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ユースティティアはワインがお好き
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ずっと好きだった。不毛な片思いを終わらせようと思ったのは彼が結婚を決めたから。送付すればいいものをわざわざ手渡しに来るなんて、ひどい男だと思った。招待状を持って訪ねてきた彼に俺はなんとか作った笑顔で祝いの言葉を告げた。
「おめでとう。これで俺もお前のお守りから開放されると思うと安心出来るよ」
「よく言うよ。部屋に虫が出たから来てくれって言ったのお前のほうだろ?」
あれは無理。仕方ないんだって。
お祝いにちょっといいワインを開けて乾杯をした。こうして二人で飲み明かすのも最後だと思うと、味もわからないワインが進む。彼のほうは人生の絶頂なのだろう。彼女の愚痴という名の惚気をほろ酔い気分で語った。
二時間もすると床にはワインの瓶が転がり、一緒に俺も寝転んだ。流石に飲みすぎた。酔わなければこの片思いを消化出来そうにない。
トイレから戻ってきた彼は俺の横に腰を下ろすと、その手を俺の顔に伸ばした。額に掛かった髪をかき分け、俺の頬を撫で、顎を掴む。俺はその動きをじっと見つめていた。
何をされているのだろうか?
今までも距離は近いと思っていたがこんなに近くに触れられることはなかった。
「なぁ、いつから俺のことが好きだった?」
何を言ってるのだろうか?
一気に酔いが冷めた。それなのに触れられた箇所から熱がじわじわと広がり、一気に身体を熱くした。
「な、んの、こと?」
「いつもいつも俺のこと見てただろ? バレてないと思った? わかりやすすぎ。今日だってずっと今にも泣きそうな顔してさ。で? どうしたい? どうされたい?」
俺の演技は完璧だと思ってた。
「ちが、う。違うから! そんなわけない、じゃないか。俺はっ」
「あー無理だって。ほら、もう泣いてんじゃん」
彼の親指が、俺の目からこぼれ落ちる涙を端から拭き取る。首を振ってその手から逃れようと思うのに、その手は存外強く、俺の顔を固定した。彼の顔を目の前にして、俺の動きは封じられた。
鼻が触れ合う距離まで近付いた彼の吐息が俺の唇に触れた。後数センチ動いてしまえば触れ合う距離。
「いい?」
「だめ……」
「なんで?」
こんなことをしてはだめだと理性が告げる。
「だって……お前彼女……」
「彼女がいなければ、いいの?」
「……!」
求めてしまえと本能が告げる。
せめぎ合う理性と本能の間で、揺蕩うワインの芳香。
転がる瓶が天秤を傾けた。
「おめでとう。これで俺もお前のお守りから開放されると思うと安心出来るよ」
「よく言うよ。部屋に虫が出たから来てくれって言ったのお前のほうだろ?」
あれは無理。仕方ないんだって。
お祝いにちょっといいワインを開けて乾杯をした。こうして二人で飲み明かすのも最後だと思うと、味もわからないワインが進む。彼のほうは人生の絶頂なのだろう。彼女の愚痴という名の惚気をほろ酔い気分で語った。
二時間もすると床にはワインの瓶が転がり、一緒に俺も寝転んだ。流石に飲みすぎた。酔わなければこの片思いを消化出来そうにない。
トイレから戻ってきた彼は俺の横に腰を下ろすと、その手を俺の顔に伸ばした。額に掛かった髪をかき分け、俺の頬を撫で、顎を掴む。俺はその動きをじっと見つめていた。
何をされているのだろうか?
今までも距離は近いと思っていたがこんなに近くに触れられることはなかった。
「なぁ、いつから俺のことが好きだった?」
何を言ってるのだろうか?
一気に酔いが冷めた。それなのに触れられた箇所から熱がじわじわと広がり、一気に身体を熱くした。
「な、んの、こと?」
「いつもいつも俺のこと見てただろ? バレてないと思った? わかりやすすぎ。今日だってずっと今にも泣きそうな顔してさ。で? どうしたい? どうされたい?」
俺の演技は完璧だと思ってた。
「ちが、う。違うから! そんなわけない、じゃないか。俺はっ」
「あー無理だって。ほら、もう泣いてんじゃん」
彼の親指が、俺の目からこぼれ落ちる涙を端から拭き取る。首を振ってその手から逃れようと思うのに、その手は存外強く、俺の顔を固定した。彼の顔を目の前にして、俺の動きは封じられた。
鼻が触れ合う距離まで近付いた彼の吐息が俺の唇に触れた。後数センチ動いてしまえば触れ合う距離。
「いい?」
「だめ……」
「なんで?」
こんなことをしてはだめだと理性が告げる。
「だって……お前彼女……」
「彼女がいなければ、いいの?」
「……!」
求めてしまえと本能が告げる。
せめぎ合う理性と本能の間で、揺蕩うワインの芳香。
転がる瓶が天秤を傾けた。
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