52 / 70
.遠征なんて無理っ!絶対無理っ! 2
しおりを挟む
「これはチーダ、こちらはダワラ。似ていますよね?」
サイはそう言って俺の書いた地図と前に見せてもらった歴史書を並べる。
確かに似てる。
歴史書のほうはカーブのまったくない直線だけで書かれているけど、たしかに「チ」は「チ」に見えなくもない。漢字の「干」みたいだけど。
「ってことは、カタカナなのか! もしかして、ユウに教わった?」
「さぁどうでしょう? それよりも昔のものもありますし」
「なら、その前とかその前の前のアンダーウォーカーが教えたのかもな!」
あらためてサイの歴史書を開いてみる。
読める! 読めるぞ!
見覚えはあると思ったけど、カタカナとはなぁ。
後半のサイが書き足したものを読むと「ハオ」とか「マナ」って言葉が出てきた。
「お、おう……。俺のことも書かれるのか」
「もちろんです。後世に伝えなければならないいけませんからね」
教科書に載る人の気持ちがわかった。
むっちゃ、恥ずかしいな。
ぱらりとめくると「沐浴」のページがあった。ただの風呂なのに仰々しい言葉が並んでいる。
身を清めるだとか、覇者とアンダーウォーカーの絆を深めるために必要、とか。いやいや、そんなんじゃないから。
と読んでいたら、特に重要なこととして書かれている文字を見て俺はバンと本を閉じた。
「っておいっ! 沐浴の儀式のところに要らんこと、書いてんじゃねぇよ! 子種はいらねぇから!」
あのとき、ハオに煽られてふたりで射精したことを、がっつり書かれていた。
くそ、サイめっ!
違うってわかってて書いてやがる。
投げつけてやろうと思って振り上げた瞬間、高いところからすっと取り上げられてしまった。
「取り扱いには気をつけてくださいよ。これは私たち覇者の右腕にとっては大事な宝物なんですから」
「お前があんな事、書くからいけないんだろっ!」
「クククッ」
笑ってごまかしやがった! ああムカつく!
「そんなことより、この地図は役に立ちそうです」
「そう? 実際見てきたわけじゃねぇし、距離感もよくわかんないから合ってるかわかんねぇけどな。どうせなら、行ってみたいなぁ」
俺が知ってるのはこの城だけ。それもめちゃくちゃ限られた範囲しか知らない。
ここから見える景色だって全貌とはほど遠い。
伊能忠敬になりたいわけじゃないけど、想像で描く地図は心もとない。
「外に出たいんですか?」
「ずっと部屋の中にいたら飽きるじゃん。それにもし追い出されたときに、どこに行けばいいかも知っておきたいしな」
「追い出すなんてことは万が一にもありませんよ。そうですか。アンダーウォーカーは外には出たがらない生き物だと聞いていたので、驚きました」
「それはたぶんユウだけじゃないか? 女の子だし、危険なところには行きたがらないだろ」
って、俺だって危険なところは勘弁して欲しいけど。
「なら、今日ハオ様と一緒にお出かけになればよかったですね。そこの窓の素材を掘り起こしに行っているんですよ」
「ああ、ハオが割ったやつか。素材を掘り起こすの? 地面の下にあるってこと?」
「えぇ。地下にはさまざまなものが埋まっているんです。女の園の天井に使われている透明の板もそのひとつですよ。そういった地下で発見された、我々には計り知れないものを、アンダーウォーカーの叡智と呼んでいます」
「アンダーウォーカーの叡智、ねぇ……」
あの天井が一体なんで出来てるのか、俺にもわかんねぇよ。ガラスじゃなくて透明で、しかも強度があるものって……アクリル板? 巨大水槽とかで使うような。
オーパーツってやつかもな。
実は発達した超古代文明が滅亡して、その上に人が住みついたっていう。
まさかな。
サイはそう言って俺の書いた地図と前に見せてもらった歴史書を並べる。
確かに似てる。
歴史書のほうはカーブのまったくない直線だけで書かれているけど、たしかに「チ」は「チ」に見えなくもない。漢字の「干」みたいだけど。
「ってことは、カタカナなのか! もしかして、ユウに教わった?」
「さぁどうでしょう? それよりも昔のものもありますし」
「なら、その前とかその前の前のアンダーウォーカーが教えたのかもな!」
あらためてサイの歴史書を開いてみる。
読める! 読めるぞ!
見覚えはあると思ったけど、カタカナとはなぁ。
後半のサイが書き足したものを読むと「ハオ」とか「マナ」って言葉が出てきた。
「お、おう……。俺のことも書かれるのか」
「もちろんです。後世に伝えなければならないいけませんからね」
教科書に載る人の気持ちがわかった。
むっちゃ、恥ずかしいな。
ぱらりとめくると「沐浴」のページがあった。ただの風呂なのに仰々しい言葉が並んでいる。
身を清めるだとか、覇者とアンダーウォーカーの絆を深めるために必要、とか。いやいや、そんなんじゃないから。
と読んでいたら、特に重要なこととして書かれている文字を見て俺はバンと本を閉じた。
「っておいっ! 沐浴の儀式のところに要らんこと、書いてんじゃねぇよ! 子種はいらねぇから!」
あのとき、ハオに煽られてふたりで射精したことを、がっつり書かれていた。
くそ、サイめっ!
違うってわかってて書いてやがる。
投げつけてやろうと思って振り上げた瞬間、高いところからすっと取り上げられてしまった。
「取り扱いには気をつけてくださいよ。これは私たち覇者の右腕にとっては大事な宝物なんですから」
「お前があんな事、書くからいけないんだろっ!」
「クククッ」
笑ってごまかしやがった! ああムカつく!
「そんなことより、この地図は役に立ちそうです」
「そう? 実際見てきたわけじゃねぇし、距離感もよくわかんないから合ってるかわかんねぇけどな。どうせなら、行ってみたいなぁ」
俺が知ってるのはこの城だけ。それもめちゃくちゃ限られた範囲しか知らない。
ここから見える景色だって全貌とはほど遠い。
伊能忠敬になりたいわけじゃないけど、想像で描く地図は心もとない。
「外に出たいんですか?」
「ずっと部屋の中にいたら飽きるじゃん。それにもし追い出されたときに、どこに行けばいいかも知っておきたいしな」
「追い出すなんてことは万が一にもありませんよ。そうですか。アンダーウォーカーは外には出たがらない生き物だと聞いていたので、驚きました」
「それはたぶんユウだけじゃないか? 女の子だし、危険なところには行きたがらないだろ」
って、俺だって危険なところは勘弁して欲しいけど。
「なら、今日ハオ様と一緒にお出かけになればよかったですね。そこの窓の素材を掘り起こしに行っているんですよ」
「ああ、ハオが割ったやつか。素材を掘り起こすの? 地面の下にあるってこと?」
「えぇ。地下にはさまざまなものが埋まっているんです。女の園の天井に使われている透明の板もそのひとつですよ。そういった地下で発見された、我々には計り知れないものを、アンダーウォーカーの叡智と呼んでいます」
「アンダーウォーカーの叡智、ねぇ……」
あの天井が一体なんで出来てるのか、俺にもわかんねぇよ。ガラスじゃなくて透明で、しかも強度があるものって……アクリル板? 巨大水槽とかで使うような。
オーパーツってやつかもな。
実は発達した超古代文明が滅亡して、その上に人が住みついたっていう。
まさかな。
0
お気に入りに追加
178
あなたにおすすめの小説
真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる