世紀末な転移先で覇王に捕まりました〜この世界で生き抜くなんて無理っ!絶対無理っ!〜

三谷玲

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.風呂に入れないなんて無理っ!絶対無理っ! 5

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 同じベッドで寝るには理由がある。
 昼間は汗が吹き出るくらいに暑いけど、夜は寒い。毛皮の敷物があるのは、そのためだ。
 かぶっているのはつぎはぎだらけのボロ布で、めちゃくちゃ薄い。
 それでも、ないよりマシらしい。
 塔の外にいるヒャッハー!達は何人かで集まって眠るらしい。あの、ムサい男たちが。

 だからこうして俺はおとなしくハオに抱かれて眠っている。

 薄汚れてきたシャツの背中越しにぬくもりと、なにやら気付いてはいけない硬いものを感じるが、そっちは無視だ。
 ハオは寝付きがいいから、すぐに寝息が聞こえてきた。

 はぁ……。なんでこんなことになったんだろう?
 アンダーウォーカーってなんだよ、いったい。
 人違いですって言って出ていこうとも考えたけど、無理なんだよな。
 まずこの部屋から出るにはあの魔王の間を通らなきゃいけない。なにかしら人の気配があるから、見られずに逃げることはできそうにない。
 それに、この世界のことはなんにもわからない。
 俺が見つかったのは、この塔より東、歩いても人も建物も見えない荒野だ。助けを求めるにもどこにいるかもわからない。
 西に逃げたらいいのか?
 でも、このシャツ一枚じゃすぐに干からびて死ぬだろう。

 八方塞がりってのはこのことだな。

 大きくため息をついた。

「眠れないのか?」

 ハオは寝付きもいいけど、気配にも敏感だ。
 俺のため息一つで、起きてしまった。

「昼もすることないから、眠れねぇんだよ」
「なら、ヤるか?」
「しねぇよ、バカっ! そういうこと言ってんじゃねえの」
「マナは面倒なやつだな」

 なら俺なんかほっとけばいいじゃないか。そんなに覇者になりたいのか? そのために生まれてきたって言っても、まだ二十歳だろ?
 二十歳なんてまだ子どもじゃないか……。
 抱き寄せられた腕が目に入る。
 手だってキズだらけで、血管浮き出て。
 実の父親も、育ての親も亡くなって……。
 こいつもちょっとかわいそうだよな。
 俺はキズだらけのハオの手に触れてみた。
 アンダーウォーカーを手に入れて覇者になったからってこんな狭い世界で不毛な土地で、その先なにがあるんだろう?

 結局、アンダーウォーカーってなんだよ。

「そんなに手が気に入ったか?」
「ふぇ? は?」

 俺は知らず知らずのうちにハオの手をつかんでいたらしい。太い指が俺の手に、からんできてぎゅっと握られた。
 うわ、デカっ!

「これで、マナの手は手に入れたな」
「離せ! 俺の手は俺のモノだ!」
「ははっ! それで抵抗しているつもりか? はやく寝ろ。明日はお前の披露目の儀式をする」

 聞いてない! やだやだと手を振るがびくともしない。くそっ! 年下なのに苦労してんだな、なんて同情しなきゃよかった!
 なんだよ、披露目の儀式って! 披露宴か? 披露宴でもするのか?
 絶対イヤだー!

 そのまま握った手を俺の腹に押し付けて、ハオからはまた寝息が聞こえてきた。

 
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