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88日
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「だから、首締めろって」
ミッシャはオスカーの手を筋の浮き出た首へと宛がった。躊躇うオスカーだがおそるおそる力を込める。
「も、っと……」
気道を抑えられ、息が苦しい。それでも掠れた声で、もっとと促す。
効率よく魔力を渡せるようにするには、と考えた結果がこれだ。
手からの譲渡ではやはり時間が掛かりすぎる。口付けでも問題ないのだが、そうなるとミッシャの身体が反応してしまう。
なら、ムリヤリでなければ、セックスでいいのでは? と言ったのはミッシャだ。
別に快楽に溺れているわけではないが、オスカーに触れられればうれしい。
あとどれくらい一緒にいられるのか分からない。最悪の始まりではあったが、最期くらい幸せに溺れたい。
丁寧に服を脱がされ、全身を愛撫され解された内をオスカーがゆっくり挿ってきてから、ミッシャは首を絞めるよう伝えた。
「なにを言ってるんですか?」
「どう影響するかわからないのなら、試してみる価値はあるだろう? あとは殴るとか? それから縛ったり、叩いたり……。とにかく、試せることは、試してみよう」
「……変な趣味に目覚めたわけじゃないんですね?」
「別にそういうつもりで言ったわけじゃねぇよ!」
被虐体質に目覚めたわけではないことを強く否定した。
魔力を増加させられる可能性があるものを試してみたい。
オスカーの親指がのどぼとけに触れる。ぐりっと押されると、気持ち悪い。酸素を欲して口を開いても、肺が満たされることはない。頭に血が上り、明滅する視界の先でオスカーが眉間のシワを濃くしていた。
見慣れた顔つきだった。
ずっとこんな顔をしていた。
最初は復讐のためにこんなことをしているのだと思っていたが、今なら分かる。
オスカーだってしたくてしていたわけじゃないことを。
ミッシャを嬲ることに、苦痛を感じていたのだろう。
――僕よりオスカーのほうが辛そうだな。
息苦しさの中、気付いた真実でオスカーを締め付けてしまう。
気持ちい、苦しい、気持ちいい。
口端に泡をため、瞼がけいれんを起こし始めたところで、オスカーの手が緩んだ。
「く、はっ……、はぁ、はぁ……、やめ、んなよ……んっ」
「気持ち、よく、なってたら、意味が、ない、のでは……?」
「あ、っ♡ あっ♡ おすか、ぁっ……」
一度に入り込む酸素もオスカーが内をたたきつけるたび、小さく吐き出される。ふたりの吐息が混じりあい、解けていく。急速に失われる魔力に眩暈と快楽を感じて、ミッシャは素直に意識を手放した。
ふと、目覚めたミッシャは背に当たるぬくもりを感じて懐かしさを覚えた。腹に回された手を弄んでもオスカーが起きる気配はなかった。
そっと寝返りを打ってオスカーの胸に顔を埋めた。
いつの間にかこの逞しい身体を頼りにしていた。
そっと視線を上にして、オスカーの顔を伺い見る。
眠っていても相変わらず眉間のシワは深く、さらには眼下にはクマが見られた。
下腹部に集中して、ミッシャは息を吐いた。
――少しくらいならいいよな?
そう心の中で言い訳をして、ミッシャは手を伸ばした。
張りのある頬に手を伸ばす。乱れた琥珀の髪を整えてやると掌に意識を集めた。
暖かな光がオスカーの顔を包んだ。
クマは消せなかったがシワは薄れていったことにミッシャは安堵した。子供のころもこうしてミッシャの魔力を渡して、癒していた。それが、オスカーをミッシャに依存させてしまうきっかけになってしまった。もし過去に戻れたとしても、ミッシャは同じことをしただろう。
後悔はもうたくさんした。
最期くらい、幸せを感じて逝きたい……。
もう一度オスカーの顔を撫で、ミッシャはオスカーの腕の中で健やかな眠りについた。
ミッシャはオスカーの手を筋の浮き出た首へと宛がった。躊躇うオスカーだがおそるおそる力を込める。
「も、っと……」
気道を抑えられ、息が苦しい。それでも掠れた声で、もっとと促す。
効率よく魔力を渡せるようにするには、と考えた結果がこれだ。
手からの譲渡ではやはり時間が掛かりすぎる。口付けでも問題ないのだが、そうなるとミッシャの身体が反応してしまう。
なら、ムリヤリでなければ、セックスでいいのでは? と言ったのはミッシャだ。
別に快楽に溺れているわけではないが、オスカーに触れられればうれしい。
あとどれくらい一緒にいられるのか分からない。最悪の始まりではあったが、最期くらい幸せに溺れたい。
丁寧に服を脱がされ、全身を愛撫され解された内をオスカーがゆっくり挿ってきてから、ミッシャは首を絞めるよう伝えた。
「なにを言ってるんですか?」
「どう影響するかわからないのなら、試してみる価値はあるだろう? あとは殴るとか? それから縛ったり、叩いたり……。とにかく、試せることは、試してみよう」
「……変な趣味に目覚めたわけじゃないんですね?」
「別にそういうつもりで言ったわけじゃねぇよ!」
被虐体質に目覚めたわけではないことを強く否定した。
魔力を増加させられる可能性があるものを試してみたい。
オスカーの親指がのどぼとけに触れる。ぐりっと押されると、気持ち悪い。酸素を欲して口を開いても、肺が満たされることはない。頭に血が上り、明滅する視界の先でオスカーが眉間のシワを濃くしていた。
見慣れた顔つきだった。
ずっとこんな顔をしていた。
最初は復讐のためにこんなことをしているのだと思っていたが、今なら分かる。
オスカーだってしたくてしていたわけじゃないことを。
ミッシャを嬲ることに、苦痛を感じていたのだろう。
――僕よりオスカーのほうが辛そうだな。
息苦しさの中、気付いた真実でオスカーを締め付けてしまう。
気持ちい、苦しい、気持ちいい。
口端に泡をため、瞼がけいれんを起こし始めたところで、オスカーの手が緩んだ。
「く、はっ……、はぁ、はぁ……、やめ、んなよ……んっ」
「気持ち、よく、なってたら、意味が、ない、のでは……?」
「あ、っ♡ あっ♡ おすか、ぁっ……」
一度に入り込む酸素もオスカーが内をたたきつけるたび、小さく吐き出される。ふたりの吐息が混じりあい、解けていく。急速に失われる魔力に眩暈と快楽を感じて、ミッシャは素直に意識を手放した。
ふと、目覚めたミッシャは背に当たるぬくもりを感じて懐かしさを覚えた。腹に回された手を弄んでもオスカーが起きる気配はなかった。
そっと寝返りを打ってオスカーの胸に顔を埋めた。
いつの間にかこの逞しい身体を頼りにしていた。
そっと視線を上にして、オスカーの顔を伺い見る。
眠っていても相変わらず眉間のシワは深く、さらには眼下にはクマが見られた。
下腹部に集中して、ミッシャは息を吐いた。
――少しくらいならいいよな?
そう心の中で言い訳をして、ミッシャは手を伸ばした。
張りのある頬に手を伸ばす。乱れた琥珀の髪を整えてやると掌に意識を集めた。
暖かな光がオスカーの顔を包んだ。
クマは消せなかったがシワは薄れていったことにミッシャは安堵した。子供のころもこうしてミッシャの魔力を渡して、癒していた。それが、オスカーをミッシャに依存させてしまうきっかけになってしまった。もし過去に戻れたとしても、ミッシャは同じことをしただろう。
後悔はもうたくさんした。
最期くらい、幸せを感じて逝きたい……。
もう一度オスカーの顔を撫で、ミッシャはオスカーの腕の中で健やかな眠りについた。
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