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.争いごとなんて無理っ!絶対無理っ! 3
しおりを挟む「ハオ様が首領になるためには殺さなければならない。ロウ様の夢を叶えるためには殺されなければならない。それはもう、見事な最期でしたよ?」
思い出しているのか、サイはうっとりとしていた。
「わかんねぇ……」
「力のない者が、首領になればみなが死ぬだけです。アンダーウォーカーではどうやって首領を決めるのですか? 決め手は?」
「そりゃ、選挙とか。多数決だよ。演説とか方針とか?」
って、俺、選挙なんか行ったことないけど。だって、誰が総理大臣になったって変わらねぇもん。
俺の給料が上がるわけでも、残業が減るわけでもない。彼女だって出来ない。
「その者に本当に自らの命を預けられますか?」
「は? そんな大層なもんじゃねぇよ。そりゃ戦争好きの独裁者はイヤだけど、そんなやつ選挙に選ばれるわけねぇし」
「アンダーウォーカーというのは、のんきな生き物なんですね」
「それだけ、平和だったんだよ!」
どんなに忙しくたって、コンビニに行けば飯は食える。夜中に歩いてても、めったなことでは殺されたり襲われたりすることもない。……俺はトラックに吹き飛ばされたけど。
家に帰れば暖かい部屋が待っていて、風呂にも入れ……。
「……もう風呂に入れないんだな」
「マナ様のためなら、いつでも沐浴の用意をしますが?」
「ダメっ! 無理っ! 水がそんなに貴重なもんだって知らなかったから言っただけで、俺のためなんかで迷惑かけらんねぇよ」
そりゃ風呂には入りたいさ。それは蛇口をひねれば出る生活だったから。水を汲むのに命がけだなんて知ったら、入りたいなんて言えない。
「それで落ち込まれていたのですか? クククッ」
「わ、悪いかよ。当然だろ? 俺はアンダーウォーカーじゃねえし、ほんとはこんな待遇受けられるような人間じゃないんだよ」
「おもしろいですね。この地の者なら誰だって首領の恩恵を受けるために、その身を投げ出すというのに。アンダーウォーカーというのはのんきで、欲がない。よくこれまで生きてこられたものです」
そう言ってサイはまたクククッと笑った。
「欲がないわけじゃない。でも、なんもしないで与えられるだけってのは、居心地悪いじゃん」
「なら、早くハオ様のモノになればよいのです」
「それも、イヤ!」
サイが何かを口にしようとしたところで、エレベーターの上がってくる音が聞こえた。
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