神様からのボーナスタイム

なにこれ！すごい！ハイテクだ！

　ショウイチの言葉にふたりが口をつぐんでしまった。いまの自分はこうして元気に生きているものだから、あの落下していく自分は、夢のような感覚だ。

　軽い気持ちで言ってしまった言葉に、ふたりが困っているようで、申し訳ない。

　ショウイチは空気を変えるため、できる限り明るい声を出した。

「って、ごめん！　なんか暗い話になっちゃったね。どっちにしろ、この使い捨てのなら大丈夫なんでしょ？」

　コンタクトレンズをしたことはなかったが、リョウゴが付けているのを見たことがある。人差し指に乗せて、目に入れてみる。

　リョウゴはよく痛がっていたが、まったく違和感なく瞳に張り付いた。

「口座はシゲアキの登録してあるから、いくら使ってもいいよ」

　口座って銀行口座のことだろうか？　他人の口座番号を登録できるものだろうか？　家族なら、まだそういうこともあるだろうが……。

　そういえばノゾムは鍵も持っているのか、この部屋に自由に出入りしている。

「ふたりってすごい仲がいいんよね。ノゾムはこの部屋出入り自由だし、口座番号も知ってる。もしかして実は付き合ってた、とか？」

　家族でなければ、恋人なら、まだ可能性がありそうだ。そう思って口にしたがふたりからはすごい勢いで否定された。

「まさか！　それだけはない！」
「ないない！　シゲアキ生粋のゲイだもん！」
「どういうこと？」

　シゲアキがゲイとは昨夜、驚きの告白と共に聞いた。しかし、それでノゾムと付き合わない理由が結びつかない。

「あれ？　言ってなかったっけ？　オレ、ＦｔＸだって」
「えふてぃーえっくす？」
「生物学的には女だけど、無性って言って男でも女でもないんだ。オレとしてはシゲアキのこと好きだから、付き合ってもいいんだけどね」

　そう言ってノゾムはシゲアキに投げキッスをした。ノゾムが女性？　いや、無性……？

「そういいながら、お前この間も彼女と別れたばかりだろ」
「それとこれとは別モノだよ。オレはただ好きだなって思ったら男だろうが女だろうが愛し合いたいだけなんだから」

　まだ混乱しているショウイチは肘を付いた姿勢で、こめかみを叩いた。

　とたん、目の前に先程の紙箱に書かれていたロゴが現れた。

　ロゴはすぐに消え、代わりに視界の右端に「Ｍｅｎｕ」と書かれたグリーンの文字が表示された。ゲームのステータス画面のようだ。

　首をあちらこちらに振ってもついてくる。

「なにこれ！　すごい！　ハイテクだ。あれ？　でもこれどうやって選ぶの？」

　ショウイチは目の前の「Ｍｅｎｕ」の文字に触れようとするが、指はその文字よりも先にしか届かない。

「あ、懐かしい！　昔はそうやって指で操作したんだけど、今は、ブリンクでいけるよ」
「ブリンク？」
「こうするんだ」

　聞きなれない単語に首をかしげると、シゲアキが瞬きをした。