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もし生きてたら、どうなるの?
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「えぇー? 電脳化は? アンドロイドは?」
「ないな」
「じゃあさ、月面旅行! 火星移住計画は? 宇宙には行ける?」
「何もない月に行ってどうする。軌道エレベーターはあるにはあるが、あれは太陽光発電用だな」
朝食を食べながら、シゲアキを質問責めにした。
ちなみに朝食は注文すれば二十四時間、宅配してくれる。三十年近く前に始まったサービスらしい。
ただし、人が運ぶのではなく配達してくれるのはドローンだ。ショウイチがいたころに出始めたドローンは、撮影ができるだけだったが、今では宅配や郵便といったものはすべてドローンで配達されるそうだ。
ベランダにやってきたドローンを見て、「SFっぽい!」と思った。だからこその質問責めだったが、想像より変化は大きくなさそうだった。
そのベランダに置かれたテーブルで食べる朝食も、ごくごく普通のサンドイッチと紅茶だ。
いや、紅茶はシゲアキが淹れてくれた。今日は、キャラメル味のミルクティだ。砂糖がなくてもほんのり甘い味がした。
未来への期待を打ち砕かれたショウイチがしょぼくれていると、頭に何か置かれた。
「まぁまぁそう思って買っておいたよ。スマコン」
「ノゾム? 締切間に合ったの?」
振り向くとこちらもいかにも寝不足といったノゾムが、ショウイチの頭の上に小さな箱を乗せた。
ノゾムの来訪に、ショウイチは少しほっとしていた。
昨夜のシゲアキからの告白に驚きはしたものの、ショウイチは疲れていたからぐっすり眠れた。一方、シゲアキはとても眠そうで、原因は自分にあると思うと、いたたまれない。
少し大げさなくらい明るく元気に、この時代の技術について聞くことで、なんとか話を逸らしたかった。
「もちろん! 貫徹したけどね。ついでに夜中にスマコン注文しといたんだ。ショウイチにも必要だからね」
ノゾムはその箱をテーブルに置いた。
手のひらサイズの紙箱には、メーカ名であろうロゴが小さく印字されていて、中にはクリアケースに入ったコンタクトレンズがあった。
「僕の? でも、いいの?」
ノゾムとシゲアキを交互に見た。昨日から散々ふたりにはお金を使わせてしまっている。
「もらっておけ。どうせノゾムが金を持っててもガラクタばかり買うんだから」
「あぁ! ガラクタってのは失礼じゃない? オレのコレクションは結構貴重なんだよ?」
ノゾムは当たり前のようにショウイチとシゲアキの間に座り、サンドイッチに手を伸ばした。
シゲアキはノゾムの分の紅茶も淹れると、ノゾムはそこに砂糖をどっさり入れていた。
「それより、先にショウイチに使い方教えてやれ」
「そうだった! ショウイチ! スマコンつけてみて! 飛ばしのだから足はつかないよ」
「お前……またそんないかがわしいものを」
「だって生体認証されたら、困るでしょ? もしこの時代のショウイチが生きてたら――」
「もし生きてたら、どうなるの?」
両親のことはちらりと考えたが、自分が生きてることに思いが至らなかった。しかし――
「どうだろうな。登録した人間と違う人間が使用したらエラーが出るのは知ってるが、ショウイチの場合、同じ人間なわけだから」
「あ、でも別の場所で使用されるわけだから、アラートくらいはでるんじゃない? 位置情報は記録されてるわけだし」
ふたりが可能性を討論しているが、ショウイチは首を横に振った。
「生きてる可能性はほとんどないけどね。あの時頭から落ちたし……」
「ないな」
「じゃあさ、月面旅行! 火星移住計画は? 宇宙には行ける?」
「何もない月に行ってどうする。軌道エレベーターはあるにはあるが、あれは太陽光発電用だな」
朝食を食べながら、シゲアキを質問責めにした。
ちなみに朝食は注文すれば二十四時間、宅配してくれる。三十年近く前に始まったサービスらしい。
ただし、人が運ぶのではなく配達してくれるのはドローンだ。ショウイチがいたころに出始めたドローンは、撮影ができるだけだったが、今では宅配や郵便といったものはすべてドローンで配達されるそうだ。
ベランダにやってきたドローンを見て、「SFっぽい!」と思った。だからこその質問責めだったが、想像より変化は大きくなさそうだった。
そのベランダに置かれたテーブルで食べる朝食も、ごくごく普通のサンドイッチと紅茶だ。
いや、紅茶はシゲアキが淹れてくれた。今日は、キャラメル味のミルクティだ。砂糖がなくてもほんのり甘い味がした。
未来への期待を打ち砕かれたショウイチがしょぼくれていると、頭に何か置かれた。
「まぁまぁそう思って買っておいたよ。スマコン」
「ノゾム? 締切間に合ったの?」
振り向くとこちらもいかにも寝不足といったノゾムが、ショウイチの頭の上に小さな箱を乗せた。
ノゾムの来訪に、ショウイチは少しほっとしていた。
昨夜のシゲアキからの告白に驚きはしたものの、ショウイチは疲れていたからぐっすり眠れた。一方、シゲアキはとても眠そうで、原因は自分にあると思うと、いたたまれない。
少し大げさなくらい明るく元気に、この時代の技術について聞くことで、なんとか話を逸らしたかった。
「もちろん! 貫徹したけどね。ついでに夜中にスマコン注文しといたんだ。ショウイチにも必要だからね」
ノゾムはその箱をテーブルに置いた。
手のひらサイズの紙箱には、メーカ名であろうロゴが小さく印字されていて、中にはクリアケースに入ったコンタクトレンズがあった。
「僕の? でも、いいの?」
ノゾムとシゲアキを交互に見た。昨日から散々ふたりにはお金を使わせてしまっている。
「もらっておけ。どうせノゾムが金を持っててもガラクタばかり買うんだから」
「あぁ! ガラクタってのは失礼じゃない? オレのコレクションは結構貴重なんだよ?」
ノゾムは当たり前のようにショウイチとシゲアキの間に座り、サンドイッチに手を伸ばした。
シゲアキはノゾムの分の紅茶も淹れると、ノゾムはそこに砂糖をどっさり入れていた。
「それより、先にショウイチに使い方教えてやれ」
「そうだった! ショウイチ! スマコンつけてみて! 飛ばしのだから足はつかないよ」
「お前……またそんないかがわしいものを」
「だって生体認証されたら、困るでしょ? もしこの時代のショウイチが生きてたら――」
「もし生きてたら、どうなるの?」
両親のことはちらりと考えたが、自分が生きてることに思いが至らなかった。しかし――
「どうだろうな。登録した人間と違う人間が使用したらエラーが出るのは知ってるが、ショウイチの場合、同じ人間なわけだから」
「あ、でも別の場所で使用されるわけだから、アラートくらいはでるんじゃない? 位置情報は記録されてるわけだし」
ふたりが可能性を討論しているが、ショウイチは首を横に振った。
「生きてる可能性はほとんどないけどね。あの時頭から落ちたし……」
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