世紀末な転移先で覇王に捕まりました〜この世界で生き抜くなんて無理っ!絶対無理っ!〜

三谷玲

文字の大きさ
上 下
58 / 70

.遠征なんて無理っ!絶対無理っ! 8

しおりを挟む
「で、女の園にはなにしに行ってたんだ?」

 窓から遠ざけられて下ろされると、ハオが怖い顔して見下ろしていた。
 いや、別にどこに行こうと俺の勝手なんだけど……。

「……リノに聞きたいことがあったんだよ。別にいいだろ?」
「子作りに行ったわけじゃないんだな?」
「俺なんて誰も相手にしてくれねぇよっ!」

 傷に塩を塗るようなことを言うんじゃない。細いだとか白いだとかさんざんだ。
 今日だって誰も俺なんか見向きもしなかったんだからな……っ。

「聞きたいことは聞けたのか?」
「んー。わかったような、わからんような。結局俺はなにしたらいいわけ?」
「好きなようにしたらいい」

 それじゃ今と変わらないじゃん。
 ただここにいるだけで、ただ飯食らいでいていいわけ?
 いいわけないよなぁ……。

 ……?
 あれ? 俺いつの間に、アンダーウォーカーとしてなにかしようとしてるんだ?
 ここから逃げ出したっていいのに。
 でもここ出たからって俺がなにかできるわけじゃないし、野垂れ死ぬだけだし、それならなにか役立ちたいって思うのは、間違ってない、よな?

「クククッ。マナ様にアンダーウォーカーとしての自覚が芽生えてらしたのは、喜ばしいことですね」
「サイっ! 違うからっ! 別に俺はハオのためになんかしたいと思ってるわけじゃないからなっ」
「なるほど。ハオ様のために力になりたいと思われているわけですねぇ」
「違うって言ってるだろっ!」

 違うって言ってるのに、サイはまだ笑ってやがる。こいつほんとにムカつくやつだな。
 俺がサイに食って掛かっていると、ハオが割って入ってきた。

「うわっ! なにすんだよ」

 だから、俺を呼びよせるのに抱き寄せる必要はないんだから、ほいほい抱えるんじゃないっ!
 せっかく下ろしてもらったのに、またハオの腕の中に逆戻りじゃないか。
 しかも脇腹から抱えられて、持ち上げられた。
 下から、じっと見上げられる。

「な、なんだよ……」
「俺はマナがそばにいればいい」
「なにそれ。それじゃまるで俺のこと好きみたいじゃんっ!」

 俺、っていうかアンダーウォーカーを手に入れるのが目的のはずだろ?
 そこに気持ちなんてないはずだろ?
 そうだよな?

 俺の言葉にハオは何かに気付いたように目を丸くしてから、納得した顔で目を細めた。

「なるほど。これが心を手に入れるということか……。俺の心は、マナ。お前のものだ」
「……は?」
「好きだ、マナ。俺は、お前のことが好きだ」

 や、やめてくれっ! そんな目で見るなっ!
 なんだよ、その顔……っ!
 お前は、この世界で一番強い覇王じゃなかったのか?
 俺なんかに、熱を上げてる場合じゃないだろ?

「クククッ。マナ様もまんざらではなさそうで、安心ですね」

 やめろ。俺を分析するんじゃないっ!
 告白なんて慣れてないことされたから、顔が赤くなってるだけだっ!

「ってハオっ! 下ろせっ! キスしようとするんじゃないっ!」
「それ以上のことは、もう済ませているのだからこれくらいはかまわないだろう?」
「無理っ! 絶対無理っ! キスはダメっ!」

 ってまるで風俗のお姉さんみたいなことを言ってしまった。
 なんとか身体を反らせてもがいてみせたら、諦めてくれたハオが耳元で囁いた。

「仕方ない。いつか、お前の心を手に入れたときには、マナからしてくれ」

 ってないから、絶対ないからっ!

 ってついでみたいに耳にキスするのはやめろっ!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

カランコエの咲く所で

mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。 しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。 次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。 それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。 だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。 そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

イージーモードな俺の人生を狂わせたアイツ

世咲
BL
ノンケのイケメン大学生が恋する乙女になるまで。 執着系社会人×イケメン大学生

処理中です...