世紀末な転移先で覇王に捕まりました〜この世界で生き抜くなんて無理っ!絶対無理っ!〜

三谷玲

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.争いごとなんて無理っ!絶対無理っ! 6

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 俺が扉を開けようとしても、ジジが押さえているのかびくともしない。

「ジジ! 開けてっ! 開けろってばっ!」
「早よ、閂をしてくだされ。片手じゃ戦いづらくていけませんさね」

 え? これ片手で押さえてるの? いま俺全力で開けようとしてるんだけど。

「ヒヒャヒャッ! お前、この間レンに負けたイオさね」
「息子には負けたが、親父には負けん!」
「マナ様。ちぃっと骨が折れるんでさぁ。閂、よろしく頼みまさぁね。どれ、本気を出すとするさね」

 ああ! レンに腕を切られた人か。え? じゃあ強いんじゃない? 本当にジジだいじょうぶなの?
 ジジが扉から手を離したのか、すこし開いた。
 その瞬間、俺の目の前に光るものが飛びこんできた。

「マナ様! 邪魔なんでさぁ。とっとと中に入って閂してくだせぇ!」
「ご、ごめんっ!」

 慌てて扉を閉めた。無理っ! 絶対無理っ! 扉に刺さったから助かったけど、あんなの当たったら死んじゃうっ!
 ジジが用意してくれた閂は、足元にあった。
 お、重いっ! これ、鉄?
 なんとか両開きの扉の差し込む場所まで持ち上げた。
 ふらふらしつつもようやく、閂をかけられた。
 その間にも扉の外では、ドンッとかカキンとか、争いごとの音が響いていた。
 俺は怖くなってその場でしゃがみこみ、耳を塞いだ。

 ハオが戻ってくるまで、あとどれくらいだろう?
 もし、間に合わなかったら?
 サイとジジ、護衛の若いやつらはどうなるんだ?
 俺のために、あいつらみんな……。それなら俺があのヘダってやつのところに行けばいいんじゃないのか?
 どうせ、俺なんかを手に入れたからって、覇者になれるわけじゃないんだから。
 そこまでして俺を守る必要なんてあるのか?
 いや、あんな男のモノになるなんて絶対いやだけどさ……。
 けど……。

 俺のためにサイやジジが死んじゃったら。
 や、やっぱり俺が出ていったほうがよくないか?

 膝を付き、塞いでいた耳を扉に押し当てる。
 まだ、戦ってるのかガンガン音が響いてる。

「こんの、死に損ないが!」
「ヒヒャッヒャッ! 若造にはまだ負けんさね」

 とりあえずジジはまだ無事みたい。

「なんならお前もオレのオンナにしてやろう」
「ご冗談を、くっ」

 サイのほうは、ヘダと戦ってるようだ。苦戦してるっぽい。
 護衛ふたりともうひとりのヘダの手下の声は聞こえてこない。倒れてるのか、もしくは……。

 まだギリギリ持ちこたえてるってとこだろうか?
 俺が出て行って邪魔してもダメだし、だからってなにもしないでもいられない。
 俺は戦況を見守る気持ちで、必死で外の音を拾っていた。

 どれくらい時間が経ったんだろう?
 ドン、っと扉に何かが当たった。

「マナ様、ご無事、ですか……?」
「サイ? 俺は平気だけど、サイは? ジジや護衛の人たちはっ?」
「ふぅ……それは、よかっ、た……」

 だからどうなったんだよ! と聞き返そうとして膝に生ぬるいものが触れた。

 見ると床には血の海ができていた。  
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