世紀末な転移先で覇王に捕まりました〜この世界で生き抜くなんて無理っ!絶対無理っ!〜

三谷玲

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.遠征なんて無理っ!絶対無理っ! 1

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 この世界に来てからひと月が過ぎようとしていた。
 まだひと月なのかもうひと月なのか。
 あまりに怒涛の日々だったから、ここ数日はやけに静かだ。

 固いパンにも慣れてきたけど、そろそろ米も食いたい。米ってあんのかな?
 腹壊してたときに食べてたおかゆが、米か麦かなんて、まったく思い出せない。

「コメはありますよ」

 ハオに聞いたらまたどこかから奪ってきそうなので、まずはサイに聞いてみた。

「やっぱり貴重だったりする?」
「ムギよりは育ちにくいですが、東のインザには沼地が広がっていてそこでは多くとれますね」
「水田も沼みたいなもんだもんな。子どもの頃、田植え体験したときどろんこになったな」

 よかった。米が食えない自体にはならなさそう。たまにでもいいから、食いたい。
 そういや、人の名前は二文字だけれど、地名は三文字が多いな。これも、決まりなんだろうか?

「なぁ、地図ってないの?」
「昔はあったらしいのですが、今はありませんね」
「そっか。じゃあ、あとで紙と書くもの貸してくれない? いろんな地名聞いたけど覚えらんねぇから」

 サイは「あると助かるのでむしろこちらからお願いします。作ろうと思ってはいたのですが、なにぶん時間がなくて」と、紙と筆を用意してくれた。

「なんの毛だろ?」
「ウマです」
「馬がいんの? うわ、見たいっ!」
「今度、ハオ様に頼むといいですよ。ハオ様の愛馬はそれは見事ですから」

 まさか、あのシカ並にデカいんじゃないだろうな? でも馬はいいよなぁ。。
 乗馬なんてしたことないけど、今度乗せてもらえないかなぁ。ちょっと憧れなんだよな。

 そんなわけで、俺はジジやサイに聞きながら、ここいら一帯の地図を作ることになった。
 毎日することなくて暇だったから、仕事ができたのはちょっと嬉しい。

 チーダはこの世界の真ん中よりちょっと西。
 東から北を回って西の双子山まで山脈に囲まれている。
 北の森までは徒歩で二時間って言ってたから、結構近い。といっても、それは森の入口で山脈まではその何倍もあるらしい。
 東にはインザの沼があって、西にはミハラの渓谷。きれいな川の水が流れているところだ。
 そのさらに西には大渓谷。
 だれも下りたことはないらしい。
 一応、橋があるけど、その大渓谷がダワラとの境界になっている。
 そのダワラは双子山のふもと、酸の海の近くに拠点があるんだって。

「そういや、西には楽園があるって」
「誰も見たことも足を踏み入れたこともありませんが、そう言い伝えられています」
「ダワラのやつらは、百年くらい前に楽園を目指して西に行ったが、見つけられてはおらんさね。やつらより先にハオ様に見つけてもらわな」

 楽園ってどんなところなんだろう? 
 想像もつかない。
 俺は空いている適当なところに「楽園」と書き込んだ。

「マナ様、その字はなんと? ほかはわかりますが」
「え? ほかは読めるの?」
「わかるように書いてくださったんじゃないんですか?」

 どういうこと?
 
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