原石の欠片たち

三谷玲

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鏡よ鏡。世界で一番エロいのは?

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 背中から抱き締められては身動きもできない。せめてもの抵抗で俺はきつく目を閉じた。おかげで俺のナカに収まっている彼のペニスを余計に感じ取ってしまうけど、今目を開いたら俺は羞恥で死ぬかもしれない。

「ほら、目開けて?」
「やだっむりっ」

 顎を掴まれ前を向かされる。絶対無理。
 だって、俺の目の前にあるのは大きな鏡。
 ここはトレーニングジム。トレーナーの彼と付き合うことになって三度目のセックス。初めては彼の終わりを待って彼の部屋で、二回目は近くのラブホ。三回目の今日、彼が戸締まり担当でジムの中で待つよう促された。
 掃除をしている剥き出しの彼の腹筋についつい見とれていたら鏡でバレていたみたい。
 まさかここでセックスしようなんて言われるとは思いもしなかった。
 蕩けるようなキスをされて疼いた身体に太い指が這い回る頃には身も心も預けてしまっていた俺。すっかり彼の大きな身体に慣らされてしまっていた。壁に手を突き腰を突き出した姿勢で彼を迎え入れたまでは良かった。彼は自慢の筋肉で俺を持ち上げると開いた足をそのままに歩き出した。
 振動が伝わる俺のナカが彼をぎゅうぎゅうに締め付ける。不安定な姿勢に恐怖心はあるが掴まえた彼の太い腕は俺をがっちりと捕らえて離さない。
 壁全面に貼られた鏡の前で立ち止まり目を開けるように促されたのだ。

「開けないと動いてあげないよ?」
「ずるいっ、ひっ」

 不安定ながらも彼の腰が緩く俺を穿つ。
 快感はあれど、絶頂には至らない緩い律動。

「よく見て? 俺の大好きなお前のえっろい顔」

 掠れた彼の声が耳に滑り込む。懇願するような声色なのに言ってることは酷い。エロいなんて知らない。

「は、恥ずかしいっ、あっ♡やぁっ♡」

 腰を回転するような動きを加えて俺を苛む。少しだけ、少し目を開けたら、動いてくれるだろうか?
 俺はそろりと薄目を開けた。

 なんて、顔してんだ……。
 いつもはきりっとした彼の、悦楽が混じる苦悩の表情。
 確かにえっろい顔してる。

 鏡越しに視線がぶつかる。
 彼のえっろい顔と俺のえっろい顔に白濁がかかった。

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