが、それでは馬にまたがることもできない」
そっか。なんかこの服に慣れてきたから気にしてなかったけど、たしかにこれじゃ外歩けないや。
「マナが外に出たがってると聞いて、作らせていたんだ。それがちょうど明日できあがる」
それって今日頼んだわけじゃなくて、前からってことだよな。
なんも考えずに出掛けてやるって騒いだ俺、ほんと子どもじゃん。
ハオより年上なのに……。
「あり、がとう……」
「マナのためならなんでもしてやると言っただろう? 服くらいなんということはない」
切り分けた肉を手に俺を見つめるハオに、ドキリとする。
あ、甘い……。
セリフよりも、その表情が甘すぎる。
俺は恥ずかしさを隠すために、肉を頬張った。
「ん、これなんの肉? うまっ!」
いつもの、シシやシカよりさらに淡白だけどやわらかいし臭みゼロ。ササミっぽいけど、旨みがある。
「ヘビだ」
「ヘビかぁ……ってヘビ? ヘビってあの細長くてクネクネしてるあのヘビ? 食えるんだ? うめぇな」
きっと前ならヘビって聞いたら卒倒するか吐き出してたかも。慣れてきたんだろうな。全然気にならない。むしろうまくてもう一口、ハオにねだった。
「サイ。次の狩りはヘビだ」
「かしこまりました。ちょうどインザで大蛇がでて困っていたんですよね。いやはや、マナ様のおかげでチーダは安泰ですね。クククッ」
「たまたまだろっ!」
もしかして、こういう偶然が重なってアンダーウォーカーの伝説うまれたんじゃないの?
伝説なんていい加減なもんだな。
たらふく食った上に寝不足だった俺は、ハオの膝の上でそのまま眠っていた。
子どもか。俺は!
0
お気に入りに追加
177
あなたにおすすめの小説

婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる