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.遠征なんて無理っ!絶対無理っ! 10
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「ダメだ」
狩りから帰ってきたハオは、着替えの手を止めた。手にしていた獣の頭巾がふっとんだ。
幸い、また窓ガラスを割ることにはならず、サイが受け止めた。
「なんでダメなんだよ! ちょっとギイの里帰りに付き合うだけだろ」
ギイに聞いたら文字が書かれたものがまだ村に残ってるかもしれないという。荒れたままの故郷は寂しいからと、明日、村を見に行くという。
それに俺も連れて行ってもらうと言っただけだ。
「ダメなものはダメだ。危険すぎる」
「もうダワラの人たちはいないんだろ? それに俺だってたまには外に出たい!」
「ダワラだけが脅威ではない。獣や野党に襲われたらどうする!」
「ギイはめったにそんなこと起きないって」
「めったに起きないだけで、まったくないわけではない。とにかく、ギイとふたりで出掛けるなんて認められない」
認めるとか認めないとか、俺の自由はどこいった?
なんで俺の行き先をハオに決められなきゃなんねぇんだよ。
「俺はお前の所有物じゃないからな! 認めてもらわなくたって行くから」
最初からハオに言わずに出掛けたらよかったんだ。
ギイは昼に出るって行ってたから、ハオがいないすきに出てけばいい。
そうだ! そうしよう!
そう決意した俺に非情な言葉が聞こえてくる。
「サイ。明日の警護は厳重にしておけ」
「かしこまりました」
「あーーー! なんでだよっ! ズルいぞ!」
「マナを守るためだ。当たり前だろう?」
ハオはこの話はもう終わりだと魔王のイスにどすんと座り、ふんぞり返る。くそ偉そうな態度がよりいっそう俺を腹立たせる。
アーツにあるかもしれないんだ。転移者の残したなにかが。
それを読めば、この世界がなにかわかるかもしれない。
そしたら俺のこのざわざわした気持ち悪さに、答えが出る、はずだ。
「知りたいん、だよ……。ここがどこで、俺はなんのために、いるのか」
知ってどうなるかはわからない。
だけど、知らないままハオに囲われてるだけなんて、イヤなんだよ。
「なにも泣くことはないだろう?」
知らず涙が出ていた。
袖で雑に拭っても、また涙がこぼれてきた。
悔しい。
おそらくハオが言うとおり危険なんだろう。
ヤギの頭見ただけで、チビるほど怖かった。あんなのと遭遇したら、俺なんてあっという間に食われそう。ヤギが肉食かどうかは知らないけど。
最初の荒野だって行けども行けども建物も木すらなくて、死にかけた。
わかってる。
ぐずぐず泣く俺の身体が、ふわっと浮いた。
「な、なにするんだよっ! 離せ! どうせバカにしてるんだろ! なんも知らないくせにって」
俺を抱えたハオは、またイスに座り直した。そうすると俺はハオの膝に座ることになって、まるで子どもみたいだ。
ハオのバカ力に勝てるわけもないのに、腕を伸ばして抵抗した。
「そうではない」
ハオが手の甲で、俺の頬を拭っていく。
「明日は無理だが、明後日なら俺が連れて行ってやる。だから、泣くな……。マナが泣くと、俺も苦しい」
「……え? 行っちゃダメなんじゃないの?」
「ギイとふたりで行くのを禁じただけだ。マナを守るのも、マナを喜ばせるのも、俺の役目だ」
アーツに行ける……?
感極まった俺は思わずハオに抱きついていた。
狩りから帰ってきたハオは、着替えの手を止めた。手にしていた獣の頭巾がふっとんだ。
幸い、また窓ガラスを割ることにはならず、サイが受け止めた。
「なんでダメなんだよ! ちょっとギイの里帰りに付き合うだけだろ」
ギイに聞いたら文字が書かれたものがまだ村に残ってるかもしれないという。荒れたままの故郷は寂しいからと、明日、村を見に行くという。
それに俺も連れて行ってもらうと言っただけだ。
「ダメなものはダメだ。危険すぎる」
「もうダワラの人たちはいないんだろ? それに俺だってたまには外に出たい!」
「ダワラだけが脅威ではない。獣や野党に襲われたらどうする!」
「ギイはめったにそんなこと起きないって」
「めったに起きないだけで、まったくないわけではない。とにかく、ギイとふたりで出掛けるなんて認められない」
認めるとか認めないとか、俺の自由はどこいった?
なんで俺の行き先をハオに決められなきゃなんねぇんだよ。
「俺はお前の所有物じゃないからな! 認めてもらわなくたって行くから」
最初からハオに言わずに出掛けたらよかったんだ。
ギイは昼に出るって行ってたから、ハオがいないすきに出てけばいい。
そうだ! そうしよう!
そう決意した俺に非情な言葉が聞こえてくる。
「サイ。明日の警護は厳重にしておけ」
「かしこまりました」
「あーーー! なんでだよっ! ズルいぞ!」
「マナを守るためだ。当たり前だろう?」
ハオはこの話はもう終わりだと魔王のイスにどすんと座り、ふんぞり返る。くそ偉そうな態度がよりいっそう俺を腹立たせる。
アーツにあるかもしれないんだ。転移者の残したなにかが。
それを読めば、この世界がなにかわかるかもしれない。
そしたら俺のこのざわざわした気持ち悪さに、答えが出る、はずだ。
「知りたいん、だよ……。ここがどこで、俺はなんのために、いるのか」
知ってどうなるかはわからない。
だけど、知らないままハオに囲われてるだけなんて、イヤなんだよ。
「なにも泣くことはないだろう?」
知らず涙が出ていた。
袖で雑に拭っても、また涙がこぼれてきた。
悔しい。
おそらくハオが言うとおり危険なんだろう。
ヤギの頭見ただけで、チビるほど怖かった。あんなのと遭遇したら、俺なんてあっという間に食われそう。ヤギが肉食かどうかは知らないけど。
最初の荒野だって行けども行けども建物も木すらなくて、死にかけた。
わかってる。
ぐずぐず泣く俺の身体が、ふわっと浮いた。
「な、なにするんだよっ! 離せ! どうせバカにしてるんだろ! なんも知らないくせにって」
俺を抱えたハオは、またイスに座り直した。そうすると俺はハオの膝に座ることになって、まるで子どもみたいだ。
ハオのバカ力に勝てるわけもないのに、腕を伸ばして抵抗した。
「そうではない」
ハオが手の甲で、俺の頬を拭っていく。
「明日は無理だが、明後日なら俺が連れて行ってやる。だから、泣くな……。マナが泣くと、俺も苦しい」
「……え? 行っちゃダメなんじゃないの?」
「ギイとふたりで行くのを禁じただけだ。マナを守るのも、マナを喜ばせるのも、俺の役目だ」
アーツに行ける……?
感極まった俺は思わずハオに抱きついていた。
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