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.遠征なんて無理っ!絶対無理っ! 9
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くそ……! ハオのせいで眠れなかった。
別に、襲われたわけじゃない。
ただ、耳元で「好きだ」って言い続けられたからだ。しかもそのまま寝落ちしやがった。
おかげで今朝も寝不足をジジにからかわれる羽目になった。
***
「やっぱりアクリルっぽいんだよなぁ……」
朝飯を食べ終えたところで、狩りにでかけたハオと入れ替わりに工事が始まった。
ガラスではない透明な板を触らせてもらったけど、質感や音はプラスティックっぽい。
発掘したっていうんだから、やっぱりオーパーツの類なんだろう。
古代文明が栄えていたとか?
……ロマンではあるけどなんか解せない。
あと、考えるとちょっと気持ち悪くなる。
吐きそうっていうか、背筋がぞくぞくする気持ち悪さ。
やめよう。
ハオのこともオーパーツのことも、とりあえずいったん置いておくことにした。
そうすると、結局やることのない俺……。
大工っぽいおっさんたちが働いているのを、横で見ていたら、めっちゃ邪魔そうな顔をされた。
「暇なら手伝いやすか?」
「なんか手伝えること、ある?」
「……ないでやすな」
く、ここでも俺は役立たずだった。
「みんな働きもんだよな」
「まぁそうでなきゃ、食っていんでやすからね。働き次第で飯がもらえるんですわ」
「共産主義か」
首領による独裁政権で共産主義。その割にみんな仕事きちんとしてるってことは、割り振りがしっかりしてるからだろうな。じゃなきゃ、革命が起きる。
あ、そうか……。割り振りに納得いかなくて抜けていったのが、ダワラの人たちか。
自作の地図を広げてみる。
ここから、北の森まで徒歩で二時間。
ダワラまでの距離はだいたい五倍くらいかなぁ。半日近くかかる計算になるけど、その手前には大渓谷がある。
「なぁ、大渓谷って橋はあんの?」
「へぇ、ありますよ。それも人が何人も通れるようなでっけぇ橋でやす」
いままさに大工仕事をしてるおっさんらの手にあるのは、日干しレンガと泥だ。あれがコンクリートや接着剤の代わりなわけだ。
橋も、そんな感じなんだろうか?
大渓谷っていうけど、幅はない、とか?
「詳しいんだな」
「オラは、大渓谷の西、橋の近くのアーツ村出身でやんすからね」
おお、新しい地名だ。地図に書いておこう。
「へぇ。字がうまいでやんすね」
「読めるの?」
「えぇまぁ。村ではガキの頃に字の勉強させられるんでやんすよ。ダワラに制圧されるまでは、のどかな村でやしたからね」
「制圧……」
男――ギイという名前だった――はダワラの制圧前にアーツ村から出稼ぎに来ていた。
ハオが首領になった直後、突然ダワラが攻めてきた。ギイが戻ると、村の女たちはみんな連れ去られた後で、残党たちが村人たちをこき使っていた。
見つからないようチーダに戻ったギイの懇願により、首領になったハオが残党を追い出したが、いまも村は荒れたままだそうだ。
以来、大渓谷はチーダとダワラの境界になってる言う。
「これは、なんて読むんで?」
一通り説明してくれたギイが、地図を指差した。
ダワラの上、双子山のふもとあたり。
「西の楽園。って言っても、あるかどうかは知らないし、場所もはっきりしないけどな」
「へぇ……。村で似たような文字を見たことがありやす。誰も読めんで、文字ではなく記号かと思ってやしたが」
「え? それってもしかして」
過去のアンダーウォーカー、いや、異世界トリップした人が残したものかも!
別に、襲われたわけじゃない。
ただ、耳元で「好きだ」って言い続けられたからだ。しかもそのまま寝落ちしやがった。
おかげで今朝も寝不足をジジにからかわれる羽目になった。
***
「やっぱりアクリルっぽいんだよなぁ……」
朝飯を食べ終えたところで、狩りにでかけたハオと入れ替わりに工事が始まった。
ガラスではない透明な板を触らせてもらったけど、質感や音はプラスティックっぽい。
発掘したっていうんだから、やっぱりオーパーツの類なんだろう。
古代文明が栄えていたとか?
……ロマンではあるけどなんか解せない。
あと、考えるとちょっと気持ち悪くなる。
吐きそうっていうか、背筋がぞくぞくする気持ち悪さ。
やめよう。
ハオのこともオーパーツのことも、とりあえずいったん置いておくことにした。
そうすると、結局やることのない俺……。
大工っぽいおっさんたちが働いているのを、横で見ていたら、めっちゃ邪魔そうな顔をされた。
「暇なら手伝いやすか?」
「なんか手伝えること、ある?」
「……ないでやすな」
く、ここでも俺は役立たずだった。
「みんな働きもんだよな」
「まぁそうでなきゃ、食っていんでやすからね。働き次第で飯がもらえるんですわ」
「共産主義か」
首領による独裁政権で共産主義。その割にみんな仕事きちんとしてるってことは、割り振りがしっかりしてるからだろうな。じゃなきゃ、革命が起きる。
あ、そうか……。割り振りに納得いかなくて抜けていったのが、ダワラの人たちか。
自作の地図を広げてみる。
ここから、北の森まで徒歩で二時間。
ダワラまでの距離はだいたい五倍くらいかなぁ。半日近くかかる計算になるけど、その手前には大渓谷がある。
「なぁ、大渓谷って橋はあんの?」
「へぇ、ありますよ。それも人が何人も通れるようなでっけぇ橋でやす」
いままさに大工仕事をしてるおっさんらの手にあるのは、日干しレンガと泥だ。あれがコンクリートや接着剤の代わりなわけだ。
橋も、そんな感じなんだろうか?
大渓谷っていうけど、幅はない、とか?
「詳しいんだな」
「オラは、大渓谷の西、橋の近くのアーツ村出身でやんすからね」
おお、新しい地名だ。地図に書いておこう。
「へぇ。字がうまいでやんすね」
「読めるの?」
「えぇまぁ。村ではガキの頃に字の勉強させられるんでやんすよ。ダワラに制圧されるまでは、のどかな村でやしたからね」
「制圧……」
男――ギイという名前だった――はダワラの制圧前にアーツ村から出稼ぎに来ていた。
ハオが首領になった直後、突然ダワラが攻めてきた。ギイが戻ると、村の女たちはみんな連れ去られた後で、残党たちが村人たちをこき使っていた。
見つからないようチーダに戻ったギイの懇願により、首領になったハオが残党を追い出したが、いまも村は荒れたままだそうだ。
以来、大渓谷はチーダとダワラの境界になってる言う。
「これは、なんて読むんで?」
一通り説明してくれたギイが、地図を指差した。
ダワラの上、双子山のふもとあたり。
「西の楽園。って言っても、あるかどうかは知らないし、場所もはっきりしないけどな」
「へぇ……。村で似たような文字を見たことがありやす。誰も読めんで、文字ではなく記号かと思ってやしたが」
「え? それってもしかして」
過去のアンダーウォーカー、いや、異世界トリップした人が残したものかも!
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