世紀末な転移先で覇王に捕まりました〜この世界で生き抜くなんて無理っ!絶対無理っ!〜

三谷玲

文字の大きさ
上 下
31 / 70

.争いごとなんて無理っ!絶対無理っ! 8

しおりを挟む
「マナ様ぁ、ご無事でさね?」
「ジジ? 今の俺見て無事だと思うわけ? うぇっ、また吐きそう……っ」

 ジジも無事だったのはよかった。けど口開いたら臭気吸い込むし、吐いたものと血が口の中でまじって、気持ち悪いったらない。
 俺がげーげー吐いてるのに、俺を抱えた獣は離そうともしない。
 あ、だめ。また吐くっ!

「ハオ様が、正気に戻られている……」
「え? ハオ? 帰ってきてるの? どこ?」

 あれ? そういやさっき誰かに名前を呼ばれた気がしたけど「マナ」って呼び捨てだったな。俺のこと呼び捨てにするのは、ハオしかいないし、なんとなくハオの声にも聞こえたけど……。

「なにを言ってるんですか? 目の前にいるじゃないですか」
「目の、前?」

 だって俺いまあの獣みたいなヤツに抱えられて……。
 ゆるんだ腕の拘束に、ゆっくり顔をあげる。
 ぐるりと巻いた大きな角、離れた目、けむくじゃらの顔はもう黒くなった血がこびりついてる。
 やっぱり獣じゃん! あれだ、悪魔崇拝の儀式とか、そういうあれ!
 無理っ! 怖すぎっ!
 イヤイヤともがいて逃げようとしたら、またガラスを踏んでしまった。

「いったーーーーっ」

 痛みに叫ぶと、獣は俺を持ち上げてべちゃっと身体が密着した。
 ひぃぃ。
 もう叫ぶことも出来ない。
 ヘダに捕まるのもイヤだけど、食べられるのはもっとヤダ。
 絶体絶命のピンチの中、俺のフトモモになにかモゾモゾと動く硬いものが当たった。

 ん? なんか覚えがある……。

「この丸太……。もしかして、ほんとにこの悪魔がハオなの?」
「ナニで認識できるのですね、クククッ。そちらは正真正銘、ハオ様です」
「でも、頭! 角生えてるし! モジャモジャだし! さっきからなんもしゃべんないし!」

 もしかして、人外だったの?
 獣頭になったからしゃべれないとか?

「それは狩りのときの頭巾です。しゃべらないのはおそらくまだ戦闘態勢から完全には戻られていないのかと……」
「戦闘態勢? でもさっき、俺の名前呼んでたぞ」
「珍しいですね。ハオ様はいつも数人オンナを抱き潰してからでないと、お戻りにはならないのですが」

 ハオは俺を抱いたまま、ふーふーっと荒い息をしていた。フトモモにあたるチンコも、ビクッビクッってそこだけ別の生き物みたいにうごめいている。

「マナ様を抱き潰さんように、耐えておられるんでさぁな。ロウ様もよくおさないサイを壊さんように、ご自分で鎮めておられましたな、ヒヒャッ」

 いやらしい笑い声をあげたジジに、ガラス片が飛んだ。

「余計なことはいいんですよ」
「ヒヒャッヒャッ! 親子っていうのは似るもんでさぁ」

 ほんのすこしの動きでガラス片を避けたジジに、サイがにらみをきかせたが、ジジイはまったく気にも止めずに床を掃除しはじめた。

「え? でも俺ずっと聞いてたけどハオが帰ってきたの、わかんなかったんだけど」

 どういうこと?
 

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

カランコエの咲く所で

mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。 しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。 次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。 それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。 だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。 そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。

イージーモードな俺の人生を狂わせたアイツ

世咲
BL
ノンケのイケメン大学生が恋する乙女になるまで。 執着系社会人×イケメン大学生

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

処理中です...