原石の欠片たち

優良物件？

「事故物件で安く借りられたけど、綺麗だし変な感じしないし良かったなぁ」

　水漏れにより社員寮を追い出された僕。会社からの手当は出るものの出来れば安いところを借りたかったので、不動産屋にお願いしたら事故物件の安いマンションを紹介された。見た目も新しく特におかしなところはない。そもそも僕には霊感なんてないから気にもならない。どうやら夜中にポルターガイスト現象が起きるらしいのだが、その内容は誰も口を割らず、不動産屋も対応に困っていたらしい。
　社員寮では誰かしら先輩社員が部屋に来ては飲み会が始まって、飲めない僕にはちょっとつらかったから、一人の時間が持てることがとても嬉しい。
　静かな夜を満喫した僕がベッドに潜り込むと、件のポルターガイスト現象が起きた。
　最初は何が起きたか分からなかった。身体がやけに重い。まるで誰かに伸し掛かられてるような、そんな重さだ。目を開いてももちろん、誰かがいるわけではない。疲れているだけなのかもしれない。そう思い目を閉じ、横向きになった。重さを感じなくなったので安心していたら、なぜか僕のおちんちんが勃起していた。

（え？　なんで？）

　しかもなんか……気持ちいい……。

「ん、なに？え？なんで、えっ？あっ♡やだやだ、なにこれぇっ、うそうそっ、そこだめ、なんで、こんな、あっ♡あっ♡ダメっ♡ダメぇぇっ♡」

　身体中を這い回る何かが僕の中に……。人の手みたいな感触だけど、温度はない。冷たくも、熱くもないそれ。あっという間に昇りつめ果てた身体から、感触は一瞬で消えた。

「な、なんだったんだ？　夢精……じゃないよな。僕起きてたし」

　それは毎晩のように僕を射精させては満足したように帰って行った。
　もしかして、事故物件ってこのことだろうか？
　先輩達が毎夜酒盛りしてなかなかオナニーも出来なかった僕には優良物件では？

　恋人（男）が出来ると途端にポルターガイスト現象は収まった。彼もまた毎夜ポルターガイストに悩まされてたと告白されるのは、同棲しだしてすぐのこと。