35 / 45
溺れる僕はシャツを掴む
しおりを挟む
同棲を初めて一年。互いの距離感やリズムにも慣れて来た気がする。でもそれは一般生活のこと。なんというか、この頃、夜の営みが減った気がする。同棲前は会うたびにしていたのにこの頃は月に一、二回。もしかしてもう飽きられたのかもしれない。
そんな落ち込んだ気分を更に落ち込ませる、彼の残業。それも今日は終電すら間に合わないかもしれないという。一人で食べるご飯がこんなにも味気ないものだなんて、知らなかった。いつもする彼の声や匂いがしないのがこんなにも寂しいなんて。思わず洗濯カゴから彼のシャツを取り出した。
すうっと吸い込むと彼の匂いがした。昨日のだから少し薄い、けど寂しさを紛らわすのには十分で、僕はそれを抱えてベッドに潜り込んだ。
布団の中で嗅ぐ彼の匂いは、まるで彼に抱かれてるみたいで、むずむずと身体が疼いた。
前にしたのって……もう二週間以上も前だ。僕の手は知らず知らずのうちに疼く後孔に伸びていた。
久しぶりに触れたそこは固く閉じ、自分の指すらすんなりとは入らなかった。枕元のローションは半分以上も残っていて、それもまた僕らの最近の事情を伝えてくるようで悲しくなった。
触れる指先を彼に見立てる。
縁に掛けた指がゆっくりと僕を開き、中に侵入する。それはもう慎重に。
痛みを与えまいとする彼の慎重すぎる動きに僕はいつも焦れていた。
本音を言えばもっと乱暴でもよかった。もっと必死に僕を求めて欲しい。
僕がこの匂いにすら溺れるくらい、僕に溺れる彼が見たい。
「ただいま~悪い遅くなった。あれ? いないの?」
彼の匂いを嗅ぎ、彼の動きを思い出していた僕にその声は届かなかった。
「……んっ♡んっ♡……足りない」
彼の長い指で触れる僕の内側のいいところに触れたいのに届かない。それならばと後ろに触れるだけで勃ちあがったペニスを握るのにそれもまた絶頂には程遠い。
欲しい、彼の、彼が……。
「……なにしてんの?」
「えっ? あ、やだっウソ、あぁっ♡」
夢中になった僕の目の前に、欲しくて欲しくてたまらない彼と彼の匂いがした。
「ひとりでイっちゃったの?」
「ちが、っ、だって」
説明したい。僕がイったのは君なんだって。でもそれは言葉にならなかった。
「最近朝辛そうだから我慢してたんだけど、もういいよね?」
一晩掛けて溺れるくらいに愛されていることを身を持って知らされた。
そんな落ち込んだ気分を更に落ち込ませる、彼の残業。それも今日は終電すら間に合わないかもしれないという。一人で食べるご飯がこんなにも味気ないものだなんて、知らなかった。いつもする彼の声や匂いがしないのがこんなにも寂しいなんて。思わず洗濯カゴから彼のシャツを取り出した。
すうっと吸い込むと彼の匂いがした。昨日のだから少し薄い、けど寂しさを紛らわすのには十分で、僕はそれを抱えてベッドに潜り込んだ。
布団の中で嗅ぐ彼の匂いは、まるで彼に抱かれてるみたいで、むずむずと身体が疼いた。
前にしたのって……もう二週間以上も前だ。僕の手は知らず知らずのうちに疼く後孔に伸びていた。
久しぶりに触れたそこは固く閉じ、自分の指すらすんなりとは入らなかった。枕元のローションは半分以上も残っていて、それもまた僕らの最近の事情を伝えてくるようで悲しくなった。
触れる指先を彼に見立てる。
縁に掛けた指がゆっくりと僕を開き、中に侵入する。それはもう慎重に。
痛みを与えまいとする彼の慎重すぎる動きに僕はいつも焦れていた。
本音を言えばもっと乱暴でもよかった。もっと必死に僕を求めて欲しい。
僕がこの匂いにすら溺れるくらい、僕に溺れる彼が見たい。
「ただいま~悪い遅くなった。あれ? いないの?」
彼の匂いを嗅ぎ、彼の動きを思い出していた僕にその声は届かなかった。
「……んっ♡んっ♡……足りない」
彼の長い指で触れる僕の内側のいいところに触れたいのに届かない。それならばと後ろに触れるだけで勃ちあがったペニスを握るのにそれもまた絶頂には程遠い。
欲しい、彼の、彼が……。
「……なにしてんの?」
「えっ? あ、やだっウソ、あぁっ♡」
夢中になった僕の目の前に、欲しくて欲しくてたまらない彼と彼の匂いがした。
「ひとりでイっちゃったの?」
「ちが、っ、だって」
説明したい。僕がイったのは君なんだって。でもそれは言葉にならなかった。
「最近朝辛そうだから我慢してたんだけど、もういいよね?」
一晩掛けて溺れるくらいに愛されていることを身を持って知らされた。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる