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逃げゆく二月は諸行無常
【幕間】
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揺り起こされたわたしの目の前には彼の心配そうな顔があった。
「大丈夫か? そろそろ業者の人来るけど」
「もうそんな時間? やだ、まだ何も片付いて……」
部屋を見渡すと、ラックは既に空になっていて、段ボールが高く積まれていた。キッチンも同様だ。
どうやらわたしが寝てる間に終わってしまったらしい。
「ごめん。全部やらせちゃって」
「いや、あいつにも手伝わせたから問題ない。それより具合悪いのか?」
「ううん。大丈夫。眠いだけよ」
このところは昼も夜も関係なく、睡魔が訪れてはわたしを夢の中へと誘う。
今もあの頃の夢を見た。
初めて彼と逢ったころ、彼はとても無愛想で、わたしは彼のことが苦手だった。
それがこんなにもわたしのことを想ってくれているなんて、思ってもみなかった。
ソファから立ち上がるのさえ手を差し伸べてくれて、気遣ってくれる彼を見つめると、頭に疑問符を浮かべた。
「ありがとう」
「なにが?」
引っ越しの準備? 手を差し伸べてくれたこと? ううん。そんなことじゃない。
「わたしを愛してくれて」
いつも言われてばかりだから、たまにはわたしからも伝えておかないと。
「……知ってる」
彼は面食らった顔をして、照れくさそうに笑うと、わたしのつむじにキスをした。
「大丈夫か? そろそろ業者の人来るけど」
「もうそんな時間? やだ、まだ何も片付いて……」
部屋を見渡すと、ラックは既に空になっていて、段ボールが高く積まれていた。キッチンも同様だ。
どうやらわたしが寝てる間に終わってしまったらしい。
「ごめん。全部やらせちゃって」
「いや、あいつにも手伝わせたから問題ない。それより具合悪いのか?」
「ううん。大丈夫。眠いだけよ」
このところは昼も夜も関係なく、睡魔が訪れてはわたしを夢の中へと誘う。
今もあの頃の夢を見た。
初めて彼と逢ったころ、彼はとても無愛想で、わたしは彼のことが苦手だった。
それがこんなにもわたしのことを想ってくれているなんて、思ってもみなかった。
ソファから立ち上がるのさえ手を差し伸べてくれて、気遣ってくれる彼を見つめると、頭に疑問符を浮かべた。
「ありがとう」
「なにが?」
引っ越しの準備? 手を差し伸べてくれたこと? ううん。そんなことじゃない。
「わたしを愛してくれて」
いつも言われてばかりだから、たまにはわたしからも伝えておかないと。
「……知ってる」
彼は面食らった顔をして、照れくさそうに笑うと、わたしのつむじにキスをした。
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