39 / 70
.女に襲われるなんて無理っ!絶対無理っ! 1
しおりを挟む
ヘダ襲撃の翌日。
すっかり掃除は済んだものの、破れた窓はどうにもならない。
応急処置で当てられたトタンのような板はところどころに隙間があって、俺は仕方なく、仕方なくハオの腕の中で暖を取って眠っていた。
眠りが浅いのは寒いせいであって、決してケツにあたる硬いものにぞわっとしたからじゃない。絶対違う。
仕事があると早起きして出ていったハオと入れ替わりに、ジジとその息子レンが朝食をもってやってきた。
「おや、マナ様寝不足そうでさぁね。昼間のアレだけじゃ物足りなかったんで?」
「ちげぇよ! 寒かったんだよっ! それよりなんでレンもいるの?」
ジジの軽口にいっしゅんドキリとしたが、それよりも隣にいるレンのほうが気になった。
「マナ様聞いてくださいよ! 今日がオレの子作りの日なんっすよ! 昨日の狩りでヤギを獲ったんで、土産にするんっすよ! ヒャッハー! これでオレも父親っすよ」
絶好調なレンの手には、昨日のハオの頭巾より一回りちいさなヤギ頭があった。うわ、こわっ。
「ハオ様には負けるっすけどね。まさか着いたそうそう獲物を捕らえるなんてさすがっすよ」
日暮れまで戻ってこないと思っていたハオが、あんなに早くもどってこれたのはこれが理由だ。
北の森までは徒歩で二時間近くあるらしい。朝から出掛けたとしても、狩りに数時間かかるから往復で半日掛ると聞いていたのに、ハオは着いたそうそうシカを捕らえ、すぐさま戻ってきたのだそうだ。
そのシカはいま、ハオを含め男たちでさばいているらしい。
俺も来るかと言われたけど、血を見るのがつらいので遠慮した。
「で、なに? 自慢しに来たわけ?」
「自慢? アンダーウォーカーでも子作りしたいんっすか?」
「……お前、俺をなんだと思ってるわけ? ただの人間、ただの男だよ? 女の人抱きたいに決まってるだろ」
とはいえ、これだけ力至上主義な世界だ。俺がレンの言う子作りをできるとは到底思えない。でも夢見たっていいじゃないか。
俺はモソモソとパンを食べながら、浮かれるレンを睨んだ。
闘技場での褒美ってことだったよな?
そんな強そうに見えないのに、俺をつまみあげたり、腕、切れるんだ。
そういや、レンに負けたやつは昨日の襲撃犯のひとりだったな。
「あいつはどうなったの? イオだっけ?」
「父ちゃんに残った腕も切られて両腕なしになって、追い出されましたよ。働けないっすらかね。でも、助かったっす。あいつちょっと気持ち悪いんっすよね。いつも俺の後ろ付きまとってて、しまいには決闘申し込んできて……」
「ヒヒャヒャッ! ……あんな軟弱男に息子はやらんさね」
気持ち悪いと身震いするレンに、ジジの声は届かなかったようだ。……もしかしてイオってレンのこと好きだった、とか? ううん。この世界さっぱりわからん。
ジジだってほとんど無傷。こんな弱そうなジジイなのに……。わからん。
強く見えないのは、遺伝なのかも。
「あ! そうそう! よかったら、マナ様もいっしょに行かないかって誘いに来たんっすよ。俺の母ちゃんもいるし」
「どこへ?」
「そりゃ決まってるじゃないっすか、女の園っすよ!」
すっかり掃除は済んだものの、破れた窓はどうにもならない。
応急処置で当てられたトタンのような板はところどころに隙間があって、俺は仕方なく、仕方なくハオの腕の中で暖を取って眠っていた。
眠りが浅いのは寒いせいであって、決してケツにあたる硬いものにぞわっとしたからじゃない。絶対違う。
仕事があると早起きして出ていったハオと入れ替わりに、ジジとその息子レンが朝食をもってやってきた。
「おや、マナ様寝不足そうでさぁね。昼間のアレだけじゃ物足りなかったんで?」
「ちげぇよ! 寒かったんだよっ! それよりなんでレンもいるの?」
ジジの軽口にいっしゅんドキリとしたが、それよりも隣にいるレンのほうが気になった。
「マナ様聞いてくださいよ! 今日がオレの子作りの日なんっすよ! 昨日の狩りでヤギを獲ったんで、土産にするんっすよ! ヒャッハー! これでオレも父親っすよ」
絶好調なレンの手には、昨日のハオの頭巾より一回りちいさなヤギ頭があった。うわ、こわっ。
「ハオ様には負けるっすけどね。まさか着いたそうそう獲物を捕らえるなんてさすがっすよ」
日暮れまで戻ってこないと思っていたハオが、あんなに早くもどってこれたのはこれが理由だ。
北の森までは徒歩で二時間近くあるらしい。朝から出掛けたとしても、狩りに数時間かかるから往復で半日掛ると聞いていたのに、ハオは着いたそうそうシカを捕らえ、すぐさま戻ってきたのだそうだ。
そのシカはいま、ハオを含め男たちでさばいているらしい。
俺も来るかと言われたけど、血を見るのがつらいので遠慮した。
「で、なに? 自慢しに来たわけ?」
「自慢? アンダーウォーカーでも子作りしたいんっすか?」
「……お前、俺をなんだと思ってるわけ? ただの人間、ただの男だよ? 女の人抱きたいに決まってるだろ」
とはいえ、これだけ力至上主義な世界だ。俺がレンの言う子作りをできるとは到底思えない。でも夢見たっていいじゃないか。
俺はモソモソとパンを食べながら、浮かれるレンを睨んだ。
闘技場での褒美ってことだったよな?
そんな強そうに見えないのに、俺をつまみあげたり、腕、切れるんだ。
そういや、レンに負けたやつは昨日の襲撃犯のひとりだったな。
「あいつはどうなったの? イオだっけ?」
「父ちゃんに残った腕も切られて両腕なしになって、追い出されましたよ。働けないっすらかね。でも、助かったっす。あいつちょっと気持ち悪いんっすよね。いつも俺の後ろ付きまとってて、しまいには決闘申し込んできて……」
「ヒヒャヒャッ! ……あんな軟弱男に息子はやらんさね」
気持ち悪いと身震いするレンに、ジジの声は届かなかったようだ。……もしかしてイオってレンのこと好きだった、とか? ううん。この世界さっぱりわからん。
ジジだってほとんど無傷。こんな弱そうなジジイなのに……。わからん。
強く見えないのは、遺伝なのかも。
「あ! そうそう! よかったら、マナ様もいっしょに行かないかって誘いに来たんっすよ。俺の母ちゃんもいるし」
「どこへ?」
「そりゃ決まってるじゃないっすか、女の園っすよ!」
0
お気に入りに追加
177
あなたにおすすめの小説
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

狂わせたのは君なのに
白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!

キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる