世紀末な転移先で覇王に捕まりました〜この世界で生き抜くなんて無理っ!絶対無理っ!〜

三谷玲

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.争いごとなんて無理っ!絶対無理っ! 10

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 風呂事件以降、どうも思考が下を向いてしまう。
 俺がぼんやりと考え込んでいると、ハオもなにやら考え込んでいた。
 なにか気付いたのか。ハオはジジが掃除してくれたおかげで、ガラス片のなくなった床に俺をおろした。

「わかった」
「へ? なにが? えっ?」

 ビリビリと聞き覚えのある音がして、俺の服はまたしてもふたつにわかれていた。

「なにすんだよっ! 布だって貴重なもんだろっ!」

 怒るべきことはそこじゃない気もするけど、ハオの破りグセは早めに直しておかないと。いくら新しい服を用意してくれても、追いつかない。

「……次からは破らないようにする」
「そうしてくれ」

 ってまた服破かれる前提で返事したらダメじゃない?
 と、俺が後悔していると、ハオが跪いてヤギ頭を押し付けてきた。

「なにしてんの? 角が痛いんだけど」
「あぁ」

 無造作に脱ぎ捨てたヤギ頭は見事にこちらを向いていて、さらし首みたいで怖い。声にならない悲鳴をあげてる俺は、次の瞬間甲高い悲鳴をあげた。

「ひぃあぁぁっ、な、なにして、ハオ、やめっ、……くすぐった、いっ、ひゃぁっ!」
「舐めれば治るんだろう?」
「そ、うだけ、ど……そう、じゃなくて、っ!」

 言ったけど! 言ったけど!
 比喩……なんて、わかんねぇのか!
 ハオが俺の腹にできた、ちいさな傷を舐めはじめた。
 しかもがっちりホールドされて逃げられない。
 べろりと熱い舌が、隅々まで舐めていく。
 へその下から、脇腹、みぞおち。すこし痩せたせいで浮き出た肋骨は、くすぐったさの中にぞわりとして、変な声がでてしまう。

「んアッ、や、そこ、違っ、わ、バカっ、や、っ、んっ」

 調子に乗ったハオが次に触れたのは、乳首だった。

「そこ、ケガして、ないっ! ひ、ぁっ、ぐりぐり、しないで、やめ、っ……! サイっ、」

 俺がいくら言っても止めないから、サイに助けを求めた。だって俺の力じゃ全然びくともしないんだよ。

 なのにサイの野郎。

「見られるのはお好きじゃありませんでしたね。どうぞ、ごゆっくり。それだけ会話できれば、ハオ様はもう完全に正気にお戻りですから抱き潰される心配もありませんの。こちらも後始末がありますので、失礼しますね。クククッ」

 ってジジを連れて出ていきやがった!

 って無理っ! 無理っ!
 乳首、舐めんなっ!
 開いちゃいけない扉、開いちゃったらどうすんだよっ!

「なかなか治らないな」
「な、おるわけ、ねぇだろっ……! あっ、乳首、は、ケガしてねぇ、っ! ひぁんっ、噛、むなぁっ」

 
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