世紀末な転移先で覇王に捕まりました〜この世界で生き抜くなんて無理っ!絶対無理っ!〜

三谷玲

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.女に襲われるなんて無理っ!絶対無理っ! 1

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 ヘダ襲撃の翌日。
 すっかり掃除は済んだものの、破れた窓はどうにもならない。
 応急処置で当てられたトタンのような板はところどころに隙間があって、俺は仕方なく、仕方なくハオの腕の中で暖を取って眠っていた。
 眠りが浅いのは寒いせいであって、決してケツにあたる硬いものにぞわっとしたからじゃない。絶対違う。

 仕事があると早起きして出ていったハオと入れ替わりに、ジジとその息子レンが朝食をもってやってきた。

「おや、マナ様寝不足そうでさぁね。昼間のアレだけじゃ物足りなかったんで?」
「ちげぇよ! 寒かったんだよっ! それよりなんでレンもいるの?」

 ジジの軽口にいっしゅんドキリとしたが、それよりも隣にいるレンのほうが気になった。

「マナ様聞いてくださいよ! 今日がオレの子作りの日なんっすよ! 昨日の狩りでヤギを獲ったんで、土産にするんっすよ! ヒャッハー! これでオレも父親っすよ」

 絶好調なレンの手には、昨日のハオの頭巾より一回りちいさなヤギ頭があった。うわ、こわっ。

「ハオ様には負けるっすけどね。まさか着いたそうそう獲物を捕らえるなんてさすがっすよ」

 日暮れまで戻ってこないと思っていたハオが、あんなに早くもどってこれたのはこれが理由だ。
 北の森までは徒歩で二時間近くあるらしい。朝から出掛けたとしても、狩りに数時間かかるから往復で半日掛ると聞いていたのに、ハオは着いたそうそうシカを捕らえ、すぐさま戻ってきたのだそうだ。
 そのシカはいま、ハオを含め男たちでさばいているらしい。
 俺も来るかと言われたけど、血を見るのがつらいので遠慮した。

「で、なに? 自慢しに来たわけ?」
「自慢? アンダーウォーカーでも子作りしたいんっすか?」
「……お前、俺をなんだと思ってるわけ? ただの人間、ただの男だよ? 女の人抱きたいに決まってるだろ」

 とはいえ、これだけ力至上主義な世界だ。俺がレンの言う子作りをできるとは到底思えない。でも夢見たっていいじゃないか。
 俺はモソモソとパンを食べながら、浮かれるレンを睨んだ。
 闘技場での褒美ってことだったよな?
 そんな強そうに見えないのに、俺をつまみあげたり、腕、切れるんだ。
 そういや、レンに負けたやつは昨日の襲撃犯のひとりだったな。

「あいつはどうなったの? イオだっけ?」
「父ちゃんに残った腕も切られて両腕なしになって、追い出されましたよ。働けないっすらかね。でも、助かったっす。あいつちょっと気持ち悪いんっすよね。いつも俺の後ろ付きまとってて、しまいには決闘申し込んできて……」
「ヒヒャヒャッ! ……あんな軟弱男に息子はやらんさね」

 気持ち悪いと身震いするレンに、ジジの声は届かなかったようだ。……もしかしてイオってレンのこと好きだった、とか? ううん。この世界さっぱりわからん。
 ジジだってほとんど無傷。こんな弱そうなジジイなのに……。わからん。
 強く見えないのは、遺伝なのかも。

「あ! そうそう! よかったら、マナ様もいっしょに行かないかって誘いに来たんっすよ。俺の母ちゃんもいるし」
「どこへ?」
「そりゃ決まってるじゃないっすか、女の園っすよ!」
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